カイカイカイ…

霜月 秋旻

居場所

それから夏目は、シロウと末永をある場所へと案内した。そこは、旧日本軍がかつて使用していたという、地下にある防空壕のあとだった。夏目は以前から、この森に通っていたという。そしてこの場所を見つけ、自身の秘密基地としたという。
末永は夏目に、どこで死んだのかを尋ねた。しかし夏目は二人に、自分の遺体を探さないように頼んできた。自分は成仏などしたくない、自縛霊としてこの森に留まりたいと告げた。この<キヅキの森>は自分の本当の居場所。やっと見つけた居場所だ。自分の遺体をこの森から運ばれてしまったら、この森に留まることは出来なくなってしまう。だから探さないでくれと、夏目は二人に必死に訴えた。そして二人は、了承したという。
それからシロウと末永は、毎日のように森へと通うようになった。シロウは夏目と会話をするために通ったが、末永は夏目を成仏させようとたくらんでいた。
夏目が森で命を落としてから、まるで森に吸い寄せられるように、森を訪れて自殺しようとする人間が増え始めた。夏目の霊能力が、夏目が死んだことによってより強力になり、森全体にその影響を及ぼしていると、末永はシロウに耳打ちした。なんとかして夏目を成仏させられないかと考えた。そこで末永が考えた末に行き着いた方法、それは夏目の願望をかなえることだった。夏目のこの世に対する未練を取り払い、成仏させる。末永はそう考えていた。
夏目の願望。それは「破壊」だった。自分を孤独へと追いやったモノへの復讐と言ってもいい。例えばまわりの人間が当たり前のように持っていて、自分だけ持っていなかった多機能携帯電話。世の中からそんなもの消え去ってしまえばいいと、夏目はいつも思っていたという。そして苦労せずに幸せな日々を過ごしているのんきな人間に、夏目は憤りを隠せずにいた。自分を貧乏人呼ばわりしてけなした者を、絶望の淵へ叩き落したいと、夏目は毎日のように、シロウと末永に打ち明けていた。
夏目の境遇は、シロウや末永によく似ていたため、二人とも共感できた。そして三人で相談した挙句、三人は、この森の防空壕を活動の拠点としたある組織をつくることにした。いまの世の中を壊して、改めさせる。そして人々の心の扉を開ける。それを目的とした組織だ。壊して、改めて、開く。壊、改、開。三人は、その組織の名を<カイカイカイ>と名づけた。

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