ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第四十話 ガレア、キャンプに行く事になる

「やあ、こんばんは。今日も話して行こう」


「パパッ! 早くっ!」


###


さっきの痛みが嘘のように和らいでる。


「ふうっ……これで大丈夫よ……」


マスター、お疲れ様でした】


「ありがとうございます」


「竜司君、二週間ぶりぐらいだけどずいぶん顔つきが変わったわね」


「そうですか……? まあ色々ありましたから」


【竜司、この人は誰なんだい?】


ヒビキが間から話に加わった。
そういえば紹介がまだだった。


「ああ、ヒビキ。
こちらの方は蘭堂凛子らんどうりんこさん。
お医者さんで竜河岸たつがしだよ」


【ああ、それはそれは……】


ヒビキが畏まっている。


「凛子さん、こちらの方はヒビキ。
高位の竜ハイドラゴンで白の王だよ」


「これはこれは……」


凛子さんも畏まっている。
白の王だからか竜だからか。
すると


「竜司にーちゃん!」


カンナが僕に抱きついてきた。


「うわっカンナちゃん、久しぶりだね」


僕は久しぶりに見たカンナちゃんの赤髪を撫でた。


「ヘヘヘー。
もうねもうね!
めぬえっと弾けるようになったんだよ!?」


「へえ、凄いね。また今度聞かせてもらおうかな?」


「うんっ!」


僕とカンナの光景を見て微笑むヒビキと凛子さん。
頬の赤いガレア、無表情のグース。
場が何となく和やかになった。
あれ? 誰か忘れている気が……


「…………ロリコン……」


そうだ氷織ひおりを忘れていた。
リビングに続く襖から半分顔を出して恨めしそうにこっちを見ている。


「ハハハ……ああ、こちらの子は嘉島氷織かしまひおりちゃん。
天才の竜河岸たつがしだよ」


恥ずかしそうに部屋に入って来た氷織ひおりはいつぞやのキメ台詞を言い出した。


「違います竜司さん、私は天才美少女! 竜河岸です」


したり顔でポーズを決める氷織ひおり
するとヒビキが


【よっ! 氷織ひおりっ! 日本一―!】


と合いの手。
無表情でポーズをちゃっちゃと変える。


凛子さんは笑いながら目線を氷織ひおりに合わせ


「よろしくね、氷織ひおりちゃん。
私は蘭堂凛子らんどうりんこ
竜河岸たつがしよ」


と左手を差し出した。
氷織ひおりは少し照れながら握手に応じた。


「……よろしくです」


「ホラ、カンナもご挨拶なさい」


カンナはぺこりと頭を下げる。
赤いツインテールが尻尾のように揺れた。


「初めまして、らんどうカンナ 十歳 たつがしです。
仲良くして下さい」


【おや、氷織ひおり、アンタの方が一歳年上だね。
お姉ちゃんだよっ】


ヒビキは笑顔で氷織ひおりの頭をポンポンと優しく叩く。


「うん…………」


頬を赤くしながら俯いている。


【さあっ! アンタ達っ! せっかく来たんだ。メシ食ってきなっ!】


ヒビキが豪快に夕食に誘う。


「じゃあ、お呼ばれしようかしら? ねえカンナ?」


凛子さんがカンナに微笑みかける。


「うんっ!」


「カ・カンナちゃん……向こうでアステバン……見る……?」


「えっ!? あるのー? 見る見るー!」


誘いが上手くいって嬉しそうな氷織(ひおり)とカンナはバタバタとリビングへ向かった。
そして何故かガレアもついていった。


【さあっ作るよっ! アンタも手伝っておくれよ。子供らも腹空かしてるからねっ】


「ええ、いいわよ。グースもお願い」


【わかりましたマスター


三人もリビングに消えていった。
僕も布団から出てリビングに向かった。
グースの力は凄い。
ついさっきまでの激しい痛みが嘘の様だ。
もう違和感ぐらいにまで収まっている。


