カイカイカイ…
キヅキの森の秘密
『わたしの話を聞いて、末永さんは驚いていたわ。わたしが霊媒体質だということを知って。末永さんもわたしと同じ、霊媒体質だったの。そして末永さんも、わたしと同じ苦悩を知っている。そう、わたしはようやく、末永さんという理解者に出会えたの。この<キヅキの森>で。
わたしがこの森に来たのはあくまで偶然だった。けど末永さんの話を聞いて驚いたわ。末永さんの話だと、この<キヅキの森>は、自殺名所らしいの。ここに自ら命を絶ちに来る人が山ほどいるらしいの。樹海ならここじゃなくてもいっぱいありそうなものなのに、自殺しようとする人はなぜかここを死に場所に選ぶ。そして、成仏できない自縛霊がこの森にはいっぱいいる。それを供養するために、末永さんはこの森にいたの。自らブックカフェを経営していて、それがこの<黄泉なさい>だった。』
僕はそこまで読んで、いったん原稿から目を離した。アカネの話だと、このブックカフェ<黄泉なさい>のオーナーはアカネの兄のはずだ。しかし、原稿にはまだ続きがあった。僕と喜与味は、続けて原稿を読み進めた。
『店内では一言も喋ってはいけないというルールがあったのには驚いたわ。でもそれは、店主である末永さんが決めたルールではなかったの。
末永さんの話によると、この<キヅキの森>は、昔この森で命を絶ったある霊能力を持った少年の呪いがかけられているらしいの。その少年は凄く寂しがりや。でも霊媒体質が原因で、みんなに相手にされず、ひどいイジメを受けていた。人間不信に陥って、やがて口で喋ることもできなくなってしまい、いつも一人で本を読んで寂しさを紛らわしていたそうよ。でも結局、孤独に絶えかねて、この森で自ら命を絶った。でもその少年の怨念は森に残り、その怨念は森に来た人間に霊的なイタズラをするの。でもそれは悪質なものではない。むしろその人間の本来の心を開放させるためのイタズラ。いじめられて人間不信に陥った少年の霊が、森を訪れた人間の本心を知るために仕掛けたイタズラなの。森の出口をわからなくさせて、限界まで森をさまよわせて、本心を引き出したりね。
このブックカフェ<黄泉なさい>の無言ルールをつくったのも、その少年の霊。いじめが原因で口が利けなくなったからでしょうね。だから、このブックカフェの真のオーナーはその少年の霊よ。末永さんがその霊と交信し、その霊の指示どおりに店を経営していたの。
その少年の霊は、文章力に長けていた。文才があったの。物の記憶を読み取る、サイコメトリーという能力も持っていたわ。人が触れたものから、その人の記憶を読み取ることもできる。生前霊能力を持っていた人間は、死後に物凄い霊能力を発揮するらしいわ。末永さんは、少年の霊と交信しながら原稿を書いて、本を出したの。末永さんが今まで書いてきた小説は、その少年の霊が考えたもの。末永さんは、少年の考えたストーリーを世に送り出す媒体だった。
ちなみにこのブックカフェで出される本も、中身はその少年の霊が考えたストーリー、もしくはその少年が、客の会員カードから読み取った記憶を、末永さんが記したもの。そして本に使われている紙はすべて、この<キヅキの森>に茂っている木で作られた紙。
強い霊能力をもった霊を成仏させるのは至難の業。末永さんは、その少年の霊を成仏させるために、少年の思うがままに行動していた。いつか少年の心が満たされ、成仏するまで。』
原稿は、そこで終わっていた。読み終えると、隣で喜与味が別な原稿用紙に何かを書いていた。喜与味は、その書いた原稿用紙を、僕をつたって志摩冷華に読ませた。
『この森の霊のことはわかりましたけど、でも末永さんがそこまで、その少年の霊に尽くす理由がわからないです。いくらその少年の成仏のためとはいえ、そこまで出来るものでしょうか。少年の何が、彼女をそこまでさせたんでしょうか』
喜与味は筆談で、志摩冷華にそう質問した。そして、その質問の答えを、志摩冷華は原稿用紙に書いた。彼女は、原稿用紙数枚にわたり、手を止めずに書き続けた。そして書き終えて一息つくと、僕と喜与味にそれを読ませてくれた。
