ロワとカラス城の魔女
9
炎に襲われる夢を見た。何が原因なのか、火はどんどん広がっていく。すると暗闇に扉が現れ、そこから化け物が出てきて炎を一瞬で食べてしまった。化け物は大きな瞳をギョロリと向けると笑った。
――お前も、うまそうだな。
「うッわぁあああ!!イヤーーー!!」
自分の叫び声で目を覚まし、気が付いたら石の床に落ちていた。
「痛い……」
石を見つめて呟いた。石の床はひんやりとして、ざらざらとして、砂か埃かは分からないがとにかく黒い。
自分がさっきまで寝ていたと思われるソファーも黒く、カバーがはがれて、中のスポンジようなものが所々ふわふわと出ている。
周りを見渡しても、蝋燭の灯りが少しあるだけで、はっきりとは何も見えない。説明されなくとも、ここがどこかくらいは察しがついた。
「カラス城の中?!」
私の声は大きく響いてすぐに消えた。
「うるさいわね。なんでそんなに騒がしいのよ」
すぐ後ろから魔女の声が聞こえて、また大声を上げそうになるのを必死で抑えた。振り向くと、室内だというのにマントを羽織りフードを深く被っている魔女が立っていた。
手にはカップを持っていて、近くまで来るとそれを私に渡した。
「起きたなら、それ飲んで早く帰ってちょうだい。荷物は扉の所よ」
迷惑そうにそう言うと魔女は背を向けた。
「あの、すみませんでした!まさか火事になるだなんて思わなくて。あの火は、その、どうなったんですか?」
カップを両手で握りしめながら聞く。背中を向けたままだけれど、魔女が呆れている様子は伝わってくる。
「燃え広がる前に消したわ。あなた、よく助かったわね」
そう聞くと、私は心から安堵した。もう一生、外で火なんか扱わないと誓いを立てて。
魔女のため息がはっきりと聞こえて、変な汗が出る。このままでは研修なんて話は切り出せそうもなかった。
ムリヤリ言ってみようかな……。
「あの、け」
けれど、言葉が出るか出ないかの所で魔女に遮られてしまった。
「まさか!あれだけ迷惑かけといて、まだ研修がどうとか言うつもりなんてないわよね?」
魔女の言葉がぐさりと刺さる。心臓に一撃くらってしまった。それでも立ち上がって、頭を下げる。
「お、お願いします!!私、どうしても魔法使いになりたいんです!」
薄暗い灯りの中で、真っ黒の石の床だけを見つめて待つ。その間、心臓は高鳴り、手も足も震えていた。
――お前も、うまそうだな。
「うッわぁあああ!!イヤーーー!!」
自分の叫び声で目を覚まし、気が付いたら石の床に落ちていた。
「痛い……」
石を見つめて呟いた。石の床はひんやりとして、ざらざらとして、砂か埃かは分からないがとにかく黒い。
自分がさっきまで寝ていたと思われるソファーも黒く、カバーがはがれて、中のスポンジようなものが所々ふわふわと出ている。
周りを見渡しても、蝋燭の灯りが少しあるだけで、はっきりとは何も見えない。説明されなくとも、ここがどこかくらいは察しがついた。
「カラス城の中?!」
私の声は大きく響いてすぐに消えた。
「うるさいわね。なんでそんなに騒がしいのよ」
すぐ後ろから魔女の声が聞こえて、また大声を上げそうになるのを必死で抑えた。振り向くと、室内だというのにマントを羽織りフードを深く被っている魔女が立っていた。
手にはカップを持っていて、近くまで来るとそれを私に渡した。
「起きたなら、それ飲んで早く帰ってちょうだい。荷物は扉の所よ」
迷惑そうにそう言うと魔女は背を向けた。
「あの、すみませんでした!まさか火事になるだなんて思わなくて。あの火は、その、どうなったんですか?」
カップを両手で握りしめながら聞く。背中を向けたままだけれど、魔女が呆れている様子は伝わってくる。
「燃え広がる前に消したわ。あなた、よく助かったわね」
そう聞くと、私は心から安堵した。もう一生、外で火なんか扱わないと誓いを立てて。
魔女のため息がはっきりと聞こえて、変な汗が出る。このままでは研修なんて話は切り出せそうもなかった。
ムリヤリ言ってみようかな……。
「あの、け」
けれど、言葉が出るか出ないかの所で魔女に遮られてしまった。
「まさか!あれだけ迷惑かけといて、まだ研修がどうとか言うつもりなんてないわよね?」
魔女の言葉がぐさりと刺さる。心臓に一撃くらってしまった。それでも立ち上がって、頭を下げる。
「お、お願いします!!私、どうしても魔法使いになりたいんです!」
薄暗い灯りの中で、真っ黒の石の床だけを見つめて待つ。その間、心臓は高鳴り、手も足も震えていた。
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