俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪

第百八十一話 戦慄の真実

 『結果発表ー!!』

 「うるさっ!?」

 割と時間がかかったので、ついウトウトしかけていたところにでかい声が響き、俺はどっきりして目が覚めた。いや、冴えた。

 「まあいい。で、どうなんだ?」

 『あまり長引かせるとショックが大きいと思うのでサクッと言っちゃいますね?』

 「不穏な……いや、頼む」

 そして水晶が語った俺の真実。それは――


 【回復の魔王 カケル】

 その名の通り『魔王』で、『ペンデュース』において唯一かつ最強の魔王。

 寿命を操り、どんな傷もたちまち回復することができるので一般市民が知ったら恐怖の対象以外何者でもない。
 
 ただし、気絶・眠り・麻痺といった状態異常に弱い。

 この世界の送られた理由はある人物が復讐のため、カケル=ジュミョウを指定し、女神が実行した。死後の世界『エントラウム』から、異世界人を素のままペンデュースに放り込むことができないため『魔王』という役割を持たせて捨……送り込んだ。

 純粋な魔王。勇者とか夢見ちゃダメ。



 「やかましいわ!?」

 『怒らないでください。すべて真実です!』

 「ドヤ声で言われるとなお腹立つわ! ……これもティリアに共有してくれ」

 『かしこまりました。……むむむむーん……! はい、OKです。他には何か御所望で?』

 こちらの憤りをまったく意に介さず、さらに続けてくる真実の水晶。何か聞かないといけなかった気がするが、正直なところ――

 「芙蓉の話だと魔王を名乗っている六人は元々『勇者』だ。だから俺が……俺だけが本当の魔王というのは合っている……のか? それにこの騒動……もしかすると俺が関わっているかもしれない?」

 ――ショックだった。ぐるぐると頭の中を嫌な感情が駆け巡る。事故ではなく、殺されたということ。ティリア達とは違い、本物の魔王として存在していることなど色々だ。

 あ、そうだ!

 「おい、水晶! 『魔王』としての役割とはなんだ!」

 『それが次の知りたい真実ですね? 少々お待ちを――』

 今分かっていることは、俺に復讐したいやつがいて、それを実行する為この世界に呼ばれたと言うこと。そして、本物の魔王として存在していること。これは間違いない事実。となると、さっき言っていた『役割』とはなんだ? 例えば芙蓉たちがエアモルベーゼを討伐、もしくは封印する為の『役割』を持って召喚されたのだとしたて、事前に俺の役割を知っておけば対策は取れるのでは、と思ったのだ。

 チャカチャカ……チーン!

 例の音が鳴り、水晶が俺に話しかけてきた。さて、どうだ……?

 『あなたの『魔王』としての『役割』ですが『復讐者』に『討伐』されるためのようです』

 「……そうか」

 復讐者がどんなやつか分からないが、やはりそういうことなのだろう。だったら、そいつに会ったら俺は必ず負けるのだろうか? そんなことを考えていると、見透かしたように水晶が俺に告げる。

 『確かに『役割』は決まっていますが、結末は確定ではありません。あなたにはまだ無限に選択肢が残されています』

 「真実の水晶としてその発言はいいのか?」

 『真実とは『嘘偽りがないこと』。今、あなたにとっての真実は『あなたは魔王であり、復讐者が討伐のためいつか相見える』ということです。未来の出来事はまだ決まっていませんから、もしあなたが死んでしまう可能性があるとしても、現時点では真実ではありませんよね?』

 自信満々に言う水晶。

 「なら、俺が復讐者とやらを退けることもできるってわけだ」

 『未来は変化します。それはあなた次第。おや、光翼の勇者の魔力が尽きそうです。今の話は共有しますか?』

 水晶に言われ、俺は少し考えてから答える。

 「いや、俺が自分で伝えよう。それがみんなと一緒にいる責任みたいなもんだ」

 『結構です。また、真実を知りたくなったらお越しください――』

 その言葉を最後に、俺の視界がぐにゃりと歪み段々眠くなってくる。他にもまだあったような気がするが……ダメだ、思い出せない……



 ◆ ◇ ◆


 <エントラウム>


 『真実の水晶を使ったわね。さて、これでカケルさんは自身のことを知った……どう動くかしらね? ま、自殺はできないようになっているから、せいぜい急ぐことね復讐者さん』

 アウロラは細い目を少し開き、地上が見える池を見つめていた。そこにはテーブルに突っ伏すウェスティリアとカケルが映し出されていた。

 『魔王の力は強大だから、あの男は怒るかもね。ま、それでも有利だと思うし、後は勝手にやればいい。できればカケルさんの討伐は封印を解いた後にして欲しいけど、どう転んでも私が損をすることは無いからじっくり待ちましょう』

 池に背を向け、再び細めになり微笑むアウロラがテーブルに座りお茶を飲む。

 『役者とシナリオは揃った。後は踊ってもらうだけ……ウフフ、300年待った甲斐があったわね……フフフ……ホホ……ホーッホッホッホ! ……ゲフゴフ!? お茶が気管に……!?』



 そんなアウロラを陰から見ている人物が――

 『あれはアウロラじゃない? でも気配はそれ……一体どういうことなの?』

 アウロラの同僚、ノアだった。


 ◆ ◇ ◆

 「カケル! おい、カケル!」

 「お嬢様!」

 ん……俺を呼ぶ声が聞こえる……これはクロウか……? それとリファがティリアを呼んでいる……? 頭痛がするなと思いながら、俺は体を起こす。

 「目が覚めたか。芙蓉に聞いておったが心配したぞ」

 「師匠」

 「うむ」

 「近いよ!?」

 もうちょっとで唇が触れ合うくらい顔が近い。その横で頬を膨らませているルルカがなんとか食い止めてくれているのを見て把握した。

 「どれくらい意識を失っていた?」

 「もう! メリーヌさんは油断すると危ないよね! 大丈夫、カケルさん? かれこれ二時間かな?」

 「マジか、俺の中だとまだ15分くらいなんだが……」

 頭を揺すり目の前を見ると、ティリアも目を覚ましたようで、うーん、と伸びをした。ぐーとお腹が鳴って顔を真っ赤にしたところで芙蓉が声をかけてきた。というかティリア、さっき晩飯食ったろお前……

 「どうだったカケルさん。何か新しいことがわかった?」

 「……ああ、ちょっと厄介事がポロポロとな……」

 俺はみんなに先程聞いたことを話し始めた――
 

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