カイカイカイ…

霜月 秋旻

貰い物だらけの部屋

僕の部屋にある、ありとあらゆるものに関する喜与味の質問攻めが続いた。これも貰い物、あれも貰い物だと僕はそれぞれの質問に答え続けた。どれもこれも貰い物ばかり置いてある僕の部屋に呆れたのか感心したのかわからないが、喜与味は溜息をついた。
「快くん、愛されてるんだね。こんなにたくさん物をもらって。幸せものだね」
そう言ってひととおり僕の部屋にあるものを見終わると、満足したのか喜与味は僕の家をあとにした。彼女を玄関まで送り、彼女が帰ったのを見届けると、僕は再び階段を昇り、自分の部屋に戻った。部屋に入った瞬間、僕はその場に座り込んでしまった。体中が重い。特別、重労働をしたわけでもないが、動くのが億劫なほどの疲労感が僕を襲った。おそらくさっき読んだ<懐>の本が原因だろう。さらに部屋で彼女の質問にひとつひとつ答えるたびに、疲労が溜まっていった。その結果が今の僕だ。もうこの場から動きたくない。昨夜、<キヅキの森>をさまよったときの肉体的疲労がまだ残っていたこともあるが、今の精神的疲労も合わせて僕を襲った。
それにしても、僕の部屋にはいらないものが山ほどある。ありすぎる。喜与味によって気付かされた。どれもこれも、自らの意思で手に入れたものではない。人がいらなくなったものばかり。貰い物ばかりだ。今朝、アカネは僕のことを、押しに弱い人間だと言った。まさしくその通りだ。押しに弱いから、こうして部屋に、自分のいらないものが増える。人から物を貰うとき、断ることだってできたはずだ。断る権利が僕にはあったはずだ。しかしそれをしなかった。断る勇気が、僕にはなかった。人の好意を無駄にしている気がして、断ることができなかった。そして貰ったものを、処分することもできなかった。人がせっかく好意でくれたものを捨てるなど、僕には出来なかった。
僕は改めて考える。自分がいま一番欲しいものはなんなのか?お金?仲間?考えても考えても、誰もが答えそうな、ありきたりなものしか浮かんでこない。僕には願望というものが無いのだろうか。欲が無いのだろうか。いや、あったとしても、きっと今まで、僕が欲しいと思う前に、何もかも手に入った。だから気付かないだけなのかもしれない。しかし、僕はいままでいろんなものを貰ってきたが、本当に自分が欲しいものをまだ手に入れてはいない気がした。しかしそれが何なのか、自分でもわからない。
部屋中を埋め尽くしている貰い物をしばらく眺めていると、しだいに睡魔が襲ってきた。

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