ある夏の怪談!

内野あきたけ

『日が射す頃にて!』の怪

「三毒崩壊!高雅十方為楽!!」
 呪文を唱えたのは悟一だった。


 奴は体勢を崩し、勢いよく地面に叩き付けられた。


「そうだ!その意気だ!悟一、お前のその波動は普通の悪霊だったらすぐにでも成仏してしまうだろうな。だが相手が俺なんだ。もっと戦略的に戦ったらどうなんだ」


「戦略的に?とは」


「どんな卑怯な手段を使ってでも、俺を殺してやろうという覇気が全く見えんのだよ」


「それはお前ら悪霊のレベルが低いからな」


「くっくっく」
 奴の笑いはなにか精神に訴えかけるような恐怖を感じさせるものであった。


 突然、奴は姿を消した。
 そして、数秒後、再び姿を表したと思われた次の瞬間、三人はふっ飛ばされた。


 体が二メートルほど舞い上がり三人は頭上で一瞬、奴の姿をとらえる。


「慈悲寂滅!!」


 藤四郎は呪文を放った。
 そして地面に手をついて体勢を立て直す。


 三人とも受け身をとったので怪我はなく、呪文によって倒れたのは亜死だった。


「くそ野郎どもがぁ!」
 奴が叫びを上げた直後、藤四郎は先程の業丸で奴の胴体を素早く切りつけた。


「ふふ」
麗之助は複雑とも言える笑みを浮かべる。


「ぐはぁああ!」
奴は口から黒い液体を吹き出した。


「人間でいうところの吐血したってところかな?」
 麗之助が嘲笑う。


「……これは煩悩と邪念の具現化だよ。ちょっとばかし油断したかな?この俺が少し疲れたと思うほどだからな……だが人間など相手になるか!!!!」


 その時、麗之助は直感した。
 この先どんな出来事が待っているのか。


 俺は父さんを殺し、本当の命を与える。
 奴は不老不死の化け物。最強の四大心霊。


 おおよそ十年に渡っての命を巡る戦いに終止符を打つことを。そして己とお互いの勝利を確信した。


「藤四郎くん。刀を」


虚空を見つめた眼差しで、業丸を受け取った。




「……これがお前の本当の命だぁ!」
「この程度なら一方的に殺してしまうではないか!」


 すれ違い様に業丸は奴の煩悩と共に、邪念の塊である実体をも切り裂いた。


「くっくっく…はっ!…………はっはっはっあーはっはぁっはぁ!!ははぁっははっはフフフフっ」


 その断末魔の笑い声が、3人には奴の一番の目的が達成された高笑いに思えた。いや、実際にそうだったかも知れない。




 授業の始まりのチャイムが鳴り響き、日が指す頃、ついに亜死との決着が着いたのである。


 それはお互いの本望であり、勝利であった。


 奴の肉体は、普通の悪霊と同様に、光と化し消えて行くのであった。




























 一同はこれから教室に戻り、授業を受ける。





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