プリンセスセレクションー異世界からやってきたお姫様は王様を目指す
17話 自己再生
ぴちゃり、ぴちゃり……。
どこからか水が、落ちる音が聞こえてくる。
「痛っ!」
鈍痛により、目が醒める。じめじめした一室に両手両足を縛られた状態で椅子に座らされていた。未だ回りきらない脳みそを回転させて自分の現状を省みる、確か病室に診察を受けに来て処方された薬を飲んだら、そのまま意識が遠くなって気がつけばここにいた。
流石に下剤を飲んで気を失うなんて話は聞いたことがない。下剤と称して飲まされたあの薬は下剤などではなく、おそらく睡眠薬のようなものだったのだろうと推測できる。
「どういうことだ……」
俺は一人愚痴ると、拘束を抜け出せないか確かめてみる。
しかし、力を入れても鎖がこすれてがちゃがちゃ音が鳴るだけでとても自力で抜け出せそうにない。肝心なのは、何故こんな真似をするのかということだが……それは目の前にいる人間に尋ねるのが良さそうだ。
「これは何のつもりだ? こんなことしてタダで済むと思ってるのか? あぁ?」
凄んで睨みを聞かせた先には両腕を組みながらニヤニヤ笑みを浮かべている。
不健康な目のクマを作りながらも、その瞳の中には怪しく輝いている。
「あらやっと気がついたと思ったら随分と威勢のいいことね」
星見ヶ原病院の女医である斬原妖子がそこに居た。
「下剤ってのは嘘か、やぶ医者め」
「あら? 嘘とは人聞きが悪いわね。私は薬を服用させるときに自分が調合した薬だとは言ったけれど、それが下剤だとは一言も口にしなかったわよ? 出された薬を下剤だと勘違いしたままあなたが飲んだだけじゃないかしら?」
斬原の言葉に診察室での会話を回想する。
『さぁ、何も恐れることはないわ。これを飲めば一発で昇天できる魔法の薬よ』
『大丈夫、死にはしないわ。死なないだけとも、言うのかしらね?』
うん、確かに言ってないな下剤とは一言も……。
「詭弁じゃねえか。嘘ついてないからとかいうレベルじゃねえぞ」
昨日の時点で飲み込んだ異物を排出するために下剤が必要って言ってたんだから薬を出されたら、普通に下剤だと思うし、医者の出す薬に不信感なんて持っているならそもそも病院になんて来ない。処方した薬が睡眠薬とか詐欺だよ詐欺。
「それで? 何が目的だ、監禁とか犯罪だぞ犯罪」
「罪を犯すとは法を犯すことね、俺に逆らう奴は全員悪党なんて安っぽい正義だと思わない?」
息が詰まって嫌だわと、長い髪をバサリと払うと、懐から一枚の紙を取り出した。
その紙には黒いインクが乱雑に書き連ねていた。
「あんた……字、汚いな」
ネズミが走り回った足跡のように点在するインクはとてもじゃないが読めた物じゃない。
距離があって字が読めない訳じゃない、俺は片眼鏡を掛けていない左目を細めて睨視するが判読することは出来そうになかった。
「私の字に関しては放っておきなさい。メモなんてものは自分が分かればいいのよ、自分さえ分かればね」
コホンと気恥ずかしそうに誤魔化す斬原は気を取り直して紙をぺしぺし叩く。
「これは貴方の診察結果をまとめた物よ」
「……いや、それが?」
そんなものを得意気に出されても、それがどういう理由でこの状況に繋がっているのか理解できない。
「ふぅん、その様子だと貴方は自分の身体がどんなことになってるのか把握してないのね」
「俺は健康体そのものだぞ? 昔から風邪を引いたことなんて一度もないしな」
昔、インフルエンザが学校で流行った時も素知らぬ顔で授業に出ていた。おかげでクラスメイトには学級閉鎖の際には戦力外扱いされていた。お前ら、休みたいからって人の不幸を願うんじゃねえよ。
