碧き舞い花Ⅱ
304:共闘
バーゼィが急に消え、ヌロゥのわきに現れた。
「回復してるみたいだが、無駄さ。だって、俺が強すぎるんだからな!」
低く言って、陽炎を纏った蹴りをヌロゥに放つバーゼィ。それをセラが、ヌロゥの身体を回り込むようにしながら、勢いをつけてフォルセスで受け止めた。受け止めた瞬間弾かれそうになったが、ヌロゥが空気で後押ししてくれた。偽りのない共闘だった。
「っん!?」
ヌロゥの白と黒に助けられながら、セラがフォルセスを押し込んでいくと、バーゼィが驚きの顔を見せた。セラの周囲に碧き花びらたちが現れはじめる。ヌロゥが二人から離れ、そしてセラが口角を上げた次の瞬間。彼女はバーゼィを通り越し、遅れて無彩色の風に乗って花が倣った。
碧花百閃。
無数の刃がバーゼィを斬りつける。それで終わりではない。バーゼィにとって二度目の碧花百閃と思われたそれは、兄ビズラスを超えた心持ちを得たセラの新たな技となっていた。無意識だった影の秘伝を意識的に扱い、それでいて今は亡きナパスの英雄たちの力を借りたものだった。
一度通り過ぎた花びらたちは、バーゼィの方へ戻っていく。その最中、花びらはそれぞれ色を変える。
黄、赤紫、紅。
再びバーゼィを斬りつける、その数多の花びらたち。
碧花百閃・追想。
「くそがぁあ!」
彼女の攻撃はしっかりとバーゼィの身体を傷つけ、そして回復をさせなかった。カサブタすら残していない。赤く染まったバーゼィがセラを振り向いた。
「また治らねえのかっ! 三権も役に立たねえ……いや、まだ使いこなせてねえだけ……そうだ。そうだろ! まだはじまったばかりなんだからな。神を喰った時だってそうだ。最初はうまく使えないもんさ。そうさ! つまりだ。強すぎる俺は、まだ弱い状態ってことだ!」
目を見開き、大口を開けて笑うバーゼィ。ふと表情を消すと迷宮の壁を一瞥して、考え込む姿を見せる。それからその場で腕を身体の外から内へ振った。
「こうか……?」
迷宮が揺れはじめた。それからすぐにセラのわきの壁が、白黒波打つ拳となって彼女に向かって突き出てきた。
「っ!?」
対応しようとしたときには、彼女は大きな衝撃を受けていた。かなり早かった。気配のない壁だからこそ、目視での反応が精一杯だった。二度目の衝撃はすぐに来た。反対の壁との間に挟まれたのだ。
「うっ」
息が詰まる。身体が軋む。身動きができない。抗おうとしても、拳はびくともしない。なんとかして抜け出そうとセラが全身から魔素を放とうとした時だった。拳が彼女から離れた。解放されたのも束の間、再び拳がセラに飛んできた。
「っふ!」
二度目はないと、セラはフォルセスを振り上げた。斬切の想いが飛び、壁の拳は真っ二つに割れた。間隙からヌロゥがバーゼィの蹴りを躱すところが見えた。そこまでの距離を、空間を、セラは一気に圧縮した。次の瞬間には彼女は二人のすぐそばにいて、振り上げたままだったフォルセスを翻し、振り下ろした。
セラの動きに合わせ、ヌロゥがバーゼィの心臓に向かって、白と黒が捩じれ込んだ鋭い空気の槍を放った。
フォルセスと空気の槍。
脚と心臓。
空気の槍がすり抜ける。
バーゼィが護ったのは心臓だった。
蹴りに迎え撃つ形で振るわれたフォルセスは、壁の拳を斬り裂いた勢いのまま、バーゼィの脚を斬り落とした。セラの思惟放斬や金剛裁断もさることながら、バーゼィ自身の蹴りの勢いも相まった結果だ。
だがその結果はすぐに覆った。
「……こう、かっ?」
バーゼィの声と共に、新たな脚が、切断面から生えてきた。そしてその脚でセラは蹴飛ばされ、その反動を利用した膝蹴りでヌロゥが蹴散らされた。
