碧き舞い花Ⅱ
274:Before Zero Point 9
「うぁああああっ!」
ヴェィルはスジェヲを殺して満悦な表情を浮かべるヨコズナの背後に立った。屈強なヨコズナの肌が総毛立つのが、黒を宿した青が目にした。次の瞬間には、黒き刃、形を持たない刃が巨躯を貫いた。
「ぐばぁっ!?」
殺したことなど確認しなかった。ヴェィルはぐりんと首を回してテチィエを睨むと、殺意をぶつけた。それが彼女を一瞬怯ませて、ヴェィルがその場で黒の刃を振るうと、その一瞬の表情を切り取った頭が、彼女の足元に落ちた。
「殲滅だ。ついて来い、二人とも」
二人の返事を待たず、ヴェィルは光の広場に向けて歩み出した。
すると周囲から彼を狙った攻撃が飛んできた。熱気の弾、音の塊、紙吹雪、鉄杭……。辺りにいた神々が一斉に仕掛けてきたようだ。
ヴェィルはそれらを黒き刃で捌いていく。ただ目で見えているものは容易かったが、目に見えない空気や音、それからほかにも、いくつかヴェィルの知らないものは捌くことも躱すこともできなかった。身体に傷がつき、血が噴き出す。だが、それは最初だけだった。
二度目には、完全に見切っていた。そして三度目には、覚えて同じものを撃ち返していた。
神たちはヴェィルが自分たちが使う技をすぐに覚えることに驚き、体勢を整えようとしているのか、距離を取っていく。
辺りが静かになると、ロゥリカとコゥメルが駆け寄ってきた。そしてロゥリカが後ろから喋りかけてくる。
「やっぱりお前はすごいな、ヴェィル。俺はどうやってもあいつらの出す力を真似できない。なあ、コゥメル」
「ああ……おい、あれ!」
ヴェィルの肩を掴んで進行を止めるコゥメルに、彼が指さす方へ目を向けるヴェィル。そこには雷を纏った触角を持つ男に迫られるノージェとモェラの姿があった。
ノージェがモェラを護るように前に立ち、男を睨んでいる。
「雷針の神になったのは」コゥメルが言う。「確かケレィンだ」
「誰だっていい」
吐き捨てたヴェィルは、三人のもとに跳び、ケレィンに触角を掴んでその頭を地面に叩きつけた。触角を握った手が痺れたが、それも束の間、彼の手は雷を宿し、ケレィンの頭を鷲掴みにすると放電した。
「ばぁららららぁぁらあがぁああぁぁぁあぁぁ」
そのケレィンの悲鳴が消えるまで放電し続けてた。
焦げた頭を見下ろし安堵の表情を見せるモェラとノージェに、ヴェィルは告げる。
「どこか安全な外の世界に逃げていろ。終わるまで、絶対に戻るな。行くぞ、ロゥリカ、コゥメル」
踵を返し、再び三権の元へ急ぐ。
とその時だった。
後方から二つの悲鳴が聞こえた。
「ノージェ! モェラ!」
ヴェィルより先に振り返っていたコゥメルが叫んだ。激しい放電の中に二人はいた。そして放電が終わると、二人は光の粒となって天に消えた。
二人の後ろに立つ者の姿にロゥリカが目を瞠る。
「そんな、馬鹿な」
ケレィンが立っていた。
「神は信仰がある限り何度だって復活する」
「らしいぜ」
その声はテチィエとヨコズナだった。それぞれがロゥリカとコゥメルの背後に現れて、つららと拳を赤く染めていた。
「……すまない」
「頼むぞ……」
その言葉を最後に、友が消えた。
ヴェィルの周囲に薄っすらと黒が渦巻きはじめた。
「簡単だ……復活させない力を造ればいい」
ヴェィルの頭は恐ろしいほど冷静だった。冷たい血が流れている気がするほどに。
手始めに、目の前にいる三人の敵を即座に斬り伏せた。
一人呟く。「違う」
ヨコズナたちが立ち上がった。
「こうか……?」
首を傾げながら、ヴェィルはケレィンの背後に移動して、胸を貫いた。刃を抜くと、ケレィンはまた伏した。彼の様子を観察するように見下ろすヴェィルにヨコズナが殴りかかってきた。
「何度も簡単にやれると思うなっ!」
迫る拳を、ヴェィルは雷を纏った腕で受け止める。そしてヨコズナの真上に鋼鉄の槍を造り出した。そして、それが赤くなるほど、熱気で熱した。これで後ろに控えるテチィエに溶かされたとしても、ヨコズナには大きな深手を負わせられる。
雷で痺れたヨコズナの動きが鈍る。その脊柱に赤々とした鉄杭を突き刺した。
足元でケレィンが身じろいだ。
こうでもないかと、目を細めるヴェィル。どうすれば殺せるのか。次の手を考えているとケィレンが触角に雷を宿し、腕に力を込めて立ち上がるのを見た。次の瞬間、ヴェィルは激しい電撃に見舞われた。
「ぐっぅ……!」
