ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第二十一話 竜司エロスを知る

「やあ、こんばんは。昨日はげんと会った所までだったね」


「うん……」


まだ げんを怖がっているのか。
じゃあ、今日も始めて行こう。


###


警察はげんを追って走り去っていった。
辺りもすっかり暗くなり、僕は蓮と夕食を食べに行った。
その話の中で


「竜司君、大丈夫?」


僕は震えていたのだ。
鮫島元さめじまげんの迫力に。
三十分以上経っても震えていたみたい。


「怖かったぁ~~」


僕は冗談っぽく言うと蓮が


「でも……私嬉しかった……竜司君が怒ったのって私が言われたからでしょ……」


蓮が赤面している。
僕は頭に血が上るとその辺りの記憶を一瞬忘れるんだ。


「言われたのって?」


「だから…………ブスって……」


僕は思い出した。
そういえばそうだった。
ガレアの時もそうだけど、僕は自分の事は耐えれるが大事な人の事を言われるのが我慢できないみたいだ。


「そうだよ、許せないよ。だって蓮は……」


僕は物凄く恥ずかしい事を言ってしまうと思い、口を止めたが、遅かった。


「私が……なに?」


「いやっ何でもない……」


僕は顔を赤くし、ソッポを向いた。


「何よー、言いなさいよー」


「いや…………可愛いのにって……」


「え……?」


そしたらルンルがまた茶化してきた。


【ねえねえ、宅の竜司ちゃんたら、もう蓮にメロメロよん。
こりゃ行くとこまで行ってもらわないと。フンッ】


鼻息も荒い。
するとガレアがキョトン顔だ。


【お前色々言葉知ってるなー、メロメロって何だ?】


【竜司ちゃんが蓮に惚れちゃったって事よん】


ガレアはまだキョトン顔。


【惚れる?】


【好きって事よ】


ガレアの目に輝きが戻った。


【「好き」! 結婚! 結婚だな! 竜司お前こいつと結婚するのか!?】


「ちょちょちょっと待ってよガレア!」


僕も制止したけど結構救われてたんだ。
とにかく気まずくなっちゃったからね。
でも顔は真っ赤だったよ。


【なぁに今さら言ってんのよう。
あんだけ蓮をかばっておきながら。
アタシもあえて助けなかった甲斐があったってもんだわ】


「え? それってどうゆう……?」


【んもう、竜司ちゃんたらにぶちんー。
だからアタシは普段ならあんなハナクソどもは一蹴してたのよう。
でもさ……せっかくの男子とのお買い物じゃない?
騎士ナイト役は竜司ちゃんに譲ったわ。
ううん我ながらグッジョブ】


「僕がやられてたらどうするつもりだったんだ?」


【そん時はアタシが出るわよ。
でも見事竜司ちゃんはアタシのお眼鏡にかないました。蓮?】


蓮は顔を真っ赤にして絶句している


【今日……アンタ、キメちゃいなさいっ】


ルンルは拳を握って蓮に突き出した。
その握り方が変わっていたんだ。
人差指と中指の間に親指を通すような。この手が示す事は後で知ったんだけどね。
僕は最初その握り方が示す事がよく解らなかった。


