プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
62話 仲直りできるかな?
5月に入ったとはいえ、まだ夜になると肌寒かったりするのだが今日に限ってはこの冷たさが心地よく感じる。
空はすっかり陽が落ちて、街には夜の帳が降りていた。
「ふう、凄かったな」
「はい、まだ身体がふわふわしてます」
俺たちはステージの余韻に浸っている。
四葉のステージは見事な盛り上がりを見せ、観客達を沸かせて魅せた。
一度終わってから四葉がステージから降りた後もアンコールを望む声が鳴り止まず、それに応じた四葉がまた歌い始めるなどあったが、楽しい時間はすぐに過ぎ去るものらしい。
今は会場の外で身体に籠った熱を冷まし、余韻に浸っていた。
「ヘカテアさん、四葉ちゃんを審査するって言ってましたけど、結局どうだったんですかね?」
「どうかな? まあそれを聞く役目は俺たちじゃないだろ」
そうこうしているうちに、アリスが何か考えごとをしているヘカテアへと歩み寄った。
「どうだったかしら? うちの四葉は? なかなかやるもんでしょう?」
安心安定のアリス節だ。四葉のステージが成功した後なのでいつにも増して乗っているように感じられた。
「んー☆ そうだね♪ まったく口先だけの奴じゃないのは間違いないみたいかな♫」
そして意外なことにヘカテアも素直に四葉のステージを賞賛しているようだった。
「ーーあれが、アリスちゃんが仕えたいと思った人なんだね?」
「そうよ」
ヘカテアの質問にアリスはハキハキと即答する。
「そういえば、まだ理由聞いてなかったよね? なんであの子にしたの☆」
アリスはふと考えるように、丸い月が浮かんだ夜空を見上げ、やがて口を開いた。
「……ねえ、ヘカテアは私の国に居たから分かると思うけど私は自分の国でプリンセスしてみんなから慕われてたと思うわ」
「そうだね、アリスちゃんはみんなの憧れの的だった」
もちろんあたしも含めてねとヘカテアはアリスの言葉を全肯定する。
「そう思ってくれるのは誇らしいし、素直に嬉しいと思ってる。でもね、それと同じくらい寂しくも思ってたの」
「寂しい?」
「慕われてても親しく思ってくれる人はいなかったわ、みんなすごいすごいって褒めてくれるけど遠巻きに眺めてるだけだったもの」
アリスは自分の気持ちを吐露する。
それはアリスというキャラクターには似つかわしくなく、だからこそアリスもこれまで黙っていたのだろう。
「私はね、きっと傍に居てくれる誰かが欲しかった」
自分の評価と自分の感情が食い違った時、人はその感情の置き場に迷う。
「初めてこっちの世界に来て四葉のステージをたまたま見る機会があってね、四葉は私と同じ誰かに注目される人だったのに、私と違って近くにいる人と一緒に幸せになれる子なの」
きっとアリスも同じだったのだろう。
そうして見つけた居場所が有栖院四葉だったのだ。
「天に二つの太陽が並ぶことはないかもしれない、でも私たちは太陽にはなれない。空に一人で浮いてるだけなんて孤独にーーきっと私には耐えられないわ」
だからこそアリスはようやく見つけた自分の居場所を守るために、あんなに一生懸命に頑張っていたのだ。
「四葉は、私の隣に立てる人。私にとっての太陽の王様なんだから」
アリスの言葉を、ヘカテアは遮ることもせず紳士に聞き入っていた。
「そっかーーアリスちゃんでも、そんなこと考えたりするんだね、あたし知らなかったな☆」
ふぅーと息を吐いてヘカテアがアリスを見据える。
その瞳には昨日までの取りつかれたような執着は見受けられなかった。
「ごめんね、アリスちゃん。あたしってばあの子の言う通りだ。アリスちゃんのこと何にも見れてなかったんだね、本当にごめんね?」
四葉に指摘された通り、ヘカテアはアリスの幻想を追っていた。
今、アリスの心に触れてようやく相手を見る余裕がヘカテアに生まれていた。
「あなたは悪くないわ。ヘカテアがこんなに私のこと気にしてくれてたのに、私は自分のことばっかりで全然気づいてあげられなかった」
「アリスちゃん、今からでもあたしと仲直りしてくれる?」
「馬鹿ね、そんなの当たり前じゃない」
アリスとヘカテアはしばらく抱き合いながら泣きあっていた。
紆余曲折あったが、落ち着くところに落ち着いたようだ。
「雨降って地固まるってとこか」
「どう言う意味なんですか?」
「喧嘩したからこそ仲直り出来たって感じかね?」
ナニィの疑問に俺はそう返す。
俺も子供の頃にはよく小太郎とは喧嘩した。
その喧嘩があって、ぶつかり合えだからこそきっと親友なんだろう。
「アリスちゃん、私ね? 四葉ちゃんに伝えたいことがあるの☆ 案内してくれるかな?」
