ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第二十七話 竜司の魔力制御

「やあ、こんばんわ、今日も話して行こうか」


「パパ、一つ良い? 何か前にも似たようなの聞いたような気がするんだけど」


「そうかな?」


「だって宴会するでしょ?
そんでそこで知り合った人とお話しするでしょ?
そんで今日の最初は魔力制御の練習の話でしょ?」


僕は少し驚いた。
たつは賢い。


「確かにやってる事はそうなんだけど、その時の僕の心境は全然違ったんだけどね」


僕は若干言い訳がましい事を言った。


「ふーん」


微妙に納得いってない様子だ。子供は怖い。


###


「じゃあ、行こうや」


僕はげんについていった。
着いた所は公園だった。
黙ってげんは公園内を進む。
すると池に辿り着いた。


「ここなら誰も迷惑はかからんでぇ」


振り向いた元げんがそう言って笑っていた。


「懐かしいわぁ。
ワイも昔ここで魔力制御の練習やったからの。
今やったら結構細かい制御できるで」


「細かい?」


「やってみせようか。
おいベノム」


ベノムは黙って側まで来た。
げんは人差し指と中指を上に向けてくいっと上げた。
すると急に地面が揺れ出した。


大地震だ。
これはヤバい。
焦った僕は尻もちをついた。
すると周りは特に揺れてる様子もない平時の状態だった。


「どや? 驚いたか?
今竜司の足元だけ揺らしたんや。
M6~7ってとこか」


心臓の鼓動が大きくなって止まらない。
僕は何も言えなくなっていた。


「おい! 竜司!」


げんの大声で僕は我に返った。


「凄いね……」


「そうびっくりされるとやった甲斐があるっちゅうもんやな。
どや?
そんな竜司君に鮫島さめじま先生が魔力制御のレクチャーをしたろうか?」


「お願いします!」


魔力制御に無限の可能性を見た僕は大声で返答した。


「お、いい返事やな。
じゃあ、竜司が魔力について知ってる事を教えてくれや」


「えーと、まず魔力は汎用性のある無限エネルギーっていうのと、危険だから魔力は竜河岸たつがしが手綱を握ってると言う事。
あと扱うにはイメージが大事って事ぐらいかな?」


「おう、ようわかった。
まず魔力についてや。
魔力は無限に湧き出るエネルギーや。
枯渇する事があらへん。
だけどやそれも竜次第なんや」


「竜次第?」


「そうや、ばーちゃんが魔力は水道と一緒って言うとったわ。
そんで竜は水道管、もしくは蛇口なんだと」


「どうゆう事?」


「あんまり使いすぎると魔力が一時的に出なくなるんや。
竜は魔力が詰まるって言ってたけどな。
なあベノム?」


【……魔力が詰まるの嫌い、ねえガレア?】


【だよなぁ、何ちゅーの?
けだる~くなるんだよ。
もうダリぃの】


「ねえガレアどうやったら詰まるの?」


【わかんね、いやマジで】


【僕も知らない……】


「まあ、一回のケンカで詰まるなんてそうそう無いけどな。
魔力が詰まるとスキルも使えへんようになるからな」


「そうなの?」


「そうやで、元々スキルは使役した竜の魔力を少し竜河岸たつがしの体内に入れて発動するんや」


僕は初耳の事ばかりで黙って聞いていた。


「魔力なんて異物体内に入れたらそらダるなるわな」


「そうか、だから回数制限があるのか……。
けど、一昨日のケンカで震拳ウェイブが使えなくなったのは?」


「ああ、あれは魔力関連とは別の制限やな。
制限というか代償やな。
ワイの震拳ウェイブは拳だけをピンポイントに揺らすんやけど波の余波ってのが頭も揺らすんや。
そんで激しい乗り物酔いのようになる。
気持ち悪いでぇ。
後昔使い過ぎて脳震盪起こしたこともあったしな」


「そんなの使い過ぎても大丈夫なの?」


「そうやねんなぁ。
震拳ウェイブは脳への負担が大きいからなあ。
まあ、でもばーちゃんが言ってたわスキルは磨けば磨くほど光るってな。
そんで今やったら震拳ウェイブは一日五発。
双震拳ダブルウェイブは一日三発まで打てるようになったわ」


