その日、僕は初めて自分を知りました。

椎名蒼

赤紙編⑪

中谷は僕の言葉に絶句した。僕も話している最中、自分の頭がおかしくなりそうだった。今自分たちの身の回りで起こっていることが現実なのか悪夢なのかその区別さえまともにつけられないくらいでいた。昨日、木村のもとへ見舞いに行った時のことを中谷に全て話した。木村が再び赤紙を手に取ってからこの状況に至るまでの時間はそんなに長くはなかった。行方不明になっている永田将暉の遺体が木村の自宅の庭から発見されたみたいだ。警察は木村を重要参考人として事情聴取を受けるはずだったのだが、彼自身の精神状態がおかしくなってしまっているため、それもままならない状態であった。


木村が赤紙を再度手に取ったあの時、彼は全身が痙攣しているかのように震え、悲しみと諦めが自分を蝕んでいたように僕には見えた。そう、ただ僕にはそういう風に見えただけ。見えただけなのだ。そこで僕がいじめを抑止することも大内を止めるわけでも、木村を救うこともできないまま......僕はただそれを見ていただけだった。病院に行った時、彼が僕を見る目は泣いていた。そして怒っていた。怒りをさらけ出し、僕を睨んだその目は僕に訴えかけていた。


なぜ.....僕を助けてくれなかったんだ。
お前は裏切り者だ。それなのによくものこのこと......




「そうだよ。僕は君を助けることができなかった。僕はただの傍観者と化していた。君のことを何1つ救うことができなかった。本当にごめん......僕は大内を止める勇気がなかった。こんなこと、やめさせなきゃって何度も思った......だけど、体が震えて何にもできないんだよ。木村、本当にごめん」




「そんなことで俺を助けてくれることができるのかよ」


「え?」




目の前にいる中谷が僕にそう問った。


「木村君を殺したのはお前だ。お前が殺したのも同然だ。お前はいざとなったら僕のことも見捨てるんだろ?」


「そうだよ。俺を見捨てたお前が、中谷を救えるわけないだろ?お前に何ができる?お前はそうやってこれからも何人も殺していくんだよ!そしてお前も大内に殺されるんだよ」




やめろ。
それ以上言うな。
































「赤宮?」




「えっ。」










中谷と隣にいた春間先生が僕を覗き込んでいた。

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