ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第十六話 アステバンガレア参上

「やあ、こんばんは。さあ今日は誘拐事件からだったね。話をしよう」


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凛子さんはすぐに戻ってきたよ。
息も切れてて焦っていたなあ。
僕たちはまず状況を整理したよ。
結論としてカンナちゃんさえ戻ってくれば問題無しだと。


「でも私の能力じゃ……」


僕は閃いた。
僕の能力だったら解るかもしれないってね。


「凛子さん……僕がやってみます……」


正直自信がなかったよ。
使うの初めてだし、範囲外ならどうしようとか。
そもそもどう使うかもよく解らなかったからね。


僕はテラスまで出て目を閉じた。


「イメージ……イメージ」


僕は眼を空に放り投げるようなイメージをしたよ。
これが上手くいってねえ。


初めて全方位オールレンジを使った時は衝撃的だったよ。
僕から透明な球体が広がっていくって感じかな。
その球体に建物が入ると全て緑色のワイヤーフレーム見たいに変わるんだ。
その球体の中を視点が移動。
変な感じだよ。
立っているのに視点が上空ってのは。


「南の……倉庫がいっぱい並んでいる……奥から三番目の倉庫にカンナちゃんがいます」


ここで途切れた。
僕の集中力が切れたんだ。
なるほどこれはしんどい。
東雲しののめさんも頭バラバラになるわ。
正直そう思ったよ。


リビングに戻るともう凛子さんは地図を広げていた。


「奥から三番目……三番目……ここよ! 第十三倉庫!」


場所さえ解ればこっちのものだ。
こちらには竜二人もいるんだから。


「行きましょう! みんな!」


僕らはタクシーを呼び、さっそく乗り込んだ。
ちなみにガレアは自動で開くドアとかにわーきゃーなってたよ。
第十三倉庫の近くまで来て僕らは降りた。


「ここね……」


耳を立ててみるとカンナちゃんの鳴き声が聞こえた。
ここで間違いない。
するとガレアが


【なあなあ竜司。
これってアステバン第二十四話「子供達を助け出せ!」みたいじゃね?】


こいつは緊迫感が無い。
とりあえずガレアはほっといて凛子さんとどうするか打ち合わせた。


「凛子さん、どうします?」


「まずは裏口が無いか周りを探しましょう」


僕はその意見に同意し、周りを見て来ようとしたその時
大きい金属音が聞こえた。
ガレアが正面の扉を破ったんだ。
こいつやりやがったって思ったよ。


【そこまでだっ悪党!
かよわき子供を泣かせる奴は地球が許してもこのアステバンは許さないっ!】


「あのー……ガレアさん?」


第二十四話でもこんなシーンがあった。


「りり竜!?」


犯人は驚いている。
無理も無い。
急に竜がやってきて唸り声をあげているんだから。


【成敗! とうっ!】


ガレアと犯人の大立ち回りが始まった。
見ているとやはりガレアは強い。
見る見るうちに犯人は一人、また一人とのびていった。


すると犯人の一人が


「近づくなっ! 近づいたらこのガキの命はないぞ!」


脇にカンナを抱え、ナイフを突き立てる。


「うぇぇぇ! ママー!」


「カンナ!」


「近づくなって言ってんだろ!」


「ガレア!」


【あっちゃー、この展開二十四話まんまかよ】


「金は持って来たんだろうな!」


「ここにあるわ!」


凛子さんが鞄を相手に向けた。


「よぉーし、そこの女! そのかばんを持って来い!」


グースの事を言ってるようだった。


「グース……お願い」


【わかりました主】


かばんを持ってゆっくりと近づくグース。


「よぉーし! カバンをそこに置け!」


グースはゆっくりとカバンを置く


「時に人間よ……我が主のご子女に手を挙げるとどうなるのか解っているのか……?」


グースが日本語を話しだした。


「はぁっ!? 馬鹿かてめぇ! そんなの知るわけないっての!」


「そうか……なら……腐れ!」


グースの目が深い緑に輝いた。


「え!? へ!? うわぁぁぁあ!!」


みるみるうちに犯人のナイフを持っていた手がシオシオに干からびていった。
ナイフも錆びついて粉末になった。


「どうしちまったんだ! 俺の手! 俺の手ぇぇぇ!」


「泣いて命乞いをするなら良し……それとも命まで腐らせてやろうか……人間!!」


その緑色に光る眼を見た犯人は失神してしまった。
するとガレアが


【だから言っただろ? 怒らせると怖いって、アイツ竜も腐らせるんだぞ】


「納得」


「ママーー!!」


カンナは凛子さんの胸に飛びついた。
感動の再会だ。
僕もほっとしたよ。


「怖い思いをさせてごめんねカンナ」


カンナはずっと泣いていた。
落ち着く間グースに尋ねてみた。


「グース、君のあの力って?」


【癒しの力というのは時に毒となりうるものです。
私は人間本来の治癒能力を高め引き出すもの。
だが人間の細胞というのは再生回数が決まっています】


「なるほど……極度に再生回数を増やして腐らせたって事か」


【そうゆう事です。
再生回数をもコントロール出来るのはマザードラゴンだけです】


「じゃあ、不死って事?」


【それに近いかもしれませんね。
年齢は三万歳を超えていると聞いております】


僕は途方もない数字を出されてピンと来ない。


「じゃあ、竜司君帰りましょうか」


カンナも泣き止んだ様子。
帰り道カンナはガレアと手をつないでいた。


「ガレアちゃん、登場した時かっこよかったよ!
アステバンみたいだった!」


【だろ!?】


ガレアはとてつもなく嬉しそうだった。
帰り道凛子さんが


「竜司君。今日はありがとうね。
君が居なかったらカンナは今頃……」


「いえいえ、僕の力なんて大した事無いですよ」


言葉では謙遜していたけど僕は今日確かな手ごたえを感じた。
そして確信した。
この全方位オールレンジは使えると。


僕たちは帰宅し、凛子さんはすぐに夕食の支度をした。


「じゃあ、カンナすぐに作るから待っててね」


「はぁーい」


返事をするカンナの口には涎が光っていた。
そんなに美味しいのだろうか。
凛子さんのハンバーグは。


今日は色々あって疲れたよホント。
じきにハンバーグが完成。
五人で食卓を囲み食べた。


美味い。
何だこれ?
こんなの食べたことが無い。


【なんだこの肉うめぇな!】


ガレアが正直な感想を述べた。


「でしょー? ママのハンバーグは最高なんだからっ」


カンナも誇らしげだ。
しかし誇るに値する味だこれは。


「喜んでもらえて何よりだわ」


凛子さんも嬉しそうだ。
夕飯を終え、片付けを手伝っている時僕は凛子さんに告げた。


「凛子さん、明日僕らは失礼させてもらいます」


「そう……もうちょっと居ても良かったんだけどね」


「いえ、これ以上ご厚意に甘えるわけには」


「わかったわ、じゃあ行って来い! 少年!」


背中をバンと叩かれた。
片付けが終わり一息ついた。


【竜司様、魔力制御の練習は怠らないように……
あと私は側に居ませんので練習する時は周りの迷惑にならぬよう……】


「わかったよグース」


「さあ、明日も早いから寝ましょう」


そして僕は床についた。


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「さあ、今日の話はここまで」


「ガレア、かっこいい!」


「僕は当事者だけど、まあびっくりしたよ。
さあこれから色々な所に行くよ」


じゃあ、続きはまた明日……おやすみなさい……


バタン

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