「自分のことは自分ではよくわからないものって言うけど、あれ本当ねぇ。これは実際に見てみないと分からないかしら?」
斬原は傍にある机に立てかけていた筒のようなものを取り出すと、中にあるものを抜き出した。スラリと伸びた直刃、それは小説やドラマ、果てはアニメなどではよく見る物の、実生活にはほぼ見掛けることのない物……有り体に言えば刀だった。
妖しく煌めく白刃に恐怖を抱き、次いで逃げようとするが鎖でガッチリ固定された縛りからはとても抜け出せそうにない。そんなことをしている内に、俺の目前まで来ていた斬原はその刀を勢いよく俺の太腿に突き立てた。
「ぐ、あァアアアアア!?」
瞬間、熱を伴った痛みが足を通じて全身を震わせる。
夜の校舎で赤の少女に与えられた物とは違う痛みに耐えられず、俺の口から絶叫が迸った。
「さーて、こんなものかしらね」
グリグリとこねくり回していた刀を引き抜くと、ブシュッと血が噴き出した。
返り血が斬原の羽織る白衣に付着するが、それを気にすることもせずに刃の血糊を拭っていた。
「て、んめぇえええ!!」
「怒らない怒らない、それよりほら、面白いことが起こるわよ」
怒りを込めて、罵声を放つが斬原はなんでもないかのようにさらっと受け流して、刺し傷を指差した。目に涙を浮かべながら、刺された場所を見下ろす。
「なっ!?」
傷を見るとそこには信じられない光景が広がっていた。
刺された部分が青く発光していた。流れた血は既に止まり、青の光が傷跡に集まり即座に復元してしまう。
「なんだこれ? なにがどうなってるんだ? これもお前が何かしたのか?」
その現実離れした光景に唖然とし、斬原を問い詰める。
「ふふっ、あははは! アハハハハハッ♪」
しかし斬原は俺の問いかけに答えるようなこともせずにその光景を見て、狂気を秘めた笑い声を上げるのだった。
どこからか水が、落ちる音が聞こえてくる。
「痛っ!」
鈍痛により、目が醒める。じめじめした一室に両手両足を縛られた状態で椅子に座らされていた。未だ回りきらない脳みそを回転させて自分の現状を省みる、確か病室に診察を受けに来て処方された薬を飲んだら、そのまま意識が遠くなって気がつけばここにいた。
流石に下剤を飲んで気を失うなんて話は聞いたことがない。下剤と称して飲まされたあの薬は下剤などではなく、おそらく睡眠薬のようなものだったのだろうと推測できる。
「どういうことだ……」
俺は一人愚痴ると、拘束を抜け出せないか確かめてみる。
しかし、力を入れても鎖がこすれてがちゃがちゃ音が鳴るだけでとても自力で抜け出せそうにない。肝心なのは、何故こんな真似をするのかということだが……それは目の前にいる人間に尋ねるのが良さそうだ。
「これは何のつもりだ? こんなことしてタダで済むと思ってるのか? あぁ?」
凄んで睨みを聞かせた先には両腕を組みながらニヤニヤ笑みを浮かべている。
不健康な目のクマを作りながらも、その瞳の中には怪しく輝いている。
「あらやっと気がついたと思ったら随分と威勢のいいことね」
星見ヶ原病院の女医である斬原妖子がそこに居た。
「下剤ってのは嘘か、やぶ医者め」
「あら? 嘘とは人聞きが悪いわね。私は薬を服用させるときに自分が調合した薬だとは言ったけれど、それが下剤だとは一言も口にしなかったわよ? 出された薬を下剤だと勘違いしたままあなたが飲んだだけじゃないかしら?」
斬原の言葉に診察室での会話を回想する。
『さぁ、何も恐れることはないわ。これを飲めば一発で昇天できる魔法の薬よ』
『大丈夫、死にはしないわ。死なないだけとも、言うのかしらね?』