そろそろ四葉の方も片づけが終わった頃だろう。
俺達は奮闘した四葉を迎える為に会場へと引き返していった。
空はすっかり陽が落ちて、街には夜の帳が降りていた。
「ふう、凄かったな」
「はい、まだ身体がふわふわしてます」
俺たちはステージの余韻に浸っている。
四葉のステージは見事な盛り上がりを見せ、観客達を沸かせて魅せた。
一度終わってから四葉がステージから降りた後もアンコールを望む声が鳴り止まず、それに応じた四葉がまた歌い始めるなどあったが、楽しい時間はすぐに過ぎ去るものらしい。
今は会場の外で身体に籠った熱を冷まし、余韻に浸っていた。
「ヘカテアさん、四葉ちゃんを審査するって言ってましたけど、結局どうだったんですかね?」
「どうかな? まあそれを聞く役目は俺たちじゃないだろ」
そうこうしているうちに、アリスが何か考えごとをしているヘカテアへと歩み寄った。
「どうだったかしら? うちの四葉は? なかなかやるもんでしょう?」
安心安定のアリス節だ。四葉のステージが成功した後なのでいつにも増して乗っているように感じられた。
「んー☆ そうだね♪ まったく口先だけの奴じゃないのは間違いないみたいかな♫」
そして意外なことにヘカテアも素直に四葉のステージを賞賛しているようだった。
「ーーあれが、アリスちゃんが仕えたいと思った人なんだね?」
「そうよ」
ヘカテアの質問にアリスはハキハキと即答する。
「そういえば、まだ理由聞いてなかったよね? なんであの子にしたの☆」
アリスはふと考えるように、丸い月が浮かんだ夜空を見上げ、やがて口を開いた。
「……ねえ、ヘカテアは私の国に居たから分かると思うけど私は自分の国でプリンセスしてみんなから慕われてたと思うわ」
「そうだね、アリスちゃんはみんなの憧れの的だった」
もちろんあたしも含めてねとヘカテアはアリスの言葉を全肯定する。
「そう思ってくれるのは誇らしいし、素直に嬉しいと思ってる。でもね、それと同じくらい寂しくも思ってたの」
「寂しい?」
「慕われてても親しく思ってくれる人はいなかったわ、みんなすごいすごいって褒めてくれるけど遠巻きに眺めてるだけだったもの」
アリスは自分の気持ちを吐露する。
それはアリスというキャラクターには似つかわしくなく、だからこそアリスもこれまで黙っていたのだろう。
「私はね、きっと傍に居てくれる誰かが欲しかった」
自分の評価と自分の感情が食い違った時、人はその感情の置き場に迷う。
「初めてこっちの世界に来て四葉のステージをたまたま見る機会があってね、四葉は私と同じ誰かに注目される人だったのに、私と違って近くにいる人と一緒に幸せになれる子なの」
きっとアリスも同じだったのだろう。
そうして見つけた居場所が有栖院四葉だったのだ。
「天に二つの太陽が並ぶことはないかもしれない、でも私たちは太陽にはなれない。空に一人で浮いてるだけなんて孤独にーーきっと私には耐えられないわ」
だからこそアリスはようやく見つけた自分の居場所を守るために、あんなに一生懸命に頑張っていたのだ。
「四葉は、私の隣に立てる人。私にとっての太陽の王様なんだから」
アリスの言葉を、ヘカテアは遮ることもせず紳士に聞き入っていた。
「そっかーーアリスちゃんでも、そんなこと考えたりするんだね、あたし知らなかったな☆」
ふぅーと息を吐いてヘカテアがアリスを見据える。
その瞳には昨日までの取りつかれたような執着は見受けられなかった。
「ごめんね、アリスちゃん。あたしってばあの子の言う通りだ。アリスちゃんのこと何にも見れてなかったんだね、本当にごめんね?」
四葉に指摘された通り、ヘカテアはアリスの幻想を追っていた。
今、アリスの心に触れてようやく相手を見る余裕がヘカテアに生まれていた。
「あなたは悪くないわ。ヘカテアがこんなに私のこと気にしてくれてたのに、私は自分のことばっかりで全然気づいてあげられなかった」
「アリスちゃん、今からでもあたしと仲直りしてくれる?」
「馬鹿ね、そんなの当たり前じゃない」
アリスとヘカテアはしばらく抱き合いながら泣きあっていた。
紆余曲折あったが、落ち着くところに落ち着いたようだ。
「雨降って地固まるってとこか」
「どう言う意味なんですか?」
「喧嘩したからこそ仲直り出来たって感じかね?」
ナニィの疑問に俺はそう返す。
俺も子供の頃にはよく小太郎とは喧嘩した。
その喧嘩があって、ぶつかり合えだからこそきっと親友なんだろう。
「アリスちゃん、私ね? 四葉ちゃんに伝えたいことがあるの☆ 案内してくれるかな?」
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