ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第五十八話 竜司のD1グランプリ開幕

「やあ、こんばんは。今日も始めて行こうか」」


「パパー、今日行ったスーパー銭湯凄かったよ!」


「そうか」


たつが凄く嬉しそうだ。
こんな事でご機嫌取れるなら安いものだ。


###


駆流ら三人を見送った後、僕らは最終調整の為星の広場に行った。


「へ……?」


星の広場のいつもの原っぱがえらい事になっていた。
原っぱ部分は問題無いのだが、外周部分が荒れに荒れている。
初めて来た時は整地された道だったのだが
今日見てみると刃の欠けた鍬で酔っ払いが適当に掘り起こしたみたいになっている。
これは正視出来る状態ではない。


「ガレア……今日は魔力注入インジェクトの練習でいいや」


その日の午前中はガレアに乗る事無く終了。
これがどう響いてくるか。


時間はすぐに経ち、約束の時間。


午後三時半


近鉄四日市駅で待ってると携帯が鳴る。
画面を確認。


中院 駆流


「もしもし駆流?」


「あっ竜兄りゅうにぃ
今学校出た所だからすぐに駅に向かうぜ」


「わかった待ってるよ」


ぼーっと待っているとガレアがおもむろに亜空間を出して手を突っ込みだした。


【ん? ん? ねえな。
竜司―、ばかうけ無くなったー。買ってくれー】


そういえばこいつはばかうけ好きだった。


「じゃあ、スーパー行こうか」


三重に来て日にちも経っているので駅前にスーパーがある事を知っていた。


スーパー ヨンジ 一番街店


「ええと、ばかうけばかうけ……」


もたもたしてると駆流たちが来てしまう。


「あった……へ?」


奈良で見た時よりまた種類が増えて変わっている。


ばかうけ 青のりしょうゆ味。
ばかうけ ゴマ揚げしょうゆ味。
ばかうけ えび塩味。
プチ揚げ ばかうけチーズ味


「また種類が変わって増えてる……ガレアどれがいい?」


【全部】


ですよねー。
また奈良の時のように全種類三袋ずつ購入。


【へへへ、ありがとなっ竜司】


ガレアは嬉しそうに亜空間にばかうけをしまう。


「さあ、ガレア急ぐよ。
もう駆流たち来てるかもしれない」


僕らは駅に戻って来た。
駆流たちは……
あれ? 華穏とマッハしかいない。


「あ、すめらぎさん」


「ごめん待った?」


「大丈夫ですよ、今来た所です。
今駆流トイレ行ってます」


「ありがとう」


少し沈黙が流れる。


「そういえばすめらぎさん。
何で駆流は竜兄りゅうにぃって呼ぶようになったんですか?」


「ええと、それはね……」


僕は華穏にボイレコの一件を説明した。


「ふふふ、単純な駆流らしい話ですね。
でもすめらぎさんって強かったんですね」


「弱そうに見える?」


「弱そうっていうか、雰囲気的にケンカなんかしなさそうですけどね」


「そう? あ、この前はありがとうね色々教えてくれて。
少なくとも茂部と駆流の問題は何とかなりそうだよ」


「いえいえ! 私なんて……。
この前ケーキ奢ってもらっちゃったし。
でも良かった……」


華穏は嬉しそうだ。


「おーい華穏。
待たせたな。
いやいや最後の奴がなかなか出なくてよ……
あっ竜兄りゅうにぃ!?」


駆流が恥ずかしそうだ。
華穏に話せる事と僕に話せる事とは違うみたいだ。
何か恥ずかしそうな駆流が可愛い。


「じゃあ、行こうかみんな」


この場に居てもしょうがないので僕が音頭を取る。


「うん……」


恥ずかしさが抜けきれない駆流が何か可愛い。


「行きましょ駆流。
駆流? どしたの?」


「な、何でもねぇよっ! 行こうぜ!」


僕らは電車に乗り、白子駅に向かう。


鈴鹿サーキット


入り口に行くと張り紙がしてあった。


本日貸し切り


「えと……どうしよ?」


入り口で立ち往生しているとガレアが


【何だ? 竜司、入らねえのか?】


と閉まっている扉を開けて中にズカズカ入って行った。
駆流たちも入って行く。


竜兄りゅうにぃ! 何してるの行くよ」


「う、うん……」


僕は良いのかな?
と思いつつ中に入る。
僕らは国際レーシングコースに向かった。
コースに近づけば近づくほど何やら人がちらほら増えていく。
全員スーツで携帯片手に話している。


国際レーシングコース


「OH―! リュージ! カケルー!」


モブが手を振っている。


「あ、モブさん、これは一体……?」


僕は周りでせわしなく動いている人たちを指差して聞いてみた。


「アレは皆今回のプロジェクトのスタッフデース」


「スタッフって……何人いるんですか?」


「中に五十ニン、外に五十ニンデース」


人数の多さに僕は絶句した。


「デハ中にハイリマショー。モブもモウキテイルヨ」


今言ったモブは茂部三兄弟の事だろう。
ややこしいなあ。
中に入ると一層慌ただしさが増した。
皆動いている。
駆流と初めて会った観覧席に再び到着した。
レース場にも数人動いている。
カメラを取り付けているようだ。
見えるだけで十台はあるだろう。
下を見ると茂部三兄弟がもういた。


