プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
34話 選定官No.XIX:太陽のアリス
星明りが闇を照らす世界、大地に生える芝生を踏みしめながら俺達は歩いていた。
「あう~、なんか痒いです……虫に刺されたかも」
「虫よけスプレーもってくれば良かったな」
手をポリポリと掻きながら泣きそうになっているナニィに同意する。
夏にはまだまだ早いが、この辺りは自然が多いからなぁ。
たまに飛んでくる虫を払いながら、スプレーを持って来なかったことを後悔するが、旅館に取りに戻るのは面倒臭かったので仕方なく足を動かして前に進む。
「それにしても何でこんなところに呼び出すんだろうな?」
俺たちが外を歩いているのはアリスから送られた手紙に呼び出されたからなのだが、その目的は知らされていない。
何か用事があるなら部屋に直接言いに来ればそれで済むはずなんだがな。
「う~ん、これはもしかしたら四葉ちゃんが……」
「なんだ? 何か知ってるのか?」
「あ、いえ。ふふっ、なんでもないです」
思い当たる節がありそうなナニィを追及するが、手を振って否定する。いささか釈然としなかったがそれ以上は聞かずに足を動かしていく。
「そういえばムクロさん、私気になってることがあるんですけど」
「ん? なんだよ」
「なんであっちにも立派な会場があるのに、外にも歌う場所があるんです?」
ナニィが指差したのは星見ヶ原アリーナがある場所だった。ドーム型の建物に収容されたライブ会場はちょっとしたものだが、遠目に分かるほど真新しい建物で周囲に立つ建造物からは少し浮いている。
「まだ響渡祭が小さかった頃はこっちの野外会場を使ってたらしいな。最近だとサブの会場として使ってるって聞いてるぞ」
「ほへぇ、こんなに広い会場なのにサブなんですねぇ」
ナニィは感心したように頷く。
「さて、会場に来たわけだけどアリスはどこだ?」
「アリスさーん! 来ましたよ、いるんですかー?」
会場に到達したのに未だ姿が見えないアリスを探して声をあげると、会場のライトが突然カッときらめいた。
「ふっ、遅かったわね。待ちくたびれたわ!」
人工的な光が降り注ぐステージの上に立つのは蜂蜜色の髪を緩やかにウェーブさせている女の子、そのふわふわした外見に似つかわしくない意志の強い眼差しでこちらを見ている。
「あれ? 四葉ちゃんはいないんですか?」
「ええ、これからやることに四葉がいるのは都合が悪いもの」
「それでこんなところに呼び出して何の用だ? 話があるなら部屋を訪ねてくれればよかったのに」
「行ったわよ! でも、あんたらがその……ごにょごにょしてたみたいだから、しょうがなく手紙にしたんじゃない!」
アリスは顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「え? なんだって? 聞き取れなかったんだけど」
しかし肝心なところが小声で聞き取れないので聞き返す。
「だから、乳繰りあってたみたいだからその……」
「ひどい誤解だ!」
「ひどい誤解です!」
一転してもじもじしながら絞り出された声に俺達は抗議の声をあげた。
「な、なによ!? 騙されないんだからね? 部屋の前までバッチリ聞こえてたんだからね!」
「あれはただマッサージしてただけだよ!」
「ですです。いかがわしいことなんて何もしてないですよっ!」
「部屋だって別にしてたに、わざわざ一緒の部屋に来てマッサージしてましたって誰が信じるのよ? アウトよ、アーウートーッッ!!」
俺達の抗議をアリスは強制的にシャットダウンする。
「有罪なのは確定的に明らかだけどまあいいわ、言い訳を聞いて貴方達を見逃してあげるなんてことは絶対にないもの」
「なに? それはどういう意味だ」
「ふふっ、貴方達はここで終わりって意味よ」
俺の質問にアリスは不適に笑って両手を空に掲げる。
『燃え盛る太陽よ、汝に仇なす敵を焼き尽くせ』
「詠唱っ!? ムクロさん避けてっ!!」
その手が太陽のように輝いたかと思うと、俺はナニィに押し倒されていた。
『陽炎』
透き通る力強い声が響くと、その手の熱量が光線のように俺が居た場所を通り過ぎて行った。ナニィが押し倒してくれなければ、串刺しになっていた事実に肝が冷える。
「アリスさん……貴方は、候補者だったんですか!?」
「ええ、そうよ。私も貴方と同じ候補者……貴方も女王になるために私を倒しに来たんでしょ? でもそうはさせないわっ! 貴方達を倒して私は私が守りたいものを守る!」
俺達は身体を起こしながらステージ上に立つアリスを見上げた。
