ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第十九話 竜司のスキル

「やあ、こんばんは昨日は、膝枕までだったね」


何となくこういう関連の事を息子に言うのは気恥ずかしい。


「うん」


じゃあ、今日も始めて行こうか。


###


蓮が真っ赤になっているのを見ながら、僕も赤くなっていたよ。


「ごめんなさい……取り乱しちゃって……」


「いや……」


この後の蓮とは沈黙が少し流れた。
お見合いってこんな感じなのかなって考えたよ。
そんな事を考えてたら


「あの……ご趣味は……?」


「え? ……ゲームと料理を嗜んでおります……」


僕がお見合いの事を考えてたから出た台詞なのに蓮は乗っかって来た。
乗っからなくてもいいのに。


「それは大変結構なお手前で……」


【ねえねえ、ガレアちゃん、あれってお見合いみたいじゃなぁーい?】


【何だお見合いって?】


ガレアがキョトン顔している。


【アナタお見合いも知らないのぅ。
お見合いってのはね。
親が決めた相手同士、お食事したり、お喋りしたりするのよ】


ルンルが満足げに答える。


【で、どうなんの?】


ガレアキョトン顔。


【それで相手同士気に入れば結婚するのよ】


結婚。
このキーワードを聞いたガレア目が変わった。


【結婚! 結婚か! おい竜司! おまえ! そいつと結婚するのか!?】


「ななな何言ってるんだよガレア! そんなのまだ早いよ!」


凛子さんの時とは違う。
同年代ならではの妙にリアルな感じが更に赤面を誘う。


「ルンルも茶化さないで」


蓮も顔をほんのり赤くしながらルンルを制止する。


「そう言えば蓮ってマザコン?」


先ほどの寝言について聞こうと思ったんだ。


「何で?」


「さっき寝言でママって言ってたから」


蓮の顔が更に赤くなった。


「聞かないでよ!」


照れ隠しにカバンで僕をボフボフ叩く。
そしてゆっくりと話し出した。


「私のママはね……考古学者なの……世界的権威を持っている人よ。
世界にもちょくちょく行ってる」


「凄い人なんだね」


「そうよ、最近もゲートが開く前に一度竜が来た事があるかもしれないって。
その証拠を発見したって聞いたわ」


蓮は誇らしげに語る。


「ママは私の誇りなの。
そして私もママの誇りでありたい……
それなのにママはちっとも認めてくれない」


「テストでいくら百点を取っても!
声楽コンクールで金賞を取った時もっ!」


蓮が徐々にヒートアップしていくのが解る。


「何でよ! なんで! 何で! ママは……!
私はこんなに頑張ってるのに……」


蓮は立ち上がり少し泣いていた。


「……蓮はまだマシだよ」


「え……?」


「どんな接し方であれ、お母さんが傍に居てくれて離れていても家に帰ってくるんだから」


「え……?」


蓮が驚いてる。


「僕のお母さんは戦医でね。
NPO団体の国境のない医師団って所の会長なんだって。
僕もここ七、八年顔も見ていない」


「そうなんだ……」


「ずっと海外だからね」


「手紙とか来ないの……?」


「お爺ちゃんがアイツは書き無精だからって言ってたよ。
後連絡が無いのは無事の証ともね」


「だから僕の母親はヘルパーさんってわけ」


少し自虐的に言った。


「一度日本も戦争になればお母さんが帰って来てくれるのかな?とか考えた事もあったよ」


蓮が黙っている。
僕は気を使って


「あ、ごめんね! こんな話をするつもりじゃなかったんだよ!」


「ううん、いいの。そんな話をしてくれた事が私は嬉しいわ」


蓮は優しい笑顔をこちらに向けた。
正直可愛いと思ったよ。


「そう言えば竜司君のスキルってどんなの?」


「僕のスキルは全方位オールレンジ
遠く離れた人や竜河岸たつがし、竜を三次元的に感知できるんだ」


「やってみせて」


「わかった……イメージ……イメージ……」


キタ、カンナちゃんを見つけたあの感じだ。
僕の視覚が変化したスキル発動のサインだ。
全方位オールレンジを使う時は半径百メートルぐらいの風景が全て見える。
建物や物質が全て緑色のワイヤーフレームで構成され、室内等も見る事が出来る。


