ロワとカラス城の魔女

thruu

3

「学校に電話しよ」

 雨が強くなる中、看板の前で携帯電話を取り出す。マントはすでに、水を含んでずっしりと重くなっていた。

「スマホは防水のやつ買っといて正解だな。マントに防水スプレーさえかけてれば完璧だったのに」

 ぶつぶつと言いながら、アドレス帳から担任の先生の連絡先を選びだす。コール音が三回鳴った所で慌てて電話を切った。

「危なッ……!!」

 無意識にまた大声をだす。そう、危なかったのだ。あのまま連絡しようものなら、卒業試験を受けるリストから外されてしまう。どんな理由があっても、指定された所で研修を終えなければならないのだ。

――たとえ研修先で門前払いされたとしても、例外じゃないからな!

そう言って黒板を叩く先生を思いだす。でも確か……。

――ま、そんな事あるはずがないけどな!

 そう言って、教室が和やかな雰囲気にまでなったことすら思い出す。

 もし、門前払いをくらっているだなんて連絡したら……。考えるだけでも恐ろしい。スマホを握りしめて、再び普通サイズの扉を一生懸命に叩いた。こちらの扉は音がよく響いた。

「すいませーーーん!あの!研修を……研修をお願いします!!私、成績は悪いですけど、一生懸命働きますからー!掃除とか洗濯とか買い物だって……」

 パニックに陥り、わけの分からない言葉を繰り出すと、扉は再びほんの少しだけ開いた。

「ぅるさいっ!!とっとと帰りなさい!小娘がっ!」

 魔女は痺れを切らしたように怒鳴った。完全に受け入れを断られている。受け入れどころか、人として拒否られている気さえする。

 みんなこんな思いをしてまで研修先に挑んでいるのだろうか。

 扉が閉まりそうな雰囲気を感じ取り、考えるよりも先に足が出てしまった。扉の隙間に足を突っ込む。痛い。でも……。

「お願いします!研修しないと、卒業出来ないんです!」

 隙間に向かって負けずに声を張る。

「そう。それじゃあ、諦めて留年するのね」

 必死の頼みにも魔女は非道な言葉を出し、再び扉を閉めようとする。

「痛たたた!留年じゃなくて退学なんです!研修ができなかったら!……痛てて!!」

 足が潰れてしまう。なんて怪力なのだ。あまりにも痛くて、足を外した。外すと同時に扉はまた閉まった。

「しまった!」

慌てて開けようとしたけれど無駄だった。

こちら側にはドアノブなど付いていないのだから。

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