碧き舞い花Ⅱ
267:Before Zero Point 2
人々の去った光の広場で、ヴェィルはザァトの話を聞いた。彼は期待一杯に話を締め括る。
「ああ、今度はどんな世界が待ってるかな!」
ザァトは腰かけから立ち上がり、空を見上げる。ヴェィルはその姿に微笑み、茶化すように言う。
「昨日戻ったばっかだろ」
「ヴェィルも一度でも外に出たらわかるって。楽しいぞ、ここでは見れないものもたくさん見れるし」
「俺はお前から話を聞くだけで十分楽しいよ」
「うそだぁ」ザァトがヴェィルを見る。「聞いてるだけで楽しいわけないだろ……あ、コゥメルとロゥリカだ」
言葉の途中でザァトの視線がヴェィルの後方に逸れた。ヴェィルも立ち上がりそちらを向く。緑目の男と、赤目の男が連れ立って二人の方へ歩いてきていた。二人とも光を見事に反射する金髪をなびかせながら。
「ザァト」
二人の元へたどり着くと、コゥメルがザァトに言う。
「悪いが、ヴェィルと話があるんだ。外してくれるか」
「え、なんで。俺だけ仲間外れかよ」
「だから悪いと言っている」
「悪いと思うならいいじゃん、俺いても」
「難しい話だぞ」ロゥリカが静かに言う。「お前はつまらないと言って逃げ出すさ」
「……難しい話? っは、じゃあしょうがねえな」
ザァトは肩を竦めて去っていく。
「またな。ヴェィル。難しい話に飽きたら、俺が楽しい話してやるからさ」
「ああ、また頼むよ」
「三権を真似して世界を造ろうとしているらしい」
コゥメルが鋭い目でヴェィルを見つめながら告げた。自ずとヴェィルも険しく目を細める。
「世界を造る? 想造の力でそこまでできるのか?」
「わからん。ただ、だからこそ、その方法を探ってるんだ、あいつらは」
「トゥオツがヒュポルヒとホーチュナから直接聞いてるから、信憑性は高い」
コゥメルに付け足すようにロゥリカが言った。
「あの二人か、確かに冗談では言わないか。まあでも、それが三権へ侮辱ってわけでもないだろ。そもそも想造の力に不自由はないわけだし、むしろ三権の恩恵を大いに使おうって考え方だとしたら、それはより強い尊敬の想いだ。もうしばらく様子を見よう」
「まあ、お前が言うならそうするが」コゥメルが渋々と言った感じで頷く。「あまり寛容すぎるのもよくないぞ」
「そうだ」ロゥリカが続く。「総代としてこの地の幸福、俺たちの幸福を一番に願うなら、しっかり治めるべきだ。そのために、時には畏怖を見せつける必要があるだろう」
「畏怖? 脅してみんなをまとめろって? 冗談でもそんなことしないぞ、俺は。みんなのびのびしながら、互いを想い合う。それで充分まとまれる。今がそうだろ」
「今がそうってな、ヴェィル」コゥメルが息を大きく吐き、肩を落とす。「その今が、今だ。あまりに奔放にやりたい放題させてるから、三権への想いが薄まるやつが出てきてるんじゃないのか? それでもし、三権が俺らを見放したらどうするんだ」
「想いが弱まった結果、三権が俺らに恩恵を与えてくれなくなるとは限らないだろ。まあもし、そんなことになっても、俺が三権を掴んで離さない。みんなのためにさ」
「悠長な。それこそ保証のないことだ」
口調に熱が入るコゥメル。それをロゥリカが宥める。
「まあ待てコゥメル。ヴェィルはともかく、フェルには誰よりも優れた予見がある。大きな問題があれば、そうならないよう未来を告げてくれるだろう」
「おい、ロゥリカ」ヴェィルはじっと青い目でロゥリカを見つめる。「俺はともかくだって?」
「あはは、言葉の綾だ。お前の力を見くびってる奴なんて誰もいないから安心しろ、総代様」
からかうような口調でヴェィルの肩を叩くロゥリカ。それにコゥメルも続く。
「ま、確かにな。俺たちも結局お前のところに来たわけだしな。熱くなって悪かったな、総代様」
とんとんとヴェィルの肩を叩くコゥメル。
「お前たち、馬鹿にしてるだろ絶対」
ヴェィルの言葉に、三人は視線を交え合い、間を置いたのち一斉に笑い出した。
「じゃ、とりあえず様子見ってことで」
笑いを含んだままロゥリカが言って、ヴェィルから手を離す。
次いでコゥメル。「もしもの時は、本当に頼んだぞ。様子見とかじゃなく、ちゃんとした結論を」
「ああ、頼まれた」
ヴェィルが頷くのを見ると、二人は去っていった。議論を交わし合う後ろ姿を見送りながら、ヴェィルは呟く。
「造れるのか、世界?」
自身の手を見つめ、それから三権の輝きに目を向ける。その青には、ただ素晴らしき輝きが反射するだけだった。