その時僕は蓮がまた大声を出すんじゃないかって思ってカバンに手をかけたんだ。
また追い出されると思ったからね。
だか連のほうを見ると


「……ルンルゥ~……」


【れ・蓮……?】


ルンルも少しビビっている様子。


「アンタ、さっきから余計な事をベラベラベラベラ……」


蓮の動きがゆっくりなのが逆に怖い。


「ちょ・ちょっと蓮さん……?」


僕はたまらず声をかけた。
蓮はこちらをギロッと睨み


「竜司君は黙ってて」


ゆっくりな口調もまた恐怖を誘い、僕はそのまま事の成行きを見守るしか無かった。


「アンタ……お仕置きが必要ね……」


【ヒエッ……ごめんなさいごめんなさい、やめてそれだけはっ!】


ルンルは跪いた。
跪く竜も初めて見た。
蓮はゆっくりとルンルの手を持った。
その瞬間


バリッ


電流がスパークしたような音と火花が繋いだ手から出た。
すると


【あぁぁぁあぁぁあ】


何かルンルがおかしくなった。


【だだだだからぁあぁぁぁ、あやまままったじゃないのよよよよよ】


ルンルの体は小刻みに震えているようだ。


「フンッしばらくそのまま反省しなさいっ」


そう言い放ち蓮はまた席についた。
僕は疑問だらけだったから聞いてみた。


「蓮、今のは……?」


「これ? 電流機敏エレクトリッパーよ」


僕は蓮のスキルの電流機敏エレクトリッパーは自分の反応速度を上げるだけだと思っていたが違うようだ。
僕は好奇心から聞いてみた。


電流機敏エレクトリッパーって自分の反応速度をあげるだけじゃないの?」


そしたら蓮がしたり顔で人差し指を立てて左右に振る。


「チッチッチ、甘いわよ竜司君。
私の電流機敏エレクトリッパーは電流の流れをコントロール出来るの。狂わせたりとかね」


「そうか……」


「今はルンルの体内電流を細かく乱反射させるようにしたの」


「だから今細かく震えているってわけか……この喋り方がおかしいのは?」


「乱反射させたのは全身だもの、舌も震えてるんじゃない?」


蓮はあっけらかんと答える。


「最初からこんなにも使えたの?」


「違うわ、最初はせいぜい電流の流れを遅くするぐらい。
三回使ったら眠ってたし。竜儀の式の後凄く練習したもん」


やはり練習が必要か。


「そういえば竜司君、学校は? 登校日とか無いの?」


やっぱり来たかそう思ったよ。
同年代だし、学校の話題を出すだろうってね。
だから話したよ全部。
蓮とはこれからも仲良くしたかったしね。


横浜事件のこと。
引き籠って学校に行って無い事。
旅ではなく家出だという事。
全部ね。


蓮は黙って聞いてくれてたよ。


「そう……でも横浜の件は事故じゃない」


「そう簡単に割り切れないよ……僕はこの手で友達を殺してしまったんだ……」


「あと引き籠りは違うけど学校行って無いって点は同じね」


「……蓮も? ……」


「そう、アタシ今学校行って無いよ」


「何で?」


「だって学校の授業つまらないし、周りも私が竜河岸たつがしってだけで怯えて腫物を扱うように接するんだもん。
でも行かなくなったのは最近よ?
私勉強は出来るからやっかんで色んなうるさい奴等からケンカ売られたりもしたわ。
髪も青緑だしね」


「ケンカ……どうやって切り抜けたの?」


電流機敏エレクトリッパーよ。
これ使って相手の動きを遅くしてタコ殴り?」


僕はゾッとした。
それを察したのか


「あぁでも心配しないで。
今はもちろんそんなことしないし。
電流機敏エレクトリッパーをもっと上手に扱えるようにもなりたかったしね」


「ケンカが練習にはうってつけだったって事か」


僕は少しホッとした。


「ママが言ってた「スキルは磨けば磨く程強くなる」って」


「なるほど」


僕は自分の全方位オールレンジがどうゆう風に変わっていくか楽しみになった。


「竜司君、竜儀の式はいつ終えたの?」


「……昨日……」


「じゃあ、まだまだこれからじゃない頑張れ少年!」


蓮は可愛い笑顔をこっちに向けた。
僕はこう言ってくれる蓮の気持ちが嬉しかった。


「じゃあ、そろそろ行きましょうか?」


え?
時計を見ると午後八時。
そろそろ今日泊まる所を探さないと。
この時僕は時間が経つのが早いと思ったよ。


外に出た四人。
駅まで蓮を送った。
僕は最後の疑問を蓮に投げかけた。


「そういえば蓮、さっきのルンルの握り拳は何なの?」


「!!」


蓮は答えない。
蓮の方を見ると顔が赤かった。
今日何回目だって思ったよ。


「蓮?」


「知らないっ!」


そんな事は無い。
絶対知ってる反応だ。
蓮はスタスタ前を歩いて行く。


【あらん、竜司ちゃんたらウブなのね。
いいわアタシが教えてあげる。あれはね……】


でもこれを聞いた時、僕は顔が赤くなったよ。
そして何か鉄の匂いがすると思ったら鼻血も出てた。
エッチな事を考えると鼻血が出るってホントなんだなって思ったよ。


そんな僕の異常に気付いたのか蓮が振り向いて


「あぁっ……ルンルーーー!!」


と大声で叫んでたよ。
静かな夜にこだましたなあ。


「蓮! ちょちょちょっと……僕らにはまだ早いんじゃない?」


鼻を押さえた僕は取り乱し変な事を口走った。


「何言ってんのっ竜司君! そんなのスる訳ないじゃない!!」


【あらん、キメちゃわないのん。残念だわ】


【何の話だ?】


ガレアが入ってきた。
更にややこしくなるって思ったよ。



【あらガレアちゃん、要するに交尾よ交尾、あの二人に交尾しちゃえって言ったの】


【なに!? 交尾! 子作りか! 子作りだな!
竜司アイツと交尾するのか!!】


「やらないよ!!」


いい加減ガレアのこっち方面の話題に対する瞬発力はなんだって思ったよ。


【じゃあ、どうする?】


【あらん、ガレアちゃん野暮ねえ。
こうゆう時は二人っきりにさせるもんよ。じゃあ後は若い者に任せて……】


僕と蓮は同時に叫んだ。


「やらないって言ってるだろーーー!」


そんなこんなで駅に辿り着いた。


「じゃあ、竜司君、明日JR大阪駅で待ち合わせね」


「わかった」


「あと……ね?」


何やら連がモジモジしている。
顔も何となく赤い。


「竜司君の事……竜司って呼んでいい?……」


蓮はモジモジしながら俯き、上目使いで僕を見る。


「いいよ」


僕は快く了承したよ。
何故かって?それはその時の蓮が凄く可愛かったからさ。
カンナに萌えるガレアをどうこう言えないなって思ったよ。
だって僕はその蓮の仕草に萌えていたから。


「じゃあ竜司。また明日っ!」


手を振りながら帰っていく二人。


【シちゃえばいいのに……】


「うるさいっ」


ルンルの頭を小突く蓮を見送って僕は宿を探すことにした。
さあ、明日はデートだ。


###


「今日の話はここまで」


するとたつが例の握り拳を作ってみている。


「ねーパパ、これ何の意味があんの?」


ちょっと困った。
父親としてこのまま言ってしまって良いものだろうか。


「まだたつには早いね。続きはまた明日ね……」


おやすみなさい……



バタン

          

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