俺の人生設計に幼馴染みが居た結果・・・

ノベルバユーザー244497

失われた時間

「早く着きすぎちまったかなぁ? それにしても──」


「私の勝ちね。咲良さんはせいぜい指をくわえて見てるといいわっ」

「なんですってぇ~~っ!? あなたこそっ、私の順番が回ってきたとき、泣いて悔しがったってもう知らないんだからっ!」

「誰が泣くもんですかっ! 大体あなたはっ! それだからモテないんですのよっ!?」

「モテっ!? ~~っ!? か、関係ないじゃない! 複数の男子にモテたって意味なんかないのっ! わ、わたしは......ただ一人に好きになってもらえれば、それで......」

「ふ~ん......」「な、なによ......っ!」

「あ、あの~? 俺に拒否権はないんですね......?」

「「ないっ!」」


なんてやりとりが、あの後あったんだけど......。

「俺の意向はどうでも良いのかよ......っ」

結局ながれで無理やりあの二人とデートさせられることになった。

「まだ来てないな......」

右腕に付けてある時計を確認しながらつぶやく。

このデートに関しては、あまり俺自身も乗り気ではなかったし、強引にこう......女の子ふたりから責められてしまうと、どうも弱い。その結果、こうやって待ち合わせ場所に来てしまっていた。

でも、気持ちが退廃的かつ後ろ向きではあるが、女の子─しかも、美少女─とデートするとなれば大概は浮かれるものだろう。そのせいか、予定より早く着いてしまっていた。という次第だ。

「はぁ......」

そんなことを反芻していると、後ろから聞き入った声がきこえた。

「か、ぐ、や、くぅ~ん!」

「うわっ! 抱きつくなよ!?」

有栖川だ。もちろん、普段の格好ではないし、気品さ、優雅さはそれに劣るものでもない。

「今日は一段とお美しいですね」

「なにー? そのお姫様みたいな扱いは~! 私だって一市民の女の子よ?」

「あぁ......すいません。なんか慣れないもので」

学校にいて制服を着ている有栖川と、今みたいな町中で私服を召している彼女は違って見え、どこか落ち着かなかった。自分自身、極度のコミュ障では無いと思うが、この気色はやはり慣れない......。

そう思っている間にも、有栖川は俺の手を掴んで笑う。

「さあ、行きましょう? 時間は無限にあるわけではないのよ?」

有栖川につれられ、俺は足を動かした。

「俺の方は全くのノープランだが、そっちはどうなんだ? 任せていいとは言われたが......」

「心配しなくていいわ。デートコースは決めてあるの。......まずは、ここよ」

足を止めた先は、商店街の隅に位置づく小綺麗な喫茶店だった。(その間、有栖川と手を繋いだまま)

有栖川は俺の手を引っ張って(まだ離してくれない)、その喫茶店に入った。

「いらっしゃいませ。何名様でございますか?」

──俺たちは店員から接客を受け、簡単な確認事項に応えてから適当な席に座った。

「注文がお決まり次第、スタッフをお呼びくださいませ。」

会釈をして、目の前の店員がこの場を去ると、有栖川は早速メニューが書かれた一覧表を手に取り目を走らせる。

「え? 有栖川って実は食いしん坊だったりする?」

我ながら失礼極まりない質問をしたが、どうだろう?

「レディーに向かって失礼ねぇ......。不遜きわまりないわっ」

やっぱりか......。

「でもね、かーくんになら何いわれても構わないとおもってるの」

「そ、それって......」

「っ! ......な、なんでもないわ!」

照れ隠しだろうか? 顔が耳まで赤くなっていることに気づいてないんだろう。

有栖川は伸縮自在の頬を膨らませながら、ぷいっとそっぽを向いた。

近くのスタッフを呼び、注文を終えた俺たちは、これからのデートプランを一度おさらいする。

といっても、俺は有栖川から何も聞かされてないんだがな......。

──そんな愚痴ともいえる不平を抱きながら、有栖川の話を聞いているとようやく食事が運ばれてきた

「アイスコーヒーは俺です」

率先して自分の分を受け取り、残りは彼女ありすがわのだと告げる。

「...では─。トマトとチーズのパスタ・三種のチーズのカルボナーラ・ナポリタン・旬の食材をふんだんに使ったミネストローネ・ありったけの愛で彼氏をメロメロ!あ~ん必至のモーニングセットです♡デザートの方は後ほどお届けしますね」