『同じだったからよ。末永さんと、その少年はね。』
わたしがこの森に来たのはあくまで偶然だった。けど末永さんの話を聞いて驚いたわ。末永さんの話だと、この<キヅキの森>は、自殺名所らしいの。ここに自ら命を絶ちに来る人が山ほどいるらしいの。樹海ならここじゃなくてもいっぱいありそうなものなのに、自殺しようとする人はなぜかここを死に場所に選ぶ。そして、成仏できない自縛霊がこの森にはいっぱいいる。それを供養するために、末永さんはこの森にいたの。自らブックカフェを経営していて、それがこの<黄泉なさい>だった。』
僕はそこまで読んで、いったん原稿から目を離した。アカネの話だと、このブックカフェ<黄泉なさい>のオーナーはアカネの兄のはずだ。しかし、原稿にはまだ続きがあった。僕と喜与味は、続けて原稿を読み進めた。
『店内では一言も喋ってはいけないというルールがあったのには驚いたわ。でもそれは、店主である末永さんが決めたルールではなかったの。
末永さんの話によると、この<キヅキの森>は、昔この森で命を絶ったある霊能力を持った少年の呪いがかけられているらしいの。その少年は凄く寂しがりや。でも霊媒体質が原因で、みんなに相手にされず、ひどいイジメを受けていた。人間不信に陥って、やがて口で喋ることもできなくなってしまい、いつも一人で本を読んで寂しさを紛らわしていたそうよ。でも結局、孤独に絶えかねて、この森で自ら命を絶った。でもその少年の怨念は森に残り、その怨念は森に来た人間に霊的なイタズラをするの。でもそれは悪質なものではない。むしろその人間の本来の心を開放させるためのイタズラ。いじめられて人間不信に陥った少年の霊が、森を訪れた人間の本心を知るために仕掛けたイタズラなの。森の出口をわからなくさせて、限界まで森をさまよわせて、本心を引き出したりね。
このブックカフェ<黄泉なさい>の無言ルールをつくったのも、その少年の霊。いじめが原因で口が利けなくなったからでしょうね。だから、このブックカフェの真のオーナーはその少年の霊よ。末永さんがその霊と交信し、その霊の指示どおりに店を経営していたの。
その少年の霊は、文章力に長けていた。文才があったの。物の記憶を読み取る、サイコメトリーという能力も持っていたわ。人が触れたものから、その人の記憶を読み取ることもできる。生前霊能力を持っていた人間は、死後に物凄い霊能力を発揮するらしいわ。末永さんは、少年の霊と交信しながら原稿を書いて、本を出したの。末永さんが今まで書いてきた小説は、その少年の霊が考えたもの。末永さんは、少年の考えたストーリーを世に送り出す媒体だった。
ちなみにこのブックカフェで出される本も、中身はその少年の霊が考えたストーリー、もしくはその少年が、客の会員カードから読み取った記憶を、末永さんが記したもの。そして本に使われている紙はすべて、この<キヅキの森>に茂っている木で作られた紙。
強い霊能力をもった霊を成仏させるのは至難の業。末永さんは、その少年の霊を成仏させるために、少年の思うがままに行動していた。いつか少年の心が満たされ、成仏するまで。』
原稿は、そこで終わっていた。読み終えると、隣で喜与味が別な原稿用紙に何かを書いていた。喜与味は、その書いた原稿用紙を、僕をつたって志摩冷華に読ませた。
『この森の霊のことはわかりましたけど、でも末永さんがそこまで、その少年の霊に尽くす理由がわからないです。いくらその少年の成仏のためとはいえ、そこまで出来るものでしょうか。少年の何が、彼女をそこまでさせたんでしょうか』
喜与味は筆談で、志摩冷華にそう質問した。そして、その質問の答えを、志摩冷華は原稿用紙に書いた。彼女は、原稿用紙数枚にわたり、手を止めずに書き続けた。そして書き終えて一息つくと、僕と喜与味にそれを読ませてくれた。
『同じだったからよ。末永さんと、その少年はね。』
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