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カイカイカイ…

霜月 秋旻

質問

「だいぶ、壊し屋業に慣れてきたようだな、カイ」
「おかげさまで」
僕が一人で仕事をこなすようになってから数ヶ月が経ったある日、壊し屋のアジトである防空壕で、僕はたまたま黒沢シロウと二人きりになった。それを見計らって、僕は思い切って質問をぶつけた。どうしてもひっかかっていたことを。
「僕を、この森へ来るように仕向けたのはシロウさん、あなたですよね?」
「…なんのことだ?」
「カイカイカイに所属している人たちはみな、この森に自殺しにきたひとばかり。でも僕は違う。僕は死のうなんて考えてはいなかった。少なくとも、初めてこの森を訪れたときは、何も失ってはいなかった。そう、僕は、あなたの妹であるアカネさんに連れてこられたんです。あなたは、アカネさんを使って僕をここへ来るように仕向けたのではないのですか?」
「…君だけじゃないよ。カイ。もうひとり、いたさ。アカネのクラスの生徒で、俺がこの森へ来るように仕向けた人間はな。知っているだろう?そいつが誰なのかを。以前まで、君と行動を共にしていたんだから」
僕の背後にある扉。その向こうで、階段を下りる足音が聞こえてくる。足音は、だんだんと大きくなってきた。そしてその足音は止み、扉は開いた。振り向くとそこには、一人の女性が立っていた。数ヶ月ぶりに合わせる顔。頭をつるりと丸め、黒いスーツに身をつつんでいる。右手には、<キヅキの木槌>が握られている。彼女こそ、僕の部屋にあるものをすべて壊した張本人であり、僕の元彼女でもある人物。氷川喜与味だった。
「また会ったわね…。安藤くん…」
僕は驚きを隠せずにいた。彼女に、なんと声をかければいいのだろう。身に着けている黒服や、この場所にいることから推測して、彼女も、カイカイカイ直属の壊し屋として働いていたのだろう。僕は、黒沢シロウや笹井さん、志摩冷華のほかの壊し屋と会ったことは無い。他に何人、壊し屋がいるのかも把握していなかった。だから、喜与味が壊し屋の一員であることなど知らなかった。誰からも教えられていなかった。
「いいだろう、カイ。話してやるよ。君がこの森へ来ることになったきっかけを。君のいうとおり、俺はアカネに頼んだのさ。喜与味や君を、この<キヅキの森>へ連れてくるようにな」

          

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