プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
43話 お大事に
神無達が医務室に入ってから間もなくして、後から追いついてきたスタッフ達が集まってきていた。
誰しも焦りと不安が入り混じった表情でたむろしている。
しかしそれも無理のない事、少女が事故に巻き込まれて負傷し医務室に運び込まれたのだから……。
心配して駆けつけたはいいが、医務室の中は今――どうなってる?
怪我の具合は大したことなかったのか?
悪い想像ばかりが先行するばかり、こうしていても仕方がないと群集の中の一人が恐る恐る扉をノックした。
「四葉ちゃん? 大丈夫スか? 良かったら中に入れて欲しいっス」
声をかけてみるがしかし、中からの返事はない。
ドアノブを回そうとしても医務室には鍵がかかっていて、ガチャガチャと虚しく金属音が響くだけだった。
かといって蹴り破って突入すれば、もしも重傷を負っていたのなら取り返しのつかないことになるかもしれない。
結局、何も出来ることなく立ち尽くす以外ないのか?
焦燥とは裏腹に、すぐに状況は変化した。
「――すみません、ご心配おかけしてしまって」
襲い来る無力感を切り裂くように、ハッキリとした声が響く。
開かずの扉が開き、中から見覚えのある少女が姿を現した。
蜂蜜色のウェーブがかかった髪をなびかせ、傍には白銀の少女が体を支えている。
「四葉ちゃん!良かった〜 無事だったんすね?」
少女の名は有栖院四葉。
今回行われる響渡祭の主役で、今をときめく売れっ子アイドルにして自分たちが務める有栖芸能プロダクションのご令嬢でもある。
そんな娘に一生残る怪我を負わせたとなってはクビが飛ぶでは済まされない。
何より立場や才能に驕ることなく接してくれる少女の安否を誰もが心配していたのだ。
元気な姿を見られたことに対する安堵や怪我の有無が気になって近寄ろうとする。
「待って! 四葉ちゃん……怪我してるので少し離れてもらえますか?」
しかし、そんな彼らの浅慮を傍にいた少女が止めた。
整いながらも日本人離れした容姿、特に銀色の髪が目を引く少女だ。
つい先日、うちに来た少女がその気弱そうに見える丸い瞳を精一杯尖らせて牽制してくる。
「え? 怪我? だ、大丈夫なんすか? 本番明後日スよ?」
狼狽して下を見れば、四葉の右足には包帯が巻かれていた。
大事に至らなかったのは不幸中の幸いだったが、負傷ということなら響渡祭には出られなくなってしまう。
「だ、大丈夫です。ちょっと捻っただけで……明日にはまた練習出来ます!」
「で、でも四葉ちゃん……それで怪我が悪化でもしたら」
「私のせいでみんなが楽しみにしているお祭りが台無しになるなんてそんなこと出来ませんから」
「そうは言ってもスね……」
強情に譲らないその姿勢に思わず頭を抱える。
確かに軽傷であるなら頑張ってもらったほうが助かるが、そんな判断をスタッフに過ぎない自分たちに決められる訳がない。
そんなことを決められる人がいるとするならそれはここには一人しかいない。
『出るって言ってるんだから出してあげればいいんじゃないかしら?』
「え?あっ、支部長!?」
後ろから聞こえた待ち人の声にみんなが振り向いた。
ざわめくスタッフ達の後ろから出てきたのはこの支部の長であり、少女の母親でもある有栖院凪という女性だ。
母娘で顔立ちも似通っているのだが、母親の方には大きく上回る頼りに出来そうなオーラが漂っている。
「お母さん……」
「四葉――大丈夫なのね?」
「うん、私……頑張るから」
母と娘を真剣な面持ちで見つめ合う。
一瞬の視線の交差を経て、やがて――親は折れるように笑った。
「なら、精一杯頑張んなさい! バックアップはしてあげるわ」
「ありがとう……お母さん」
「四葉は今日はもう休むこと、ナニィちゃんも四葉に付いてあげてやってくれる?」
「わ、分かりました。責任をもって私が傍にいます」
「さぁ、そうと決まればさっさと準備に取り掛かるわよ! 壊れたところを直して補強! 時間ないわよ!!」
「は、はいッス!!」
支部長の号令の下、スタッフ一同は持ち場に戻っていく……。
響渡祭まで残された時間は――少ない。
誰しも焦りと不安が入り混じった表情でたむろしている。
しかしそれも無理のない事、少女が事故に巻き込まれて負傷し医務室に運び込まれたのだから……。
心配して駆けつけたはいいが、医務室の中は今――どうなってる?
