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試行錯誤中

色鳥

『初夜』4

まあ確かに、24のイケメンが童貞ともなれば驚くのも無理はない事なのかもしれない。
未だに信じがたい物を見るような目で俺を見つめてくる鈴木を見返しながらそんな事を思う。

しかしながら事実、俺は童貞なのだから仕方がない。
証明しろと言われたところでこの国には童貞証明証的な物はないのでどうしようもない。

「え……は?おま、え?童貞?は?」

だが鈴木にとってこの事実は簡単に納得出来るものではないらしく。
ようやく口を開いたものの、ヤツの唇から漏れ出た言葉は全く要領を得ない細切れのものだった。
口角をひきつらせながらぱちぱちと瞬き繰り返す姿は何とも滑稽である。

「俺元々恋愛とか女とか興味ねーし。性欲も薄いみたいなんだよな」
「それにしたってお前、そんだけ面よけりゃあよ……え、今まで付き合った事はあんだろ?」
「まあな。でも大抵すぐフられる。俺が何もしねーから」

しばしば男の方が多く性欲と結びつけられるが、女だって大概スキモノである。
何が純愛だ。
ふざけるのも大概にしろ。
それに比べ童貞も処女も守り抜いている俺の何と清らかな事か。

「……何かもうお前のその無頓着さと面倒臭がりって病気の閾に達してんじゃねえの。染色体の異常とかよ」
「そうであって欲しいとも思わないほどの無頓着さだからな。確かに病気なのかもしれん」
「……………」

そう言うとヤツは疲れ果てたように深い溜息をついた。

「……でも俺お前の事抱きてえんだけど」
「クソする穴に突っ込むとかエグすぎんだろ。大腸菌とかヤバそう」
「ゴムすりゃいいだろ」
「出すとこに入れんだぞ。痛えだろ」
「慣らす」
「慣れんの?」
「らしい」
「へー」

適当に相づちを打ちながら、脳内に情景を思い描く。
童貞だってまあセックスの仕方くらいは知っている。

キスして(キスするのか)前戯されて(前戯されるのか)尻穴に指突っ込まれて(汚ねえ)イチモツぶちこまれて(痛え)。

いや待て、何だこの光景は。

「地獄絵図だな」
「あ?」
「たった今想像の中で俺のケツ穴が切れた」
「…………」
「あ、ヤベエ痛え無理。痛え。想像で痛えからこれは不可能だ物理的に」
「ふざけんな物理的には可能って実証されてんだよ」
「バカな」
「お前ちょっとほんと、いい加減にしろよ。したくないならしたくないって言えよ。そしたら俺だって少しは我慢すんだから」
「したいかしたくないかで言ったらしたくはねえよ」
「………」

俺の言葉にヤツは不服そうに顔をしかめながらも、自分で我慢すると言ってしまった手前取り消す事も出来ずに唇を噛んだ。

「つうか、まずもって俺だけが痛い思いをする事実が許せん」
「あ?」
「ヤりてえっつーからにはお前は自分が突っ込まれる可能性があるんだって事も理解していたんだろうな」

唐突な俺の問いかけに対し、ヤツは一瞬きょとんとして、その後あからさまに狼狽えた。

「え、や、でもお前俺に童貞やる気はねえってさっき……」
「童貞はやらねえよ。でもお前脱処女はチンコ以外でも出来んだろ」
「…………」

可哀想な事に目の前のチンピラは顔が真っ青である。
恐らくヤツの脳内では、ケツに何やら不穏な物を突っ込まれて出血する自分の姿が映し出されているに違いない。

「恋人なら同じ経験すべきだよなあ?」

ニヤリと笑って死刑宣告をしながら、未だ青ざめている鈴木の唇に俺はキスをした。
ヤツにとってこれは忘れられないキスになるに違いない。

しかし俺にとってもこれは中々に記憶に残る経験である。
ファーストキスが震える男の唇とか、一体誰に笑って話せばいいのかだけど少しだけ目の前の男が可愛く見えた。

ちなみにその日はベッドに寝ころぶ俺に対し、ヤツは客人用の布団を床に敷いて身を守るようにして縮こまって眠りについた。

そんな、初めての夜。

〈完〉

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