プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
49話 あーんして?
時は戻って現在、アリス達からこれまでの経緯を聞くことになった俺達は診療室で話し合いをしていた。
アリスは未だ足が痛むのかベッドに腰掛けた状態で優雅に紅茶を啜っている。
その様は正に深窓の令嬢のように絵になっていて、内面を知ることのない人物が見れば思わず目を奪われていただろう。
「へぇー、二人の間にそんなことがあったんですねぇ」
ズズッと出されたお茶をすすりながら呑気な返事をするナニィ。
話を聞きながらもその目は机に広げられたお茶菓子に向けられ、無邪気に瞳を輝かせている。
「その後で、アリスちゃんから出自のこととかプリンセス・セレクションでしたっけ? それについての説明もその時に初めてされたんです……もっと早く話してくれればいいのに」
対面に座っている四葉は、ナニィの視線を受けて微笑ましいものを見る目で、お茶請けをナニィの方に差し出している。
他者に対する気遣いを怠らない実によく出来た少女だ。見た目はアリスとそっくりだが、性格は月とスッポンである。
「本当は話すとまずいんだけど、こうなっちゃった以上四葉も無関係じゃないし情報を共有しとく必要があったのよね……あ、ちょっとアンタ! それ、私が最後に食べようと思って取っておいたシュークリームなんだけど!?」
「ふっふっふー、早いもの勝ちですよアリスさん? 油断大敵です♪」
チョコレートソースが上にかけられたシュークリームをひょいと摘み上げておいしそうに頬張る。
狙っていた獲物を目の前で横取りされたアリスが歯ぎしりするが、肝心のブツは既にナニィの胃袋へと取り込まれた後だった。
「お姫様の癖に食い意地張ってんじゃないわよ!?」
「うちは妹がバカ食いするんでちょっとした戦場なんですよね、目を離した隙に食べられていくので自然と身に着くんです」
「あんたの家庭事情なんて聞いてないわよぉおお!!」
「まあまあ喧嘩はやめようよ? それにこっちのプリンもおいしいよ? はい、アリスちゃんあーんして?」
怒り狂う神様にお供えするように四葉がプリンを搭載したスプーンを差し出す。
気恥ずかしそうにしながらも、上品に小口をあけて食べる。
「……本当においしいわねこのプリン。もう一口ちょうだい?」
「後は私の分だからダーメ♪」
甘いものを摂取して、怒りが溶けたアリスはおかわりをねだるもすげなく断られていた。
「……やべえなんだこの女子会みたいなノリ。俺、場違いじゃね? 本当にここに居ていいんだろうか不安になってきた」
甘い雰囲気に毒されて辟易する。
「そうねぇ、アンタが美少女偏差値ぐっと下げてるわねぇ」
「そりゃ男ですからねぇ」
「そうねぇ、アンタが顔面偏差値ぐっと下げてるわねぇ」
「なんで言い直すんだよ!? 親からもらったこのフェイスに文句あるってのかあぁん?」
「だ、大丈夫ですよムクロさん! ちょっと個性的な感じもしますけど気になるほどじゃないですから!」
「フォローしたいのかディスりたいのかハッキリせいや!」
傷口に塩を塗り込んでくるナニィの頭に正義のチョップをお見舞いする。
痛そうに頭を抱えるナニィを尻目に、先程のアリスの話を思い出していた。
「まぁ、でもなんだ……そんな事情があるんじゃお仲間に救援要請が出せなかったのも無理ないな」
「ですです、味方なのに敵かもしれないんじゃ信用できませんし」
人が集まれば派閥が出来るもんだし、難しいものだ。
「でもでもこれからどうするんですか? やっぱり相手の出方を待つしかないんでしょうか?」
方針を決めるにあたって、ナニィから疑問が出た。
俺は部屋にいる面子を一瞥して頷く。
「アリスも負傷してるし、四葉一人だけ放置する訳にもいかないからな」
相手の居場所も分からない、探そうにも動かせる駒がない。待ち受ける以外の選択肢が俺たちにはない。
そうであるなら今まで通り最大限の警戒をするだけだ。
「いえ、こっちから撃って出ましょう。昔から戦は攻めに出ないと勝てないって言うしね」
そう思っていたのに、それを退けたのは意外にもアリスだった。
「勇ましい意見だけどよ、肝心の敵がどこにいるのかわからんのだろ?」
「……今回の件で敵が少なくとも島にいることはわかってるし、勝算がないわけじゃないわ。貴方達に外を出回ってもらえれば敵からの接触もあるかもしれないし……」
らしくもない歯切れの悪い言い回しだった。
良くも悪くも自信満々な言動をしていた奴とは思えないが。
(まさかとは思うけど、怪我して怖気付いたなんてことはねえよな?)