「な、なぁ空気兄そらきにぃ……何か凄くねぇ?」


せんが心配そうに空気そらきを見つめる。


「ししっ心配するなっ。
こんなのなんの問題も無い……」


強がってはいるが空気そらきは震えていた。
無理もない長男とはいえまだ中学三年なのだから。


「ドウデースカー?」


「いや……まさかここまで本気だったとは」


「リュージはワタシがオオウソツキダトデモ?」


「いや、嘘をついているとは思いませんでしたが、怪しかったので百パーセント信用はしていませんでした」


僕は思った通りを述べた。


「OH―……ショックデース」


「まぁ、でもここまで人を集め、動かしているのは事実なんで信用しますよ」


そんな話をしている最中モブのケータイが鳴る。


「ウン……OK」


携帯を切ったモブは笑顔でこちらを向く。


「HEY! フタリトモ! 準備がトトノイマーシタ! 下へイキマショウ!」


「来た来た! くぅーっ!」


【ぶつかったりとかしないかなあ……ドキドキ】


「行こうかガレア」


【なあなあ竜司。結局何すんだ?】


こいつはまだ理解していないのか。
しょうがないかガレアだし。


「昨日広場でやったようなやつだよ」


【あれか? 今日も本気で走って良いの?】


「全力で走って良いよ。
でも飛んじゃ駄目だよ。
他の竜も走るんだから」


【わかったよ】


全力で走って良い
レース中僕はこの言葉を後悔する事になるんだ。
僕がガレアのポテンシャルを甘く見ていたって事だね。


僕らと駆流たちは下に降りる。


「すいませんすめらぎさん、今になってアレなんですが一体何をするんですか?」


僕が答えようとすると一緒に降りていたモブが割って入る。


「OH―! 麗シキレディー。
初メマシテデスネー。
ワタシはコーユーモノデース」


四日前僕らがもらった名刺を差し出すモブ。


「えっ……? ピクシーってあのピクシーですか!?」


急に華穏のテンションが上がった。


「華穏知ってんの?」


「何言ってんの駆流!?
ピクシーって言ったら超有名よ!?
私もファインディングニム大好きで何回も見たし!」


ああ、そうか。
どこかで聞いた事ある会社だと思ったらアメリカのアニメーション映画製作会社だ。
華穏の言ってたファインディングニムと言うのは魚が主人公のアニメ映画だったかな?


「OH―! 麗シキレディー、名前を教エテ下サーイ」


「あ! 華穏です! 花園華穏!」


華穏のテンションは上がりっ放しだ。


「OH―カノン。
美シイ名前デースネ。
コンナ所にワガ社のファンがイタナンテ嬉シイデース」


「はい! あのファインディングニムの海の絵が綺麗でもう何回も見ました!」


「アリガトウゴザイマース。アノ海の景色は苦労シマシター」


そんな話をしていたら下に到着。


「あっ駆流だ!」


茂部小石もぶしょうせきが僕らを見つけ指を指してくる。
それと同時に茂部空気もぶそらきら三人がこっちに来る。


「フフフ、ビビらずに来た様だな駆流」


「何言ってんだ空気そらき
この空気で飲まれてたくせに。
上で見てたぜ」


ニヤリと笑う駆流。


「ななっ何を言う!」


そんな二人の間にモブが入る。


「OH―、ハヤクも火花を散ラシテイマースネー。
デモソノ気迫はレース上で発揮シテクダサーイ。
レーススル前に皆サンにレーシングスーツを配リマース。
ツイテキテ下サイ」


僕らはモブに連れられ部屋に入る。
ダンボールが五箱並んでいる。
それぞれマジックで黒、赤、緑、青、白と書いてある。
真っ先に茂部空気もぶそらき


「俺は黒だな」


すると弟たちも


「俺は赤。染兄せんにぃは?」


「俺は青だ」


「俺は白だ。カートでもこの色だし」


あれよあれよと決まっていき、僕は余った緑になった。
まあいいかガレアの色だし。
箱を開けると三つ袋がありそれぞれS,M,Lと書いてある。
僕はMの袋を開き、手早く着替えた。
何やら全身分厚めのダウンで覆われている感じだ。
とりあえず着替え終わった僕らは外に出た。


「オッサン、何だよこのスーツ」


僕が効く前に駆流が聞いてくれた。


「コノスーツはワガピクシーがNASAに発注シタ防風圧スーツデース。
超スピードで走ル竜に跨ルワケデスカラネー」


人間如きの科学で人知を超えた力を持つ竜に対抗できるのか。
少し不安ではあったがとりあえずそのスーツは使う事にした。


「サァ! ミンナ! 準備シテクダサーイ!」


スタートラインに並ぶ十人。
位置はじゃんけんで決めた。


内側から


一番 中院駆流なかのいんかける マッハ
二番 茂部空気もぶそらき アンコ
三番 皇竜司すめらぎりゅうじ ガレア
四番 茂部染もぶせん ポンタ
五番 茂部小石もぶしょうせき タンケ


このような順番になった。


「サァ、皆サン準備は良イデースカー?」


スタートラインの門に備え付けられたスピーカーからモブの声が響く。


「COUNTDOWN START」


「5」


段々心臓がドキドキしてきた。


「4……3」


カウント2になったら魔力注入インジェクトだ。
僕はそう考えていた。


「2」


来た。


魔力注入インジェクト……」


トクン


心臓の高鳴りを感じた。
魔力が体内に入った証だ。
ガレアの足元がシュワシュワ言い出した。
横を見ると他の竜も同様にシュワシュワ言って煙のようなモヤモヤが出ている。


「1」


「TAKE OFF」


ビー


けたたましいブザーと共にD1グランプリ開幕


###


「さあ今日はここまで」


「えー良い所なのにーもっとお話ししてよー」


たつがねだる。


「もう遅いでしょ。
これ以上夜更かしすると明日学校遅刻するよ。
だから今日はもうお休み……また明日」


バタン


          

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