「回復してるみたいだが、無駄さ。だって、俺が強すぎるんだからな!」
低く言って、陽炎を纏った蹴りをヌロゥに放つバーゼィ。それをセラが、ヌロゥの身体を回り込むようにしながら、勢いをつけてフォルセスで受け止めた。受け止めた瞬間弾かれそうになったが、ヌロゥが空気で後押ししてくれた。偽りのない共闘だった。
「っん!?」
ヌロゥの白と黒に助けられながら、セラがフォルセスを押し込んでいくと、バーゼィが驚きの顔を見せた。セラの周囲に碧き花びらたちが現れはじめる。ヌロゥが二人から離れ、そしてセラが口角を上げた次の瞬間。彼女はバーゼィを通り越し、遅れて無彩色の風に乗って花が倣った。
碧花百閃。
無数の刃がバーゼィを斬りつける。それで終わりではない。バーゼィにとって二度目の碧花百閃と思われたそれは、兄ビズラスを超えた心持ちを得たセラの新たな技となっていた。無意識だった影の秘伝を意識的に扱い、それでいて今は亡きナパスの英雄たちの力を借りたものだった。
一度通り過ぎた花びらたちは、バーゼィの方へ戻っていく。その最中、花びらはそれぞれ色を変える。
黄、赤紫、紅。
再びバーゼィを斬りつける、その数多の花びらたち。
碧花百閃・追想。
「くそがぁあ!」
彼女の攻撃はしっかりとバーゼィの身体を傷つけ、そして回復をさせなかった。カサブタすら残していない。赤く染まったバーゼィがセラを振り向いた。
「また治らねえのかっ! 三権も役に立たねえ……いや、まだ使いこなせてねえだけ……そうだ。そうだろ! まだはじまったばかりなんだからな。神を喰った時だってそうだ。最初はうまく使えないもんさ。そうさ! つまりだ。強すぎる俺は、まだ弱い状態ってことだ!」
目を見開き、大口を開けて笑うバーゼィ。ふと表情を消すと迷宮の壁を一瞥して、考え込む姿を見せる。それからその場で腕を身体の外から内へ振った。
「こうか……?」
迷宮が揺れはじめた。それからすぐにセラのわきの壁が、白黒波打つ拳となって彼女に向かって突き出てきた。
「っ!?」
対応しようとしたときには、彼女は大きな衝撃を受けていた。かなり早かった。気配のない壁だからこそ、目視での反応が精一杯だった。二度目の衝撃はすぐに来た。反対の壁との間に挟まれたのだ。
「うっ」
息が詰まる。身体が軋む。身動きができない。抗おうとしても、拳はびくともしない。なんとかして抜け出そうとセラが全身から魔素を放とうとした時だった。拳が彼女から離れた。解放されたのも束の間、再び拳がセラに飛んできた。
「っふ!」
二度目はないと、セラはフォルセスを振り上げた。斬切の想いが飛び、壁の拳は真っ二つに割れた。間隙からヌロゥがバーゼィの蹴りを躱すところが見えた。そこまでの距離を、空間を、セラは一気に圧縮した。次の瞬間には彼女は二人のすぐそばにいて、振り上げたままだったフォルセスを翻し、振り下ろした。
セラの動きに合わせ、ヌロゥがバーゼィの心臓に向かって、白と黒が捩じれ込んだ鋭い空気の槍を放った。
フォルセスと空気の槍。
脚と心臓。
空気の槍がすり抜ける。
バーゼィが護ったのは心臓だった。
蹴りに迎え撃つ形で振るわれたフォルセスは、壁の拳を斬り裂いた勢いのまま、バーゼィの脚を斬り落とした。セラの思惟放斬や金剛裁断もさることながら、バーゼィ自身の蹴りの勢いも相まった結果だ。
だがその結果はすぐに覆った。
「……こう、かっ?」
バーゼィの声と共に、新たな脚が、切断面から生えてきた。そしてその脚でセラは蹴飛ばされ、その反動を利用した膝蹴りでヌロゥが蹴散らされた。
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