ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第五十四話 竜司、弟が出来る。

「やあ、こんばんは。今日も始めて行こうか」


###


僕は汗だくになりながらようやくガレアを外に引っ張り出した。


「はぁっ……はぁっ……じゃあ……行くよガレア……」


【うーん、欲しいなあ。あの人形】


「だからあれは売り物ではないんだよ」


【ちぇっ】


僕とガレアは一番商店街の方に向かった。
商店街の入り口まで来たが今日は駆流たちに会う事は無かった。
そのまま僕らはゲームセンターに向かう。
商店街から脇の道に入るらしい。
脇道に入ると少し離れた所に見た事ある三人……いや六人組が見えた。


よし、後をつけよう。
目測にして十mまで近づいた。
さあ次だ。


魔力注入インジェクト……」


ガレアの身体から出た緑のモヤモヤが体に浸み込む。


トクン


心臓が高鳴る。
僕は耳に意識を集中した。
じわじわと十m先の声が聞こえて来る。
ボイスレコーダー録音開始。


「……気兄さん、今日は駆流あんまし金持って無かったなあ」


「そうだなせん、最近ちょっと取り過ぎたのかもな。
こういうのは生かさず殺さずが肝心だ」


「さすが空気そらき兄さん。頭良いぜ」


小石しょうせきも覚えておけよ。
弱みを握ったら生かさず殺さずだ」


「ああわかったぜ空気そらき兄。
しかし駆流もアホだよなあ。
俺の耳なんか五月で治ってるってーの」


「ああいう栄養が身体に行った奴はあんなものだな。
手玉だぜ」


「あいつが中院宗次なかのいんそうじの息子と言うのは解っていたからな」


「金持ってるってのは解ってたって訳だよな。
小石しょうせきはやられ役になってもらって悪かったな」


「いいさせん兄。
まあ俺が本気出したらあんな奴ボコボコだけどな」


よし充分だ。
証拠集め終了。
さあ駆流の家に向かおう……
としたんだけどね……また出ちゃったんだ……
すぐに頭に血が上る癖が……


「しかし駆流なんかがF1なんかに乗れるかって―の。
なあせん兄」


「あいつ五月に全校放送でF1に乗るって大声で言ってたからなあ。
ああいうのを七光りって言うんだろ?」


「よく知ってるなせん
あれは七光りでお情けでF1に乗って成績も悪く消えていくパターンだな」


「パパー! F1乗せてくだちゃーーい! ってか!」


茂部小石もぶしょうせきがこう言うと三人の汚い笑い声が響いた。
この笑い声を聞いた瞬間僕はキレた。


「ガレア……行くぞ……魔力注入インジェクト!」


魔力を足に集中。僕の身体が弾丸の如く真横に飛ぶ。
視界が一瞬で六人に近づく。


「ハハハ……え……どわっ!」


小石しょうせきの右頬を僕の右膝が捉えた。


ゴシャ


鈍い音がして小石しょうせきが吹き飛びゴミ捨て場に激突した。
小石しょうせきは完全に意識を失い起きてこない。


「な……何だ!」


二人は声を上げた。
ゆっくりと立ち上がった僕の目は完全に血走っていた。


「フー……フー……お前ら寄生虫が駆流の夢を笑うのか!」


自分自身でも何言ってるかわからなった。
アニメや漫画の主人公ならカッコよくキメ台詞を言うんだろうけど何かよくまとまらない。


「あいつは純粋に真っ直ぐに夢へと歩いて行っている! 父親なんかに頼るかぁっ!」


【おいおい、兄ちゃん威勢よく飛び出したのはいいが、状況解ってんの?】


【ウチのあるじによくもやってくれたなあ】


【オマエ……殺ル……】


僕は完全に頭に血が上っていてこいつらが竜河岸だって事を忘れていた。


「フー……フー……」


【おーい、竜司―】


ガレアが飛んできた。


【何だってんだよ竜司……ん?】


三人の竜と向かい合うガレア。
ふいに三人側の竜のうちの一人が震えながらガレアを指差す。


【あーーーーーー! ガガガ……ガレア!】


【ん? ポンタじゃん】


ポンタと呼ばれる竜が震え出した。


【え……うわー! ガレアだ!】


【ガレア……】


【アンコとタンケも一緒か】


落ち着いた僕はガレアに話しかけた。


「ガレア、知ってる竜なの?」


【知ってるっちゅうか……有名っちゅうか……】


「どういう事?」


【こいつらアンポンタン三兄弟って言って有名なワル兄弟だよ】


「前に言ってた好戦的な竜って事?」


【そうなんだけどこいつら弱いんだよ。
弱いくせにちょこちょこチョッカイかけてくるんだよ。
一回気に入ってた俺の住処を壊された時
ブチキレて三人まとめて消し飛ばしたと思ったんだけどな】