リビングに来ると僕は困ってしまった。
キッチンには凛子さん、ヒビキ、グース。
TVの前にはカンナ、氷織ひおり、ガレア。


どちらにいったものか。
答えは考えるまでもない。
僕は料理なんてできない。
僕はTVの前に来た。


三人は食い入るように画面を見ている。
画面はアステバン第二十三話「行方を追え」だ。


【いっけー! アステー! クラーッシュ!】


「そんなニュルニュルやっつけちゃえー!」


「このミュルミュル気持ち悪いです……」


三者三様の事を言っている。
僕も何回も見た話だが一緒に見ていた。
二十三話のEDテーマが流れている時に


【さあっ! 子供達っ! ガレアッ! ご飯出来たよ! こっちおいで!】


ヒビキの大声で呼び出しがかかる。


「はぁーい」


ヒビキが例のデカい土鍋を持って来る。
何やら色が赤い。


「ヒビキ……これは?」


【ああ、キムチ鍋だよ。
安心しなっ。
子供も食べるんだから辛さは抑えてあるよっ】


食卓に七人が並んで座る。


【こんなに大勢の食事なんて初めてだよっ。
ね? 氷織ひおり


「そうですね」


みんなそれぞれ食べ始めた。
僕もガレアによそってやった。
前の事もあるので落ち着くまで食べれないのは覚悟していた。


「はいガレア」


【サンキュー竜司】


ガレアはお椀からダイレクトに口へ。
いつもの喰い方だ。
だが、前とは違っていた。
何か咀嚼が長い。


【ムフー……】


大きな鼻息ががガレアの鼻から漏れる。
そしてガレア無言。
その間に僕が一杯食べる。


【おかわり!】


またよそう。
ガレアの鼻息ムフーから無言。
僕が一杯食べる。
このサイクルで意外に食べれたんだ。


食事も進み、七つも口があるため意外に早くなくなった。
片付けに入る時TVから


(各地のキャンプ場は大変賑わっています……)


「ママー? きゃんぷってなあにー?」


「山とか海でみんなで行ってね。
テント張ってお泊りしたり、バーベキューっていってお肉焼いたり。
後水場があれば水着で遊んだりもするわよ」


もう話の途中からカンナの目がキラキラし出していた。
ガレアじゃないがこれはと思ったね。


「ママッ!! 私もキャンプしたいっ!」


大きな目を凛子さんに向ける。


「うーん、週末なら診療所も学校もないから行けるけど……どこか良い所あるかしら?」


【あるよっ! 十津川なんてどうだいっ?】


「十津川?」


【あぁ、奈良の山奥にある河さっ! あそこはキャンプ場としても有名だよっ!】


「へぇーいいわねー」


凛子さんが柏手かしわでを打った。


「じゃあ、今週末皆さんでキャンプに出かけましょう」


「やったー!」


カンナは大はしゃぎ。
そこへ僕が


「あ、もう一人ここには居ない人で呼びたい人が居るんですが……」


僕はこのキャンプでヒビキの日本語をマスターさせる気だった。
僕は部屋に戻りケータイを持ってきた。


並河なみかわけん


「もしもし並河なみかわさんですか?
竜司です。
今週の週末って空いてますか?」


「空いてるけどどうした?」


「十津川にキャンプに行きませんか?」


「おおいいね。
行こう行こう。
そっちは何人だ?」


「僕と女性一人。子供が二人。あと竜が三人です」


「移動手段はあるか?」


「ちょっと待って下さい……移動手段は何かありますか?」


【ああぁっ! あっちゃー……それ全く考えてなかったよ】


並河なみかわさん、無いそうです」


「よし、じゃあ車は俺が出そう。
かなりデカいワゴンだからそれぐらいなら乗れるだろう」


「ありがとうございます」


「食材とテントも一応持っていくがそちらでも用意しておいてくれよ」


「わかりました」


僕は電話を置いた。


「竜司君、その人は誰なの?」


凛子さんが聞いてきた。


「ああ、この方は普通の人で並河なみかわさんです。
奈良で知り合いました。
ちゃんとしている人ですので安心してもらっていいですよ」


「後は……ガレア?」


【何だ? 竜司?】


「今週末、ここに居る皆で出かけるからまたその時に転移で凛子さん達を連れてきてほしいんだ」


【いいよー。でもどこに行くんだ?】


「川にキャンプだよ」


「キャンプ?」


ガレアキョトン顔。


「ああ、キャンプってのは皆で川辺や山に行ってご飯食べたり、泊まったりするんだよ」


「ん? それって竜司と出会う前に俺がやってた事じゃね? 確かノジュクって言うんじゃ無かったっけ?」


ここで久々の新事実。
ガレアは野宿していた。


「うーん、説明難しいけど野宿とはまた違うんだよ。
野宿ってそのまま何もせず寝ていただけだろ?」


【うん】


「僕らがしようしているのはちゃんと前準備して行くんだよ。
それに目的も違う。
野宿はただ寝るだけだけど、僕らは自然を楽しむって目的がある」


【なるほど! わかったぜ竜司!】


ガレアは納得したようで良かった。


片付けも完了し、凛子さんらを帰した。
また週末にと約束して。


【さぁっ! 色々買わなきゃねっ。
テントは……両親のがあったはずだよ。
あと氷織ひおり?】


「はい」


【アンタに可愛い水着を買ってあげなきゃねっ】


ヒビキが笑顔でそう言う。


「…………うん……」


少し照れながら氷織ひおりが答える。


【竜司、アンタはどうすんだい?】


旅の途中のため水着なんて持ってきていない。
僕も買いに行くことを決めた。


「はい、じゃあ行きます」


【じゃあ、氷織ひおりが学校終わった後に行こうかね?】


「はいわかりました」


僕らは週末までに食材や必要な物を揃え週末を待ちわびた。
僕は日中は魔力制御やスキルを磨く練習に当てた。
そんな事をしていたらすぐに週末はやって来た。


正直僕はキャンプなんてした事が無いから若干緊張していた。
多分並河さん頼みになるだろう。


そしてキャンプ当日


###


「さあ、今日はここまで」


「パパー、傷が治って良かったねっ」


たつの笑顔に癒される僕。


「ありがとうたつ。じゃあ今日はもうおやすみ……」


バタン

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