プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
59話 響渡祭
響渡祭当日。
多くの観光客が街に溢れ、子供連れの家族や恋人同士と思われる二人組、仲の良い友達同士で来ているグループを相手に、出店の人達は熱心に声を張り上げて勧誘を続けていた。
そんな人ごみの中を俺たちは這うようにして移動している。
「しかし人が多いなあ、見ろよ人がゴミのようだぜ?」
「目玉を焼き切る光が必要なら出してあげましょうか?」
アリスの指が光を発し始めたのであわてて退避する。
「それにしても、今日晴れて良かったですね! お祭りの日に雨なんて嫌ですし」
ナニィが空を見上げながらそう呟く。
その言葉通り雲一つない大空が今日という日を祝福しているようだった。
「それにしても随分満喫してるみたいだな」
「ほえっ?」
ナニィはタコ焼き、イカ焼き、ベビーカステラ、カラアゲ、ドリンクなど目に付いた屋台に行っては食べ物を買っている。
今もチョコバナナをおいしそうに頬張っている最中だ。
「いや、楽しんでるならそれでいいんだ。ここんところなんだかんだで戦い詰めだったからよ、今日ぐらい思いっきり楽しもうぜ?」
「もぐもぐ……はい、今日という日は思いっきり遊んでやりますよ!屋台巡りなんて城下じゃ出来ないですからね!」
「うん?そういうもんなのか?」
物珍しそうに周囲を見回すナニィの瞳はその蒼玉をキラキラと輝かせていた。
屋台のような出店などいくらでもありそうなもんだが。
「自分の国の姫が出てきたら接待でお仕事どころじゃないですもん。エミィ姉様からも考えなしに歩き回るなってきつく注意されてました!まあ、ネミィちゃんは気にしてませんでしたけど」
やっぱり護衛なしに出回れるのが大きいんですかねえとナニィがぼやく。
これだけはしゃいでいるのも、日頃の反動なのか?  自分ならお城の中に長い時間缶詰めなんて耐えられない。
「そういうことなら今日は屋台全制覇するぐらいの勢いでいくか、せっかくの機会だし活かさないとな」
屋台を物色して何か面白そうなものはないかと二人で探す。
「――ああやって食べた物が全部胸に行くんでしょうね、なんで?どうして? 世の中は不公平よ!」
どうせなので響渡祭を思いっきり楽しもうとする俺達を何故かついてきているアリスがじと目で見てくる。
その空気抵抗が少なそうな胸あたりをしきりにさすってはガックリと項垂れていた。
「そうだーそうだー事態の改善を要求する☆」
アリスの嘆きにヘカテアが同意する。
その隣ではヘカテアの監視役を務めている黒部がサイフを逆さまに振りながら肩を落としていた。
どうやら屋台のような食べ物に目がないお姫様達に大分毟り取られたようだった。
「ちっ、その程度の大きさでちっぱいを名乗ろうなんて片腹いたいわね」
「ええ? あたしでも胸のサイズBだよB? 全然おっきくないもん☆」
「ちっぱいを名乗っていいのはAまでなの、残念だったわねヘカテア」
「判定が厳しすぎるよぉ☆」
バッサリ切り捨てられたヘカテアが涙する。
元々幼馴染だったというだけのことはあり、ぎこちないながらもコミュニケーションを取ろうとしていた。
「――なんでお前らここにいんの? というか四葉の側についてなくて良いのか?」
普段は相方にべったりとくっついているアリスが今回は準備を手伝わずに屋台回りをしているのが不思議でしょうがなかった。
「最初はそうするつもりだったんだけど、四葉が『今回ばっかりはアリスちゃんの力を借りるわけにはいきません! それに今のアリスちゃんには他にやることがありますよね?』って言われて追い出されたのよ」
「なんだよ? 他にやることって」
こいつが四葉以上に優先するものなんてあるんだろうか?
「……仲直りして来いって、言われちゃったのよね」
「ああ、なるほどね」
四葉がヘカテアの方を横目で盗み見る。
ヘカテアも黒部監視の下とはいえ祭りを楽しんでいるようだった。
「まあ、時間はまだまだあるんだ。ゆっくりやればいいさ」
「そうね、出来る限りやってみるわ」
四葉のおかげでヘカテアと共に過ごす時間が出来たのだ、是非有効活用してもらいたいところである。
「ムクロさーん!私、このくじっていう奴やってみたいです!」
ナニィがはしゃぐ声が聞こえてくる。
よっぽど浮かれているのか、まあ無理もない。
目下の問題は片付いたのだ、今日ぐらいは羽を伸ばしてもらおう。
「食べ物もいいですけど、色んな楽器なんかも置いてあるんですね、お試しで演奏してもいいらしいですよ!」
「へえー、そいつは面白そうだな!普通の祭りだとああいうのはないから、また違った意味で面白そうだ」
響渡祭という名前だけあって多種多様な楽器なども並べられている。
一般的に有名な楽器やら、見たこともないような楽器もあるようだった。
「楽器といえば、ヘカテア!」
「はいは~い☆ 貴方が及びなのは可愛いヘカテアちゃんですか? それとも美しいヘカテアちゃんですか?」
「どっちでもないわよ、あんた楽器の演奏得意だったわよね? 折角だし何か弾いてみてくれないかしら?」
「アリスちゃんのお望みとあらば! たとえベッドの中まででもお供するよ♪」
「ありがとう。でも間に合ってるわ」
アリスがバッサリとヘカテアを切り捨てる。
しょんぼりとしながらもヘカテアは露店へふらふらと入ると、お店の人と話し始めた。
「それじゃあ行くよ♪ ヘカテアちゃんTHEソロ☆」
店から借りたのか、キーボードを手にヘカテアが演奏を始める。