この消し飛ばした下りから向かいのアンポンタン三兄弟の顔色が変わった。


【んで、久しぶりにやんのかお前ら】


ガレアの鋭い眼光に完全にビビったアンポンタン三兄弟はくるりとガレアに背を向ける。


【やりませーーん!】


三人ともそう叫んで走って消えた。
まさに脱兎のごとくだ。


「あぁっ! お前ら待てっ!」


空気そらき兄!
待ってくれェ!
ほら小石しょうせき
起きろ!」


ゴミ捨て場でのびている茂部小石もぶしょうせきを抱えひょこひょこ消えていった。


「……行こうかガレア」


取り残された僕らは駆流の家に向かう事にした。


駆流の家


「あら? おかえりなさい竜司さん。
駆流さんなら帰ってますよ」


シバタさんが僕とガレアを出迎える。
そのまま駆流の部屋に向かう。


トントン


「駆流―? いるー?」


「あ、兄ちゃん。ちょっと待ってくれよ」


駆流がカギを開ける。
部屋に入る僕ら。
座る前に駆流が聞いてきた。


「なあなあ兄ちゃん。どうだった?」


「あぁ、バッチリだよ」


いつもの勉強机にボイスレコーダーを置く。
さすが世界のオニー製。
クリアに録音出来ていた。
流し始めた序盤で気付いた。
僕がキレた所も録音していた事を。


「俺に耳なんか五月に治ってるっつーの」


茂部小石もぶしょうせきの声を忠実にボイスレコーダーが流す。


「五月に治ってるだとぉ!」


駆流が立ち上がり、外に出ようとする。
僕は制止する。
ドサクサに紛れてボイスレコーダーの再生も止める。


「ちょ、ちょっと待ってよ。
どこ行く気なの?」


「決まってんだろ! 茂部の所だよ!」


「だから待てって。
駆流のダメな所はすぐに頭に血が昇る所だ」


何だろうこのブーメラン感。


「頭に血が昇った時こそ深呼吸して落ち着けって」


「わかったよ」


「今日いくらとられたの?」


「学校で三千円」


「わかった。決行は明日。
明日には三千円も含めて全て取り戻す」


「わかった明日だな」


「あとなこういうのは貯めて貯めて一気に爆発させるんだよ」


さっき一瞬で爆発した奴が何を言う。


「わかったよ」


今日は勉強もそこそこにすぐ寝てしまった。


翌朝


いよいよ今日は決戦だ。
僕は身支度を手早く済ませ部屋の外に出た。
同時に駆流も部屋から出てきた。


「あ、兄ちゃん……おはよう」


何か違和感がある。
そうか普通に挨拶している駆流が珍しいんだ。


「あ、駆流おはよう」


三人で二階から階段を降りる。


「駆流、今日で茂部の問題は全て終わらせるからな」


「わかってる」


朝食を済ませ外に出る準備をした。
麗子さんは今日も仕事らしく身支度をしに部屋に戻った。


「あ、そうだ駆流ケータイ教えてくれ」


「いいぜ」


電話帳に登録。


「今日の段取りは放課後どこか広めの公園に茂部らを連れて来て欲しい」


「広めの公園か。
四日市市民公園がいいんじゃね?」


「四日市市民公園ね。わかった」


「あとさ……竜兄りゅうにぃ


竜兄りゅうにぃ
少し不思議な気がしたがスルーした。


「昨日、竜兄りゅうにぃと別れてから聞いちゃったんだよ。
ボイスレコーダーの続きを……」


しまった!
ボイスレコーダー駆流の部屋に置きっぱなしだった。
僕は失敗したと思い黙ってしまった。


竜兄りゅうにぃがキレて言った言葉聞いて感動しちまってよ……
なあ竜兄りゅうにぃ……俺ちゃんと夢に向かってるかな?」


茂部の時とは違う初めて見せる駆流の弱気な所だった。


「駆流、お前は絶対にF1に行ける」


