プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
三章 プロローグ
人は生まれついたその瞬間から孤独だ。
誰かを愛し、誰かと信頼しあったとしても一人で生きて、一人で死ぬ。
それは生きていれば誰もがそうで、でもやっぱり感じる寂しさを紛らわすために今日も誰かとの繋がりを求めている。
そうした繋がりをもって生まれたのが人の世界であるというのなら……
「私の世界ってなんでこんなに狭いのかな?」
私が生まれた家は代々この星見ヶ原を治めてきた地主で広大な土地や家業もあって幅を利かせてきた家柄である。
そのせいか父も母も多忙で滅多に家に寄り付くことはない。
身の回りを世話してくれる人もいるが、依頼主の娘と雇用者では対等な関係など結べるはずもなかった。
「みんな仕事で忙しいし、しょうがないよね」
幼き日の私は、この広い屋敷で孤独を持て余していた。
親しい者など一人もいないこの家で、私は日がな一日縁側に腰掛けては空を見上げる。
「私にも翼があったらなあ」
空という大海を泳ぐ鳥たちに羨望を抱く。
さしずめ今の私は家という籠に囚われた小鳥なのだろうか?
「はー、友達が欲しいなぁ」
思わず心の声が現実に口を出す。
この寂しさを癒してくれる人が居るならこの憂さも晴れるのに。
『じゃあ俺が友達になってやろうか?』
「誰っ!?」
突如として挙げかけられた声に、倒していた身体を起こして周囲を伺う。
不審者であるならすぐさま大声を出して家の人を呼ばなくちゃいけない。
「どこ見てんだよ? ここだよここ!」
その声の出所は上からだった。
一人の子供が庭に生えている木の上からこちらを見下ろしていた。
活発そうな笑顔を作り、やんちゃそうな印象を受ける。
片方にだけ掛けた眼鏡がとても私の印象に残った。
「男の子?」
年頃は私と同じくらいだろうか?
奉公人の誰かの子供かとも思ったが、そんな子が庭の木に登ったりするだろうか?
「どうやってここに入ってきたの?」
「んー? 山道を探検したら道に迷っちまったみたいでよ、目につくでかい家があったからとりあえず電話貸してもらおうと思って来た」
あっけらかんとした表情で語る少年に毒気を抜かれる。
少なくともこちらに危害を与えるために来たわけではないようだ。
「んで、お前名前は?」
「えっ?」
「名前だよ名前! 友達になるなら必要だろ?」
少年は強引に距離を詰めてくる。
私は突然現れた少年に狼狽しながらも、その気さくな態度にほんのちょっとだけ興味を引かれた。
「私、星野よ。星野海……」
「おう、星の海かー、なんかキラキラしてかっこいい名前だな!」
「あ、ありがとう」
そんなこと誰にも言われたことないけど、名前を褒められるのは何故か無性に嬉しい。
「それで貴方の名前は? 何て呼べばいいの?」
私の問いに少年はニカッと笑って木の幹を伝って庭へと降り立つ。
つかつかとそのまま歩み寄って来て右手を差し出してきた。
「俺はムクロ! 神無骸だ!!」
「……むくろ君?」
相手の名前を舌で転がすように確認する。
正直、ちょっと変わった名前だなあと思ったのはここだけの秘密だ。
「おう! よろしくな、海!」
そうしてある日突然現れたその小さな乱入者は、退屈でつまらない私の世界を見事に破壊していった。
私に出来た生まれて初めての、大切な友達。
今でも大好きな私の友達。
あれから十年近くの年月が流れて、私達はすっかり大人になったけど……
むくろ君も私の事、大切な友達だって思っててくれてるよね?
誰かを愛し、誰かと信頼しあったとしても一人で生きて、一人で死ぬ。
それは生きていれば誰もがそうで、でもやっぱり感じる寂しさを紛らわすために今日も誰かとの繋がりを求めている。
そうした繋がりをもって生まれたのが人の世界であるというのなら……
「私の世界ってなんでこんなに狭いのかな?」
私が生まれた家は代々この星見ヶ原を治めてきた地主で広大な土地や家業もあって幅を利かせてきた家柄である。
そのせいか父も母も多忙で滅多に家に寄り付くことはない。
身の回りを世話してくれる人もいるが、依頼主の娘と雇用者では対等な関係など結べるはずもなかった。
「みんな仕事で忙しいし、しょうがないよね」
幼き日の私は、この広い屋敷で孤独を持て余していた。
親しい者など一人もいないこの家で、私は日がな一日縁側に腰掛けては空を見上げる。
「私にも翼があったらなあ」
空という大海を泳ぐ鳥たちに羨望を抱く。
さしずめ今の私は家という籠に囚われた小鳥なのだろうか?
「はー、友達が欲しいなぁ」
思わず心の声が現実に口を出す。
この寂しさを癒してくれる人が居るならこの憂さも晴れるのに。
『じゃあ俺が友達になってやろうか?』
「誰っ!?」
突如として挙げかけられた声に、倒していた身体を起こして周囲を伺う。
不審者であるならすぐさま大声を出して家の人を呼ばなくちゃいけない。
「どこ見てんだよ? ここだよここ!」
その声の出所は上からだった。
一人の子供が庭に生えている木の上からこちらを見下ろしていた。
活発そうな笑顔を作り、やんちゃそうな印象を受ける。
片方にだけ掛けた眼鏡がとても私の印象に残った。
「男の子?」
年頃は私と同じくらいだろうか?
奉公人の誰かの子供かとも思ったが、そんな子が庭の木に登ったりするだろうか?
「どうやってここに入ってきたの?」
「んー? 山道を探検したら道に迷っちまったみたいでよ、目につくでかい家があったからとりあえず電話貸してもらおうと思って来た」
あっけらかんとした表情で語る少年に毒気を抜かれる。
少なくともこちらに危害を与えるために来たわけではないようだ。
「んで、お前名前は?」
「えっ?」
「名前だよ名前! 友達になるなら必要だろ?」
少年は強引に距離を詰めてくる。
私は突然現れた少年に狼狽しながらも、その気さくな態度にほんのちょっとだけ興味を引かれた。
「私、星野よ。星野海……」
「おう、星の海かー、なんかキラキラしてかっこいい名前だな!」
「あ、ありがとう」
そんなこと誰にも言われたことないけど、名前を褒められるのは何故か無性に嬉しい。
「それで貴方の名前は? 何て呼べばいいの?」
私の問いに少年はニカッと笑って木の幹を伝って庭へと降り立つ。
つかつかとそのまま歩み寄って来て右手を差し出してきた。
「俺はムクロ! 神無骸だ!!」
「……むくろ君?」
相手の名前を舌で転がすように確認する。
正直、ちょっと変わった名前だなあと思ったのはここだけの秘密だ。
「おう! よろしくな、海!」
そうしてある日突然現れたその小さな乱入者は、退屈でつまらない私の世界を見事に破壊していった。
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今でも大好きな私の友達。
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