怪我の具合は大したことなかったのか?
悪い想像ばかりが先行するばかり、こうしていても仕方がないと群集の中の一人が恐る恐る扉をノックした。
「四葉ちゃん? 大丈夫スか? 良かったら中に入れて欲しいっス」
声をかけてみるがしかし、中からの返事はない。
ドアノブを回そうとしても医務室には鍵がかかっていて、ガチャガチャと虚しく金属音が響くだけだった。
かといって蹴り破って突入すれば、もしも重傷を負っていたのなら取り返しのつかないことになるかもしれない。
結局、何も出来ることなく立ち尽くす以外ないのか?
焦燥とは裏腹に、すぐに状況は変化した。
「――すみません、ご心配おかけしてしまって」
襲い来る無力感を切り裂くように、ハッキリとした声が響く。
開かずの扉が開き、中から見覚えのある少女が姿を現した。
蜂蜜色のウェーブがかかった髪をなびかせ、傍には白銀の少女が体を支えている。
「四葉ちゃん!良かった〜 無事だったんすね?」
少女の名は有栖院四葉。
今回行われる響渡祭の主役で、今をときめく売れっ子アイドルにして自分たちが務める有栖芸能プロダクションのご令嬢でもある。
そんな娘に一生残る怪我を負わせたとなってはクビが飛ぶでは済まされない。
何より立場や才能に驕ることなく接してくれる少女の安否を誰もが心配していたのだ。
元気な姿を見られたことに対する安堵や怪我の有無が気になって近寄ろうとする。
「待って! 四葉ちゃん……怪我してるので少し離れてもらえますか?」
しかし、そんな彼らの浅慮を傍にいた少女が止めた。
整いながらも日本人離れした容姿、特に銀色の髪が目を引く少女だ。
つい先日、うちに来た少女がその気弱そうに見える丸い瞳を精一杯尖らせて牽制してくる。
「え? 怪我? だ、大丈夫なんすか? 本番明後日スよ?」
狼狽して下を見れば、四葉の右足には包帯が巻かれていた。
大事に至らなかったのは不幸中の幸いだったが、負傷ということなら響渡祭には出られなくなってしまう。
「だ、大丈夫です。ちょっと捻っただけで……明日にはまた練習出来ます!」
「で、でも四葉ちゃん……それで怪我が悪化でもしたら」
「私のせいでみんなが楽しみにしているお祭りが台無しになるなんてそんなこと出来ませんから」
「そうは言ってもスね……」
強情に譲らないその姿勢に思わず頭を抱える。
確かに軽傷であるなら頑張ってもらったほうが助かるが、そんな判断をスタッフに過ぎない自分たちに決められる訳がない。
そんなことを決められる人がいるとするならそれはここには一人しかいない。
『出るって言ってるんだから出してあげればいいんじゃないかしら?』
「え?あっ、支部長!?」
後ろから聞こえた待ち人の声にみんなが振り向いた。
ざわめくスタッフ達の後ろから出てきたのはこの支部の長であり、少女の母親でもある有栖院凪という女性だ。
母娘で顔立ちも似通っているのだが、母親の方には大きく上回る頼りに出来そうなオーラが漂っている。
「お母さん……」
「四葉――大丈夫なのね?」
「うん、私……頑張るから」
母と娘を真剣な面持ちで見つめ合う。
一瞬の視線の交差を経て、やがて――親は折れるように笑った。
「なら、精一杯頑張んなさい! バックアップはしてあげるわ」
「ありがとう……お母さん」
「四葉は今日はもう休むこと、ナニィちゃんも四葉に付いてあげてやってくれる?」
「わ、分かりました。責任をもって私が傍にいます」
「さぁ、そうと決まればさっさと準備に取り掛かるわよ! 壊れたところを直して補強! 時間ないわよ!!」
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