「ああ、今度はどんな世界が待ってるかな!」
ザァトは腰かけから立ち上がり、空を見上げる。ヴェィルはその姿に微笑み、茶化すように言う。
「昨日戻ったばっかだろ」
「ヴェィルも一度でも外に出たらわかるって。楽しいぞ、ここでは見れないものもたくさん見れるし」
「俺はお前から話を聞くだけで十分楽しいよ」
「うそだぁ」ザァトがヴェィルを見る。「聞いてるだけで楽しいわけないだろ……あ、コゥメルとロゥリカだ」
言葉の途中でザァトの視線がヴェィルの後方に逸れた。ヴェィルも立ち上がりそちらを向く。緑目の男と、赤目の男が連れ立って二人の方へ歩いてきていた。二人とも光を見事に反射する金髪をなびかせながら。
「ザァト」
二人の元へたどり着くと、コゥメルがザァトに言う。
「悪いが、ヴェィルと話があるんだ。外してくれるか」
「え、なんで。俺だけ仲間外れかよ」
「だから悪いと言っている」
「悪いと思うならいいじゃん、俺いても」
「難しい話だぞ」ロゥリカが静かに言う。「お前はつまらないと言って逃げ出すさ」
「……難しい話? っは、じゃあしょうがねえな」
ザァトは肩を竦めて去っていく。
「またな。ヴェィル。難しい話に飽きたら、俺が楽しい話してやるからさ」
「ああ、また頼むよ」
「三権を真似して世界を造ろうとしているらしい」
コゥメルが鋭い目でヴェィルを見つめながら告げた。自ずとヴェィルも険しく目を細める。
「世界を造る? 想造の力でそこまでできるのか?」
「わからん。ただ、だからこそ、その方法を探ってるんだ、あいつらは」
「トゥオツがヒュポルヒとホーチュナから直接聞いてるから、信憑性は高い」
コゥメルに付け足すようにロゥリカが言った。
「あの二人か、確かに冗談では言わないか。まあでも、それが三権へ侮辱ってわけでもないだろ。そもそも想造の力に不自由はないわけだし、むしろ三権の恩恵を大いに使おうって考え方だとしたら、それはより強い尊敬の想いだ。もうしばらく様子を見よう」
「まあ、お前が言うならそうするが」コゥメルが渋々と言った感じで頷く。「あまり寛容すぎるのもよくないぞ」
「そうだ」ロゥリカが続く。「総代としてこの地の幸福、俺たちの幸福を一番に願うなら、しっかり治めるべきだ。そのために、時には畏怖を見せつける必要があるだろう」
「畏怖? 脅してみんなをまとめろって? 冗談でもそんなことしないぞ、俺は。みんなのびのびしながら、互いを想い合う。それで充分まとまれる。今がそうだろ」
「今がそうってな、ヴェィル」コゥメルが息を大きく吐き、肩を落とす。「その今が、今だ。あまりに奔放にやりたい放題させてるから、三権への想いが薄まるやつが出てきてるんじゃないのか? それでもし、三権が俺らを見放したらどうするんだ」
「想いが弱まった結果、三権が俺らに恩恵を与えてくれなくなるとは限らないだろ。まあもし、そんなことになっても、俺が三権を掴んで離さない。みんなのためにさ」
「悠長な。それこそ保証のないことだ」
口調に熱が入るコゥメル。それをロゥリカが宥める。
「まあ待てコゥメル。ヴェィルはともかく、フェルには誰よりも優れた予見がある。大きな問題があれば、そうならないよう未来を告げてくれるだろう」
「おい、ロゥリカ」ヴェィルはじっと青い目でロゥリカを見つめる。「俺はともかくだって?」
「あはは、言葉の綾だ。お前の力を見くびってる奴なんて誰もいないから安心しろ、総代様」
からかうような口調でヴェィルの肩を叩くロゥリカ。それにコゥメルも続く。
「ま、確かにな。俺たちも結局お前のところに来たわけだしな。熱くなって悪かったな、総代様」
とんとんとヴェィルの肩を叩くコゥメル。
「お前たち、馬鹿にしてるだろ絶対」
ヴェィルの言葉に、三人は視線を交え合い、間を置いたのち一斉に笑い出した。
「じゃ、とりあえず様子見ってことで」
笑いを含んだままロゥリカが言って、ヴェィルから手を離す。
次いでコゥメル。「もしもの時は、本当に頼んだぞ。様子見とかじゃなく、ちゃんとした結論を」
「ああ、頼まれた」
ヴェィルが頷くのを見ると、二人は去っていった。議論を交わし合う後ろ姿を見送りながら、ヴェィルは呟く。
「造れるのか、世界?」
自身の手を見つめ、それから三権の輝きに目を向ける。その青には、ただ素晴らしき輝きが反射するだけだった。
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