うん、確かに言ってないな下剤とは一言も……。
「詭弁じゃねえか。嘘ついてないからとかいうレベルじゃねえぞ」
昨日の時点で飲み込んだ異物を排出するために下剤が必要って言ってたんだから薬を出されたら、普通に下剤だと思うし、医者の出す薬に不信感なんて持っているならそもそも病院になんて来ない。処方した薬が睡眠薬とか詐欺だよ詐欺。
「それで? 何が目的だ、監禁とか犯罪だぞ犯罪」
「罪を犯すとは法を犯すことね、俺に逆らう奴は全員悪党なんて安っぽい正義だと思わない?」
息が詰まって嫌だわと、長い髪をバサリと払うと、懐から一枚の紙を取り出した。
その紙には黒いインクが乱雑に書き連ねていた。
「あんた……字、汚いな」
ネズミが走り回った足跡のように点在するインクはとてもじゃないが読めた物じゃない。
距離があって字が読めない訳じゃない、俺は片眼鏡を掛けていない左目を細めて睨視するが判読することは出来そうになかった。
「私の字に関しては放っておきなさい。メモなんてものは自分が分かればいいのよ、自分さえ分かればね」
コホンと気恥ずかしそうに誤魔化す斬原は気を取り直して紙をぺしぺし叩く。
「これは貴方の診察結果をまとめた物よ」
「……いや、それが?」
そんなものを得意気に出されても、それがどういう理由でこの状況に繋がっているのか理解できない。
「ふぅん、その様子だと貴方は自分の身体がどんなことになってるのか把握してないのね」
「俺は健康体そのものだぞ? 昔から風邪を引いたことなんて一度もないしな」
昔、インフルエンザが学校で流行った時も素知らぬ顔で授業に出ていた。おかげでクラスメイトには学級閉鎖の際には戦力外扱いされていた。お前ら、休みたいからって人の不幸を願うんじゃねえよ。
「自分のことは自分ではよくわからないものって言うけど、あれ本当ねぇ。これは実際に見てみないと分からないかしら?」
斬原は傍にある机に立てかけていた筒のようなものを取り出すと、中にあるものを抜き出した。スラリと伸びた直刃、それは小説やドラマ、果てはアニメなどではよく見る物の、実生活にはほぼ見掛けることのない物……有り体に言えば刀だった。
妖しく煌めく白刃に恐怖を抱き、次いで逃げようとするが鎖でガッチリ固定された縛りからはとても抜け出せそうにない。そんなことをしている内に、俺の目前まで来ていた斬原はその刀を勢いよく俺の太腿に突き立てた。
「ぐ、あァアアアアア!?」
瞬間、熱を伴った痛みが足を通じて全身を震わせる。
夜の校舎で赤の少女に与えられた物とは違う痛みに耐えられず、俺の口から絶叫が迸った。
「さーて、こんなものかしらね」
グリグリとこねくり回していた刀を引き抜くと、ブシュッと血が噴き出した。
返り血が斬原の羽織る白衣に付着するが、それを気にすることもせずに刃の血糊を拭っていた。
「て、んめぇえええ!!」
「怒らない怒らない、それよりほら、面白いことが起こるわよ」
怒りを込めて、罵声を放つが斬原はなんでもないかのようにさらっと受け流して、刺し傷を指差した。目に涙を浮かべながら、刺された場所を見下ろす。
「なっ!?」
傷を見るとそこには信じられない光景が広がっていた。
刺された部分が青く発光していた。流れた血は既に止まり、青の光が傷跡に集まり即座に復元してしまう。
「なんだこれ? なにがどうなってるんだ? これもお前が何かしたのか?」
その現実離れした光景に唖然とし、斬原を問い詰める。
「ふふっ、あははは! アハハハハハッ♪」
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