それで俺たちを釣り餌にして自分達は逃げるつもりなのかもしれない。
出来るか出来ないかで言えば可能だろう。
何と言ってもアリスにはナニィのカードという文字通りの切り札があるからだ。
「で、でも私達だけで選定官さんに勝てるのかなぁ? みんなアリスさんやジャウィンみたいに強い人達なんですよね?」
「お願い……あまり会場に敵を近づけたくないの、ほら……四葉は戦えないし、私もこんなんだし」
「す、すみませんっ! そうですよね、安心してください! どこまで出来るか分かりませんけど、私達で敵を食い止めてみます!」
「悪いわね、頼りにしてるわ」
結局今のところはアリスの要求通りに動くしかない訳だが……。
方針を話し合う二人を見ながら思案する。
さて、本当に指示通り動いていいものかと……。
アリスは未だ足が痛むのかベッドに腰掛けた状態で優雅に紅茶を啜っている。
その様は正に深窓の令嬢のように絵になっていて、内面を知ることのない人物が見れば思わず目を奪われていただろう。
「へぇー、二人の間にそんなことがあったんですねぇ」
ズズッと出されたお茶をすすりながら呑気な返事をするナニィ。
話を聞きながらもその目は机に広げられたお茶菓子に向けられ、無邪気に瞳を輝かせている。
「その後で、アリスちゃんから出自のこととかプリンセス・セレクションでしたっけ? それについての説明もその時に初めてされたんです……もっと早く話してくれればいいのに」
対面に座っている四葉は、ナニィの視線を受けて微笑ましいものを見る目で、お茶請けをナニィの方に差し出している。
他者に対する気遣いを怠らない実によく出来た少女だ。見た目はアリスとそっくりだが、性格は月とスッポンである。
「本当は話すとまずいんだけど、こうなっちゃった以上四葉も無関係じゃないし情報を共有しとく必要があったのよね……あ、ちょっとアンタ! それ、私が最後に食べようと思って取っておいたシュークリームなんだけど!?」
「ふっふっふー、早いもの勝ちですよアリスさん? 油断大敵です♪」
チョコレートソースが上にかけられたシュークリームをひょいと摘み上げておいしそうに頬張る。
狙っていた獲物を目の前で横取りされたアリスが歯ぎしりするが、肝心のブツは既にナニィの胃袋へと取り込まれた後だった。
「お姫様の癖に食い意地張ってんじゃないわよ!?」
「うちは妹がバカ食いするんでちょっとした戦場なんですよね、目を離した隙に食べられていくので自然と身に着くんです」
「あんたの家庭事情なんて聞いてないわよぉおお!!」
「まあまあ喧嘩はやめようよ? それにこっちのプリンもおいしいよ? はい、アリスちゃんあーんして?」
怒り狂う神様にお供えするように四葉がプリンを搭載したスプーンを差し出す。
気恥ずかしそうにしながらも、上品に小口をあけて食べる。
「……本当においしいわねこのプリン。もう一口ちょうだい?」
「後は私の分だからダーメ♪」
甘いものを摂取して、怒りが溶けたアリスはおかわりをねだるもすげなく断られていた。
「……やべえなんだこの女子会みたいなノリ。俺、場違いじゃね? 本当にここに居ていいんだろうか不安になってきた」
甘い雰囲気に毒されて辟易する。
「そうねぇ、アンタが美少女偏差値ぐっと下げてるわねぇ」
「そりゃ男ですからねぇ」
「そうねぇ、アンタが顔面偏差値ぐっと下げてるわねぇ」
「なんで言い直すんだよ!? 親からもらったこのフェイスに文句あるってのかあぁん?」
「だ、大丈夫ですよムクロさん! ちょっと個性的な感じもしますけど気になるほどじゃないですから!」
「フォローしたいのかディスりたいのかハッキリせいや!」
傷口に塩を塗り込んでくるナニィの頭に正義のチョップをお見舞いする。
痛そうに頭を抱えるナニィを尻目に、先程のアリスの話を思い出していた。
「まぁ、でもなんだ……そんな事情があるんじゃお仲間に救援要請が出せなかったのも無理ないな」
「ですです、味方なのに敵かもしれないんじゃ信用できませんし」
人が集まれば派閥が出来るもんだし、難しいものだ。
「でもでもこれからどうするんですか? やっぱり相手の出方を待つしかないんでしょうか?」
方針を決めるにあたって、ナニィから疑問が出た。
俺は部屋にいる面子を一瞥して頷く。
「アリスも負傷してるし、四葉一人だけ放置する訳にもいかないからな」
相手の居場所も分からない、探そうにも動かせる駒がない。待ち受ける以外の選択肢が俺たちにはない。
そうであるなら今まで通り最大限の警戒をするだけだ。
「いえ、こっちから撃って出ましょう。昔から戦は攻めに出ないと勝てないって言うしね」
そう思っていたのに、それを退けたのは意外にもアリスだった。
「勇ましい意見だけどよ、肝心の敵がどこにいるのかわからんのだろ?」
「……今回の件で敵が少なくとも島にいることはわかってるし、勝算がないわけじゃないわ。貴方達に外を出回ってもらえれば敵からの接触もあるかもしれないし……」
らしくもない歯切れの悪い言い回しだった。
良くも悪くも自信満々な言動をしていた奴とは思えないが。
(まさかとは思うけど、怪我して怖気付いたなんてことはねえよな?)
それで俺たちを釣り餌にして自分達は逃げるつもりなのかもしれない。
出来るか出来ないかで言えば可能だろう。
何と言ってもアリスにはナニィのカードという文字通りの切り札があるからだ。
「で、でも私達だけで選定官さんに勝てるのかなぁ? みんなアリスさんやジャウィンみたいに強い人達なんですよね?」
「お願い……あまり会場に敵を近づけたくないの、ほら……四葉は戦えないし、私もこんなんだし」
「す、すみませんっ! そうですよね、安心してください! どこまで出来るか分かりませんけど、私達で敵を食い止めてみます!」
「悪いわね、頼りにしてるわ」
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