ロワとカラス城の魔女
4
扉は静寂の時を取り戻したように、ただ、そこに存在している。
研修を断られるなんて、扉が開かないなんて、起こるわけがないと思っていた。決まったレールを歩く。大人が決めた事に従っていれば、当たり前にそれは達成できる。
だから私は言われた通りのレールを歩く。そうすれば、問題なんて起きないのだ。なのに、それなのに、問題は起きている。
そんなこと起きない。無責任な言葉とは裏腹に、それは今ここで起きているじゃない。頭を抱えて困っていると、扉の向こうから声が聞こえた。
「一つだけ質問するから、よく聞きなさい。正直に答えたら、研修を受け入れましょう」
なんと、魔女がチャンスをくれたのだ。思わず大声で返事をする。
「はい!!」
正直に話すだけでいい。それだけで研修を受け入れてくれる。やっと光が見え始めていた。
「なぜ、魔法使いになりたいの?」
なんとも簡単な質問だった。
『人の為に働きたい。社会貢献をしたいんです』
これを言えばいい。けれど『正直に話したら』、そう言われたはずだ。魔女は嘘を見破るだろうか。
その疑問への答えはすぐに出た。絶対に見破るはずだ。そして嘘をついたという理由で研修の受け入れを拒否する魂胆なのだ。
その手には乗らないぞ。
「はい、正直に話します。魔法使いになりたいのは……」
魔法使いになりたかった、それらしい候補が次々と頭を駆け巡った。けれど、やはり見破られる事が怖かった。ここは正直に言うべきだ。
「魔法使いになれば、国から毎月支援金が受け取れます!それがあれば生活には一生困りません!」
黒い扉を見つめながら、正直にはっきりと言い放った。
しばらく、扉の向こうからは何も聞こえなかった。
じっと待っていると、扉が少しだけ開いた。希望の光がまるで射し込んだような気持ちになった。
「理由は、お金の為?」
「はい」
苦笑いを噛み締めながら答える。この理由を言うと大抵の人は笑う。冗談だと思って。
魔女も笑うだろうか。期待に胸を膨らませていると、魔女は静かに言った。
「あなた、向いてないわよ。帰りなさい」
そう聞こえると、扉は閉まった。
差し込んだはずの希望の光が幻覚だと分かった時、力が抜けた。最後のチャンスさえ、駄目にしてしまったのだ。私の人生は、今ここで終わった。
座り込んで黒い扉を見つめていると、扉を叩いてた両手が黒く汚れている事に気が付いた。慌てて雨で洗い落とそうとしたけれど、全然落ちないどころか、汚れは広がってしまった。
何度も雨で落とそうとしても、落ちない。
「落ちないじゃん。なんで?……なんでなの?」
上手く行かない。何一つだって、私の人生は上手く行かないんだ。あっさりと否定されて、道は塞がってしまった。涙が止まらなかった。
「頑張っても、良い事なんかないじゃん」
どうして泣いているのか、自分でもよく分からなかった。悔しいのか、悲しいのか、怒りなのか。
ため息をついて、涙を拭いて、荷物を持つと歩き出した。カラス城に背を向けて。
「今から歩けば、夕方には街に着くかな……」
1人、雨の中で呟いていた。もう泣いてはいなかったけれど、雨は痛いほど降ってひどく寒かった。ひどく、惨めだった。
研修を断られるなんて、扉が開かないなんて、起こるわけがないと思っていた。決まったレールを歩く。大人が決めた事に従っていれば、当たり前にそれは達成できる。
だから私は言われた通りのレールを歩く。そうすれば、問題なんて起きないのだ。なのに、それなのに、問題は起きている。
そんなこと起きない。無責任な言葉とは裏腹に、それは今ここで起きているじゃない。頭を抱えて困っていると、扉の向こうから声が聞こえた。
「一つだけ質問するから、よく聞きなさい。正直に答えたら、研修を受け入れましょう」
なんと、魔女がチャンスをくれたのだ。思わず大声で返事をする。
「はい!!」
正直に話すだけでいい。それだけで研修を受け入れてくれる。やっと光が見え始めていた。
「なぜ、魔法使いになりたいの?」
なんとも簡単な質問だった。
『人の為に働きたい。社会貢献をしたいんです』
これを言えばいい。けれど『正直に話したら』、そう言われたはずだ。魔女は嘘を見破るだろうか。
その疑問への答えはすぐに出た。絶対に見破るはずだ。そして嘘をついたという理由で研修の受け入れを拒否する魂胆なのだ。
その手には乗らないぞ。
「はい、正直に話します。魔法使いになりたいのは……」
魔法使いになりたかった、それらしい候補が次々と頭を駆け巡った。けれど、やはり見破られる事が怖かった。ここは正直に言うべきだ。
「魔法使いになれば、国から毎月支援金が受け取れます!それがあれば生活には一生困りません!」
黒い扉を見つめながら、正直にはっきりと言い放った。
しばらく、扉の向こうからは何も聞こえなかった。
じっと待っていると、扉が少しだけ開いた。希望の光がまるで射し込んだような気持ちになった。
「理由は、お金の為?」
「はい」
苦笑いを噛み締めながら答える。この理由を言うと大抵の人は笑う。冗談だと思って。
魔女も笑うだろうか。期待に胸を膨らませていると、魔女は静かに言った。
「あなた、向いてないわよ。帰りなさい」
そう聞こえると、扉は閉まった。
差し込んだはずの希望の光が幻覚だと分かった時、力が抜けた。最後のチャンスさえ、駄目にしてしまったのだ。私の人生は、今ここで終わった。
座り込んで黒い扉を見つめていると、扉を叩いてた両手が黒く汚れている事に気が付いた。慌てて雨で洗い落とそうとしたけれど、全然落ちないどころか、汚れは広がってしまった。
何度も雨で落とそうとしても、落ちない。
「落ちないじゃん。なんで?……なんでなの?」
上手く行かない。何一つだって、私の人生は上手く行かないんだ。あっさりと否定されて、道は塞がってしまった。涙が止まらなかった。
「頑張っても、良い事なんかないじゃん」
どうして泣いているのか、自分でもよく分からなかった。悔しいのか、悲しいのか、怒りなのか。
ため息をついて、涙を拭いて、荷物を持つと歩き出した。カラス城に背を向けて。
「今から歩けば、夕方には街に着くかな……」
1人、雨の中で呟いていた。もう泣いてはいなかったけれど、雨は痛いほど降ってひどく寒かった。ひどく、惨めだった。
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