俺の人生設計に幼馴染みが居た結果・・・

ノベルバユーザー244497

幼き日の灯火

「輝夜っ!」

後ろを振り返る──

そこに居たのは、咲良だった──

「見てたんだろ?」

「え?」

「さっきの」

「あ、やっぱり──?」

「やっぱり......って、お前なぁ? むしろあれでバレてないと思ってたのかよ?」

「いや全然?」

「少しは思えよ!? ......まあいい。それで? 俺になんか用か? それとも、この腑抜けたツラでも拝みに来たのかよ」

「ちがう。用も何も、あんな光景見せられたらほうっておけないでしょ?」

あぁそうか......。見られちまってたんだな、あの情けないざまを......っ!

「なら話は早い。お前はもう帰れ。これは、俺の問題だ......」

途端、目の前にいる咲良の表情が切り替わる。

「......あんたは、それでいいの?」

「は?」と目を丸くしたまま体を硬直させた

「だ・か・らー! あんた一人でどうにかできる問題なの!? って、聞いてんのっ! ......それくらい1回で判りなさいよねっ」

「んな理不尽な......」

「つべこべ言わず答えなさい!」

「そうだな......」と首を捻る俺。咲良の意図を完全には理解できないものの、つとめてこう切り返す。

「お前が俺のことを助けてくれる、っていうんなら構わないが......。その......いいのか?」

「良いって、何が?」

俺の問いに咲良は急に訝しんだ。その表情はどことなく昔の、俺が知っている幼馴染みにもどったみたいだった。

「あ、有栖川とは出会った時から犬猿の仲だったろ!? だから、そんな状態であいつと俺との間を取り持つことなんて出来んのかな、ってさ」

有栖川が転校してきたあの日から、二人は互いが互いを敵視していた。ましてやこのタイミングだ。自分とのデートを蔑ろにしてまで別の女と一緒にいるだなんて知れたらどうなる? それだけで余計関係がこじれてしまうはずだ。

どうなんだ、と咲良を見やる。

「そ、それもそうねっ! ......でも気にしないで!? 私がそうしたいからするだけ。 ......べ、別にあんたのためとか......そういうんじゃないからねっ!?」

「何そのテンプレ感満載のツンデレっぷりは......」

「う、うるさいわねっ! たぶんだけど有栖川さん待たせちゃってるから、さっさと行くわよっ」

別に待ってないと思うんだが......

でも......その気遣いと優しさは、今の俺には余るくらいだ。

「あ、そうだ」

俺の横を通り過ぎて先に行こうとする幼馴染みを呼び止めるように言った。

「? 何?」

慎ましやかな声音で返事をする咲良に、俺は言いたかったことを口にする。

「その......ありがとな。今日は」

咲良は照れたように頬を朱色に染める。

「な、何よ......そんな改まっちゃって......。それに、今日はまだ終わってないんだから!」

「それもそうか......。はぁ......春の陽気はどこへやら......はやくも暑さが身にしみるぜ」


お天道様がちょうど真上に位置する頃。

俺と咲良は商店街の中を縦横無尽に突っ走っていた。

「輝夜っ、有栖川さんが行くところに心当たりはない?」

「あると思うか?」

「あんたに聞いたのが間違いだった......。私も相当、この暑さでやられてるのね......」

心当たりはないが、有栖川が屋上で言った言葉が引っかかった。

仕方ない、思い出してみるか......

それは、俺がまだ幼かった頃──

両親が仕事で忙しく、夜帰るのが遅かった。

そのあいだ俺は近所の幼稚園で一日の大半を過ごし、母親が迎えに来るのを待っていたんだ。

だけどこの時は内気で、なかなか周囲の子たちとうまく馴染めなかった。

そのせいか、外が暗くなるまでひとりぼっちで......でも、そんなとき。

そっと俺の手を優しく包み込んでくれた女の子がいた。名前はたしか......そう、

“有栖川アリス”

今、些細なことから亀裂が生じて行き違いになっているあの子だ。

彼女の優しさは正真正銘、嘘偽りのない──あの少女によるものだ。

だってあの時、両親や友達から見放されて孤独だった俺を、救ってくれたから。

──昔日の回想から現実へと意識が引き戻される。

そうか......! 俺はあの時、彼女に救われたんだ。彼女の危険をかえりみない優しさに......だったら!
思い上がりかもしれないけど、今度は俺が......彼女を救ってみせる番だ!

俺はその足りない頭で考える。脳をフル回転させてその先に何が見えるのか、何が最善でこの状況に有利なのかを必死に模索する。

「咲良、わかった」

答えを見つけ出し、あわててその走りを止めた。

「わかったって、何が?」

「走るぞ」

そしてまた走り出す。

「......ちょ、待ってよ-!? 輝夜~~? ......あっ、もう無理......っ」

見つけ出す、絶対っ! ......必ずだ!

「待ってろよ、アリスっ!」

このとおり、運動不足気味な咲良の体力切れはスルーした......。はぁ......大して体力が無いわりにならんでついてこようとする幼馴染みを持った覚えはないんだがな──まぁ、それも一種の優しさか......







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