「僕の場合の制限は何だろ?」


「そんなん使った人間にしかわからんわ。
まあ、ヒントは使ってる時の自分を思い出すこっちゃな」


僕は黙って考えてみた。
そう言えば使った後僕はいつも大きく息を吐いていた。
あれは集中力が切れたと思っていたがその実僕は息を止めていたんだ。


「息を止めている間……かな?」


「なんやそれ?」


「いや、こっちの話」


僕は説明するのも面倒なので避けた。


「まあええわ、じゃあ次移るで。
魔力を制御するのはやっぱりイメージや。
そのイメージが魔力をどのように変換するかを決める。
やってみぃ」


僕は少し前の木を標的にイメージした。
水流が木を倒すイメージ。


「いっけぇ!」


キョンッ


爆発音とともに木は粉々に砕け散った。


「竜司……威力強すぎへんか……?」


「うん、そうだね……」


自分の未熟さが恥ずかしくなったよ。


「よし! ならワイがとっときの事教えたる。
まずガレアの魔力をどう変換するかを考えるんや。
出来るだけ具体的に。
そんで次はポーズや!」


げんが笑ってそう言う。


「ポーズ?」


「そう魔力制御して放つときのポーズや。
ワイも二本の指を上にくいってあげたやろ?」


「そういえば」


あのポーズはカッコつけてやってるんじゃない事に驚いた。


「でや?
そのポーズは自分が変換したい魔力の姿をイメージできるもんの方がええな。
そのポーズがイメージに近ければ近い程精度を増す。
ほなやってみぃ」


近いって誰の判断?
そう心でツッコミを入れて僕はイメージしてみた。
思い出したのは昨日の夢だ。


ビームのような。
貫通する。
真っ直ぐに飛ぶ一筋の光


そしてポーズは人差し指をまっすぐ前に突き出す。
狙いも定めないといけない。
人差し指を突き出すのは右腕。
左腕は照準合わせに使おうと考えた。


「フーッ」


僕は左手を矢印の様にして前へ突き出した。
右手も準備。


「ガレアー! シュートーー!」


僕は思い切り右手を前に突き出した。


キュンッ


ガレアの口から出た。
一筋の閃光が木を貫通した。


「出来た! ……あれ?」


ボコン! ボコン! ボコン!


木を貫通した光は収まらず、次々と木や壁などを貫通していった。


「わわっ! ヤバい! どうしようげん……あれ?」


げんはベノムに跨り遥か後方に走り去っていた。
逃げやがった。
純粋にそう思ったね。


「待ってよー」


「竜司! 逃げるでぇっ!」


「もう逃げてるじゃんかーー!」


僕とガレアも後に続く。
僕らは何とかフネさん宅まで帰って来た。


「はぁっはぁっ……あーもー酷いよげん……」


僕は久しぶりに全力疾走したので息を整えるので精一杯だった。


「ハハハ、いやスマンかったなあ」


げんは涼しい顔をしている。
そりゃそうだ、走っていたのはベノムなんだから。


「にしても凄いのう。
まだ竜儀の式やって数日も経ってないんやろ?
それであんだけの威力が出るなんてなあ。
それだけガレアとの絆が深いっちゅうこっちゃな」


「名前とか付けた方がいいのかな?」


「ええんちゃうか?
それでイメージがより固まるなら」


この閃光はガレアとの技だ。
だから命名はガレアと相談する事にした。


「ねえガレア。
さっきのビームなんだけど、名前何がいいかな?」


【さっきのか!?
えーと、アステバンの銃みたいだったじゃん。
アステショットでいいんじゃね?】


まあ、大よそアステバンから持って来るのは予想してたけど。
ガレアがそれで良いならと僕は了承した。


「じゃあ、この技は魔力閃光アステショットで」


【なあなあ竜司!
技とかって俺達正義のヒーローみたいじゃね? ムフー】


ガレアは嬉しそうだった。
そんなガレアを見てホッとしたよ。


「そうだねガレア」


明日へのたーめにー♪


僕の携帯が着信を告げている。
ちなみに着メロはアステバンOP「明日への為に」だったよ。


【明日へのたーめにー俺は行くー♪】


ガレアが続きを歌っている。
携帯の画面を見た。


新崎 蓮


蓮からだ。
しかも今日のは誘拐犯とかからじゃない。
僕はすぐに電話に出た。


「もしもし……蓮……?」


「うん……」


「どうしたの? こんな朝早くに」


時計の針は午前八時四十五分を指していた。


「あの……また私とUSJ行ってくれないかなって。
ホラ、あんな事があってうやむやになったじゃん……どうかな?」


僕は蓮が約束を覚えてくれてたのが嬉しかった。
それは蓮も楽しみにしてくれてた事を意味するから。


「うん! 絶対行く!」


「ありがと……じゃあ、九時半に大阪駅でね……」


【ねえ蓮☆どっちのブラで行くの? 白? 赤?】


「まだ電話中だからっ!」


ツーツー


ルンルは相変わらずだなあと思い、冷静に考えてみた。
蓮のブラジャーは赤と言う事を。


「おいおい竜司。
なに気色の悪い顔してんねん」


【どうせ電話、蓮だろ?
また交尾の事でも考えてたんだろ?】


【……交尾って何?】


【俺もよくわかんね】


「何や、朝から騒々しい。
竜司?その緩み切った顔は」


フネさん参戦


「ああ、ばーちゃんおはよう。
なに蓮から電話だってよ。
多分デートの約束でもしたんだろ」


何で僕の周りの人間はこうも察しがいいのか。


「何? デート?
逢引か!
ええのう若いもんはワシも昔じーさんと白浜まで逢引したもんじゃ……
となれば竜司よ」


何やらフネさんが戸棚から瓶を取り出し僕に渡す。
これにはこう書いてあった。


勃起薬丸


「こここ、これって!!」


「ムヒョヒョヒョ、ワシは別に外泊でも一向に構へんぞい」


頭の勃起の文字で大よその察しがついてしまった。
すると僕の肩に手を置くフネさん。
目が怪しく光る。


「竜司よ……
男というもんはキめる時にキめなあかん!
女に恥をかかせるなや」


「そんな事はしませーーん!」


僕とガレアは準備を済ませた。
もちろん服は蓮に選んでもらった服だ。
僕は蓮の元へ急いだ。


###


「さあ、今日はここまで。どうだった?」


今日は初めが初めだっただけにたつに感想を聞いてみた。


「パパっ今日のお話面白かったよっ」


僕はホッとした。
じゃあ、続きはまた明日……おやすみなさい




バタン

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