ここで一つ疑問が出た。
目の前の蓮が反応しない。
カンナちゃんの時は見えたのに何故?
ここで終了。


「ぷはぁっ!」


僕は大きく息を吐いた。


「竜司君、大丈夫?」


蓮が心配そうに見つめている。


「おかしいんだ……蓮の姿が感知できない……」


「何か視るための条件があるのかしら」


僕は考えた。
カンナちゃんと蓮の違いを。
考えが煮詰まったよ。
知ってるだろ? 僕が長く考えるのが苦手だって。
とりあえず出した結論が今思いついた仮説を試していくことだった。


「蓮、ちょっと良い?」


僕は蓮の手を握った。


「ちょちょちょっと!? 竜司君!?」


蓮が赤面している。
そんなつもりじゃ無かったんだけどね。


「じゃあ、もう一度……イメージ……イメージ……」


キタ! 周りが緑色のワイヤーフレームになった。
すると今回は蓮の姿が見える。
カンナちゃんの時は気にしなかったが、見ると赤くなっている部分がある。
頬のあたりと胸のあたり。多分熱を帯びている所に反応するんだろう。
サーモグラフィのように。


「ぷはぁ……」


これは疲れが半端ない。
多分もう一度使ったら倒れる自信がある。
蓮をふいに見上げると赤面しながら胸元を隠している。


「ちょと竜司君どこ見てんのよっ」


そういえばさっき胸元をって考えたら、僕も見る見るうちに赤くなったよ。


「いいいいやっ! そうゆうつもりじゃなくてね!!」


「どうせペチャパイとか思ってるんでしょっ!!」


確かに凛子さんと比べたら少々物悲しいバストだと思ったよ。
そんな事を考えながらまた胸元を見たんだ。


「また見たー! ウェーン!」


蓮が泣き出した。
僕は焦った。
こんな状況生まれて初めてだったから。


「ごごごごめんっ!
そんなつもりじゃ無いし、そんなこと思ってないよっ!」


蓮は首を振って俯いている。
困った。そう思ったよ。
すると蓮から提案を持ちかけられた。


「じゃあ、何でも一つ言う事聞いてくれたら許したげる……」


「ええっ!? 何でも!?」


僕が了承に躊躇すると


「うぇーん!」


僕は腹を決めた。


「わかった!! わかったよ蓮。言う事聞くよ」


「ホント? じゃあねえ……」


この時思ったコイツ嘘泣きだったのかって、凛子さんと言い女性とは強かなものだ。
今回大阪で学んだ事はこれだね。


「じゃあ、明日USJに一緒に行く事! 私と!」


「USJ!?」


USJには行った事無かったから行きたかったんだけどね。
でもある事に気付いたんだ。


「これってデート……?」


僕は恐る恐る聞いてみた。すると蓮はあっけらかんと


「そうよ」


いやそうよったってなあ。
僕の戸惑いを見た蓮は


「何よ文句あんの? このクイーンからのデートのお誘いよ」


「わかったよ」


僕は了承した。


「あ、でも服が……」


デートに行くんだからやはりお洒落もしたい。
そう思ったからね。


「服ぐらい帰ったらあるじゃない」


その時気づいた。
蓮には教えてなかった。
今旅の途中で家出した事。
なにより引きこもりって事を。


「今、僕は旅の途中なんだ……」


「そうなんだ。ん~じゃあ、今お金持ってる?」


「三万円ほど」


「じゃあ、今から服を買いに行きましょ?
私とのデートなんだから張り込んでもらわないと」


まさか旅先で服を買う事になるなんてって思ったよ。
そんな僕を見た連は


「さあ、行きましょ?」


僕の手を取ってエスコートしてくれたよ。


###


「さあ、今日はここまで」


「パパ、蓮の事スキなの?」


「さあ、どうだろうね。ただその時はたぶん好きだったと思うよ」


「ヒューヒュー」


「こら茶化すな。続きはまた明日」


おやすみなさい……


バタン

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