「私は選定官No.XIX太陽のアリス・ガーネット。貴方達が、夜明けを見ることはもうないわ覚悟なさい!」
薄い胸をいっぱいに張りながら、アリスは高らかにそう宣言した。
「あう~、なんか痒いです……虫に刺されたかも」
「虫よけスプレーもってくれば良かったな」
手をポリポリと掻きながら泣きそうになっているナニィに同意する。
夏にはまだまだ早いが、この辺りは自然が多いからなぁ。
たまに飛んでくる虫を払いながら、スプレーを持って来なかったことを後悔するが、旅館に取りに戻るのは面倒臭かったので仕方なく足を動かして前に進む。
「それにしても何でこんなところに呼び出すんだろうな?」
俺たちが外を歩いているのはアリスから送られた手紙に呼び出されたからなのだが、その目的は知らされていない。
何か用事があるなら部屋に直接言いに来ればそれで済むはずなんだがな。
「う~ん、これはもしかしたら四葉ちゃんが……」
「なんだ? 何か知ってるのか?」
「あ、いえ。ふふっ、なんでもないです」
思い当たる節がありそうなナニィを追及するが、手を振って否定する。いささか釈然としなかったがそれ以上は聞かずに足を動かしていく。
「そういえばムクロさん、私気になってることがあるんですけど」
「ん? なんだよ」
「なんであっちにも立派な会場があるのに、外にも歌う場所があるんです?」
ナニィが指差したのは星見ヶ原アリーナがある場所だった。ドーム型の建物に収容されたライブ会場はちょっとしたものだが、遠目に分かるほど真新しい建物で周囲に立つ建造物からは少し浮いている。
「まだ響渡祭が小さかった頃はこっちの野外会場を使ってたらしいな。最近だとサブの会場として使ってるって聞いてるぞ」
「ほへぇ、こんなに広い会場なのにサブなんですねぇ」
ナニィは感心したように頷く。
「さて、会場に来たわけだけどアリスはどこだ?」
「アリスさーん! 来ましたよ、いるんですかー?」
会場に到達したのに未だ姿が見えないアリスを探して声をあげると、会場のライトが突然カッときらめいた。
「ふっ、遅かったわね。待ちくたびれたわ!」
人工的な光が降り注ぐステージの上に立つのは蜂蜜色の髪を緩やかにウェーブさせている女の子、そのふわふわした外見に似つかわしくない意志の強い眼差しでこちらを見ている。
「あれ? 四葉ちゃんはいないんですか?」
「ええ、これからやることに四葉がいるのは都合が悪いもの」
「それでこんなところに呼び出して何の用だ? 話があるなら部屋を訪ねてくれればよかったのに」
「行ったわよ! でも、あんたらがその……ごにょごにょしてたみたいだから、しょうがなく手紙にしたんじゃない!」
アリスは顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「え? なんだって? 聞き取れなかったんだけど」
しかし肝心なところが小声で聞き取れないので聞き返す。
「だから、乳繰りあってたみたいだからその……」
「ひどい誤解だ!」
「ひどい誤解です!」
一転してもじもじしながら絞り出された声に俺達は抗議の声をあげた。
「な、なによ!? 騙されないんだからね? 部屋の前までバッチリ聞こえてたんだからね!」
「あれはただマッサージしてただけだよ!」
「ですです。いかがわしいことなんて何もしてないですよっ!」
「部屋だって別にしてたに、わざわざ一緒の部屋に来てマッサージしてましたって誰が信じるのよ? アウトよ、アーウートーッッ!!」
俺達の抗議をアリスは強制的にシャットダウンする。
「有罪なのは確定的に明らかだけどまあいいわ、言い訳を聞いて貴方達を見逃してあげるなんてことは絶対にないもの」
「なに? それはどういう意味だ」
「ふふっ、貴方達はここで終わりって意味よ」
俺の質問にアリスは不適に笑って両手を空に掲げる。
『燃え盛る太陽よ、汝に仇なす敵を焼き尽くせ』
「詠唱っ!? ムクロさん避けてっ!!」
その手が太陽のように輝いたかと思うと、俺はナニィに押し倒されていた。
『陽炎』
透き通る力強い声が響くと、その手の熱量が光線のように俺が居た場所を通り過ぎて行った。ナニィが押し倒してくれなければ、串刺しになっていた事実に肝が冷える。
「アリスさん……貴方は、候補者だったんですか!?」
「ええ、そうよ。私も貴方と同じ候補者……貴方も女王になるために私を倒しに来たんでしょ? でもそうはさせないわっ! 貴方達を倒して私は私が守りたいものを守る!」
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