ヴェィルはスジェヲを殺して満悦な表情を浮かべるヨコズナの背後に立った。屈強なヨコズナの肌が総毛立つのが、黒を宿した青が目にした。次の瞬間には、黒き刃、形を持たない刃が巨躯を貫いた。
「ぐばぁっ!?」
殺したことなど確認しなかった。ヴェィルはぐりんと首を回してテチィエを睨むと、殺意をぶつけた。それが彼女を一瞬怯ませて、ヴェィルがその場で黒の刃を振るうと、その一瞬の表情を切り取った頭が、彼女の足元に落ちた。
「殲滅だ。ついて来い、二人とも」
二人の返事を待たず、ヴェィルは光の広場に向けて歩み出した。
すると周囲から彼を狙った攻撃が飛んできた。熱気の弾、音の塊、紙吹雪、鉄杭……。辺りにいた神々が一斉に仕掛けてきたようだ。
ヴェィルはそれらを黒き刃で捌いていく。ただ目で見えているものは容易かったが、目に見えない空気や音、それからほかにも、いくつかヴェィルの知らないものは捌くことも躱すこともできなかった。身体に傷がつき、血が噴き出す。だが、それは最初だけだった。
二度目には、完全に見切っていた。そして三度目には、覚えて同じものを撃ち返していた。
神たちはヴェィルが自分たちが使う技をすぐに覚えることに驚き、体勢を整えようとしているのか、距離を取っていく。
辺りが静かになると、ロゥリカとコゥメルが駆け寄ってきた。そしてロゥリカが後ろから喋りかけてくる。
「やっぱりお前はすごいな、ヴェィル。俺はどうやってもあいつらの出す力を真似できない。なあ、コゥメル」
「ああ……おい、あれ!」
ヴェィルの肩を掴んで進行を止めるコゥメルに、彼が指さす方へ目を向けるヴェィル。そこには雷を纏った触角を持つ男に迫られるノージェとモェラの姿があった。
ノージェがモェラを護るように前に立ち、男を睨んでいる。
「雷針の神になったのは」コゥメルが言う。「確かケレィンだ」
「誰だっていい」
吐き捨てたヴェィルは、三人のもとに跳び、ケレィンに触角を掴んでその頭を地面に叩きつけた。触角を握った手が痺れたが、それも束の間、彼の手は雷を宿し、ケレィンの頭を鷲掴みにすると放電した。
「ばぁららららぁぁらあがぁああぁぁぁあぁぁ」
そのケレィンの悲鳴が消えるまで放電し続けてた。
焦げた頭を見下ろし安堵の表情を見せるモェラとノージェに、ヴェィルは告げる。
「どこか安全な外の世界に逃げていろ。終わるまで、絶対に戻るな。行くぞ、ロゥリカ、コゥメル」
踵を返し、再び三権の元へ急ぐ。
とその時だった。
後方から二つの悲鳴が聞こえた。
「ノージェ! モェラ!」
ヴェィルより先に振り返っていたコゥメルが叫んだ。激しい放電の中に二人はいた。そして放電が終わると、二人は光の粒となって天に消えた。
二人の後ろに立つ者の姿にロゥリカが目を瞠る。
「そんな、馬鹿な」
ケレィンが立っていた。
「神は信仰がある限り何度だって復活する」
「らしいぜ」
その声はテチィエとヨコズナだった。それぞれがロゥリカとコゥメルの背後に現れて、つららと拳を赤く染めていた。
「……すまない」
「頼むぞ……」
その言葉を最後に、友が消えた。
ヴェィルの周囲に薄っすらと黒が渦巻きはじめた。
「簡単だ……復活させない力を造ればいい」
ヴェィルの頭は恐ろしいほど冷静だった。冷たい血が流れている気がするほどに。
手始めに、目の前にいる三人の敵を即座に斬り伏せた。
一人呟く。「違う」
ヨコズナたちが立ち上がった。
「こうか……?」
首を傾げながら、ヴェィルはケレィンの背後に移動して、胸を貫いた。刃を抜くと、ケレィンはまた伏した。彼の様子を観察するように見下ろすヴェィルにヨコズナが殴りかかってきた。
「何度も簡単にやれると思うなっ!」
迫る拳を、ヴェィルは雷を纏った腕で受け止める。そしてヨコズナの真上に鋼鉄の槍を造り出した。そして、それが赤くなるほど、熱気で熱した。これで後ろに控えるテチィエに溶かされたとしても、ヨコズナには大きな深手を負わせられる。
雷で痺れたヨコズナの動きが鈍る。その脊柱に赤々とした鉄杭を突き刺した。
足元でケレィンが身じろいだ。
こうでもないかと、目を細めるヴェィル。どうすれば殺せるのか。次の手を考えているとケィレンが触角に雷を宿し、腕に力を込めて立ち上がるのを見た。次の瞬間、ヴェィルは激しい電撃に見舞われた。
「ぐっぅ……!」
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