ん? なんか前半は普通の料理だった気がするが、後半部分おかしくなかったか?
さっきの店員も妙にうきうきしていた気がしたし......?

「つか、やっぱり食い意地張ってんじゃねぇか!? なんだよっ、パスタにカルボナーラ、ナポリタン、それからミネストローネ、モーニングセット......はおいといて、終いにはデザートって!?」

「も~っ! なんだっていいじゃない! 私だって年頃の乙女なのよ?」

いや、年頃の乙女はそんなことしない......。せいぜい頼んでも二つだ。

「......まあ、もうそのことについては言及しない。が、さすがにそのネーミングセンスを疑うような料理は看過できない!」

「『ありったけの愛で彼氏をメロメロ!あ~ん必至のモーニングセット』のこと?」

「ぁあ、そのモーニングセットだ。あ......あと、いちいち全部口に出さなくてもいいからな?」

どうして? といった顔をしてるのはどうしてだろうか? 逆にこっちが聞きたくなるレベルだぞ。

アイスコーヒーを飲んでいると、有栖川がさっきのセットに入っているケーキをフォークに突き刺して俺の前に差し出してきた。

「はぃ、あ~ん♡」

「──っ!?」

そのせいで俺は口に含んだコーヒーを吹き出してしまい、それが有栖川の顔にかかってしまう。

「あっすまん!」

すぐに自分のポケットからハンカチをとりだしコーヒーまみれになった顔と服をぬぐい、何度も謝ってからお手洗いに連れて行った。

「ほんと俺、何やってんだろ......」

俺は先にもどって後悔とか自責とかを色々感じながら有栖川を待った。

「お待たせ」

「本当ごめん」

「それはさっき許したじゃない。しつこい男は嫌われるわよ? それに......あぁなったのも、もとはといえば私のせいだし......」

沈みかけていた有栖川を必死に引き止める。

「それは違うっ! 俺が動揺したのがいけなかったんだ! だから有栖川は悪くない」

「うぅ......私のせい。全部わたしのせい......だからっ......」

それでも自分のせいだと言い張る彼女に、俺は......。

「泣くなよっ! お前は凄いんだ! 俺なんか目に入らないほど、みんながみんなお前のこと好きだって言ってる! だから泣くな。お前が泣くとみんなが悲しむんだ」

そう告げると有栖川は俯いた。

「みんなが私のことを好きだとしても......特別な人に好きだって言われなきゃ意味がないのに......。今なら咲良さんのいってたことが理解できる。好きな人に振り向いてもらうことがどれだけ大事かってことが、好きっていわれることがどれだけ嬉しいことか......。嫌いになられることがどれだけ......自分にとって嫌か......っ!」

「ありす、がわ......?」

有栖川は言いたい放題言うと食べかけの料理を残したままひとり走り去ってしまった。

「有栖川っ!」

有栖川は悲しんでいた。彼女の背中はあまりにも切なく、そして弱かったのだと今初めてきづいた。

それだけ彼女に対して粗暴に、存外に接していたのだろうと不甲斐ない自分に腹を立てる。

それと同時に彼女が生きてきた時間と、俺が何も考えず過ごしていた時間は多少なりとも食い違っていたこと、彼女の時間はあの頃から止まったままであることを深く痛感する。

俺が出来ることはただ一つ──

──彼女の時を取り戻す!

俺は有栖川の分の会計も済ませ足早に店を後にした。




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