僕は精一杯の力を込めてそう言った。


「ありがとう竜兄りゅうにぃ……
あ、事後報告で悪いけどこれからにーちゃんのこと竜兄りゅうにぃって呼んでもいいか?」


正直僕はこの呼び方が気に入っていた。


「いいよ。
僕もまさか旅先で弟分が出来るとは思ってなかったよ」


「へへへ」


駆流は少し照れている。


ピンポーン


「あ、華穏だ」


僕らは外に出た。


「おはよう駆流、すめらぎさん。
あーっまた駆流ってばネクタイちゃんと締めてないー」


華穏が駆流の首元に手を伸ばしネクタイを締める。


「もう毎朝毎朝止めろよな」


「もうっ、ちゃんと締めないから……でしょっ! ……はい出来た」


「じゃあ、二人ともいってらっしゃい。
駆流学校終わったら電話くれよ」


「ああ! 竜兄りゅうにぃいってきまーす!」


「何よ竜兄りゅうにぃって」


「うっせ」


二人を見送った僕はまた星の広場で魔力注入インジェクトの練習だ。
時間はすぐに経ち、午後三時半。
四日市まで戻って来た僕は駆流からの電話を待っていた。


明日へのたーめにー♪


僕はすぐに携帯を見た。


中院駆流


「もしもし」


「あっ竜兄りゅうにぃ
四日市市民公園まで着いたぜ。茂部の連中も一緒だ」


「わかった。すぐいく」


僕は携帯を切った。


「さぁガレア行こう」


【あいよ】


僕とガレアは近くに待機していたせいかすぐに着いた。


四日市市民公園


意外に公園自体の敷地は狭く、長細い公園だった。
四日市市立博物館が隣接している。
おそらくこの公園は飾りでメインは博物館なのだろう。
その公園の銅像に前に八人は居た。


「あっ竜兄りゅうにぃ!」


「あっ!」


茂部三兄弟は僕とガレアを見て驚いている。


「ちょ……駆流!
てめー、金持って来る奴がいるっていうからわざわざこんな公園まで来たんだぞ!」


「バーカ、嘘に決まってんだろ」


「駆流、どういう事?」


「ごめん竜兄りゅうにぃ
こいつらに普通に言っても来ないだろうから……」


駆流の言い分では普通に言っても来ないので
今日は金を持ってきていないから知り合いを呼んで金を持ってきてもらうと言ったそうな。
そしてホイホイついてきた茂部三兄弟。


「駆流、お前仮にここで俺達とケンカしてまた小石しょうせきの耳が悪化したらどうする」


「そうだぜ! ちょっとずつ良くなってきているのに!」


全てバレているとも知らずに喚き散らす茂部三兄弟。


「あーもうそういうのいいから」


駆流が耳をほじりながらそう言う。


「何?」


小石しょうせきの耳が五月に治ってる事は知ってるから」


茂部三兄弟は絶句し、後ずさりしている。
三兄弟の竜もガレアの動向が気になるのか一緒に後ずさりしている。
そんな六人を見て準備運動を始める駆流。


「さぁ……お前ら解ってんだろうな。
四月から散々やってくれたな。そのお返しを今日してやるぜ!」


駆流が走り出した。


「くそっこうなったら破れかぶれだ!」


三兄弟も覚悟を決めた様だ。
双方がまさに激突する瞬間


「チョト待テ下サーーーイ!」


一人の男性が間に割って入った。


###


「さあ、今日はここまで」


「パパかっこいい!」


こう純粋な目で褒められると照れる。


「そうだね。
たつも自分の事より他人の事で怒れる人になってね」


「うん!」


「じゃあ今日はもうお休み……」


バタン

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