そうやってヘカテアが奏でる音色を楽しみながら、俺達の祭りの時間は過ぎていった。
多くの観光客が街に溢れ、子供連れの家族や恋人同士と思われる二人組、仲の良い友達同士で来ているグループを相手に、出店の人達は熱心に声を張り上げて勧誘を続けていた。
そんな人ごみの中を俺たちは這うようにして移動している。
「しかし人が多いなあ、見ろよ人がゴミのようだぜ?」
「目玉を焼き切る光が必要なら出してあげましょうか?」
アリスの指が光を発し始めたのであわてて退避する。
「それにしても、今日晴れて良かったですね! お祭りの日に雨なんて嫌ですし」
ナニィが空を見上げながらそう呟く。
その言葉通り雲一つない大空が今日という日を祝福しているようだった。
「それにしても随分満喫してるみたいだな」
「ほえっ?」
ナニィはタコ焼き、イカ焼き、ベビーカステラ、カラアゲ、ドリンクなど目に付いた屋台に行っては食べ物を買っている。
今もチョコバナナをおいしそうに頬張っている最中だ。
「いや、楽しんでるならそれでいいんだ。ここんところなんだかんだで戦い詰めだったからよ、今日ぐらい思いっきり楽しもうぜ?」
「もぐもぐ……はい、今日という日は思いっきり遊んでやりますよ!屋台巡りなんて城下じゃ出来ないですからね!」
「うん?そういうもんなのか?」
物珍しそうに周囲を見回すナニィの瞳はその蒼玉をキラキラと輝かせていた。
屋台のような出店などいくらでもありそうなもんだが。
「自分の国の姫が出てきたら接待でお仕事どころじゃないですもん。エミィ姉様からも考えなしに歩き回るなってきつく注意されてました!まあ、ネミィちゃんは気にしてませんでしたけど」
やっぱり護衛なしに出回れるのが大きいんですかねえとナニィがぼやく。
これだけはしゃいでいるのも、日頃の反動なのか?  自分ならお城の中に長い時間缶詰めなんて耐えられない。
「そういうことなら今日は屋台全制覇するぐらいの勢いでいくか、せっかくの機会だし活かさないとな」
屋台を物色して何か面白そうなものはないかと二人で探す。
「――ああやって食べた物が全部胸に行くんでしょうね、なんで?どうして? 世の中は不公平よ!」
どうせなので響渡祭を思いっきり楽しもうとする俺達を何故かついてきているアリスがじと目で見てくる。
その空気抵抗が少なそうな胸あたりをしきりにさすってはガックリと項垂れていた。
「そうだーそうだー事態の改善を要求する☆」
アリスの嘆きにヘカテアが同意する。
その隣ではヘカテアの監視役を務めている黒部がサイフを逆さまに振りながら肩を落としていた。
どうやら屋台のような食べ物に目がないお姫様達に大分毟り取られたようだった。
「ちっ、その程度の大きさでちっぱいを名乗ろうなんて片腹いたいわね」
「ええ? あたしでも胸のサイズBだよB? 全然おっきくないもん☆」
「ちっぱいを名乗っていいのはAまでなの、残念だったわねヘカテア」
「判定が厳しすぎるよぉ☆」
バッサリ切り捨てられたヘカテアが涙する。
元々幼馴染だったというだけのことはあり、ぎこちないながらもコミュニケーションを取ろうとしていた。
「――なんでお前らここにいんの? というか四葉の側についてなくて良いのか?」
普段は相方にべったりとくっついているアリスが今回は準備を手伝わずに屋台回りをしているのが不思議でしょうがなかった。
「最初はそうするつもりだったんだけど、四葉が『今回ばっかりはアリスちゃんの力を借りるわけにはいきません! それに今のアリスちゃんには他にやることがありますよね?』って言われて追い出されたのよ」
「なんだよ? 他にやることって」
こいつが四葉以上に優先するものなんてあるんだろうか?
「……仲直りして来いって、言われちゃったのよね」
「ああ、なるほどね」
四葉がヘカテアの方を横目で盗み見る。
ヘカテアも黒部監視の下とはいえ祭りを楽しんでいるようだった。
「まあ、時間はまだまだあるんだ。ゆっくりやればいいさ」
「そうね、出来る限りやってみるわ」
四葉のおかげでヘカテアと共に過ごす時間が出来たのだ、是非有効活用してもらいたいところである。
「ムクロさーん!私、このくじっていう奴やってみたいです!」
ナニィがはしゃぐ声が聞こえてくる。
よっぽど浮かれているのか、まあ無理もない。
目下の問題は片付いたのだ、今日ぐらいは羽を伸ばしてもらおう。
「食べ物もいいですけど、色んな楽器なんかも置いてあるんですね、お試しで演奏してもいいらしいですよ!」
「へえー、そいつは面白そうだな!普通の祭りだとああいうのはないから、また違った意味で面白そうだ」
響渡祭という名前だけあって多種多様な楽器なども並べられている。
一般的に有名な楽器やら、見たこともないような楽器もあるようだった。
「楽器といえば、ヘカテア!」
「はいは~い☆ 貴方が及びなのは可愛いヘカテアちゃんですか? それとも美しいヘカテアちゃんですか?」
「どっちでもないわよ、あんた楽器の演奏得意だったわよね? 折角だし何か弾いてみてくれないかしら?」
「アリスちゃんのお望みとあらば! たとえベッドの中まででもお供するよ♪」
「ありがとう。でも間に合ってるわ」
アリスがバッサリとヘカテアを切り捨てる。
しょんぼりとしながらもヘカテアは露店へふらふらと入ると、お店の人と話し始めた。
「それじゃあ行くよ♪ ヘカテアちゃんTHEソロ☆」
店から借りたのか、キーボードを手にヘカテアが演奏を始める。
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