ロワとカラス城の魔女

thruu

1 研修生お断り

人里離れた山奥に、崩れかけた城がある。それが、私の研修先。

「これが噂の"カラス城"」

 カラス城を見上げて思わず呟いていた。あともう少し、てっぺんを見ようと思ったら、後ろに倒れてしまいそう。

 その城は墨が塗られたように黒く、そして高くそびえ立っている。いつもカラスの群が飛び交っているので、誰かがそんな名前をつけたのだ。

 大昔に史上最悪の魔女が住んでいたらしく、気味悪がって誰も近づかないというのも、実際に来てみれば納得な話だ。

 だってこれじゃあ、まるでお化け屋敷。ここに人が住んでいるだなんて、悪い冗談だと思ってしまう。

 人が近づかない理由は他にもあって、史上最悪の魔女の話は大昔の事だけれど、今現在この城に住む人も結構有名だったりする。

 黒魔術で国を滅ぼしたとか、星を消せるとか、人を食べるとか、呪いが趣味とか。とにかく、不思議で怖いウワサばかり。全て本当だとは思わないけれど、火のない所に煙は立たないと言うし。

 できたらこんな所には来たくはなかった、というのが私の本音。けれど、卒業試験の前に、現役の魔法使いの助手として研修を終わらせなければならない。

 もし、助手として合格がもらえなかったり、研修先から逃げ出そうものなら大変な事が起こるのだ。その大変なことというのが、卒業試験が受けられない、ということだ。つまり、卒業出来なくなる。

ーーこんな所、本当に嫌だ。

 私は嫌々ながらも扉を叩く。卒業がかかっているんだから、仕方がないじゃない。自分にそう言い聞かせる。大きな扉はやはり黒くて、叩いても固いだけで、驚くほど音を吸収してしまう。

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