ドラゴンフライ

ノベルバユーザー299213

第五話 ガレア野球を知る

「やあ、こんばんは。今まで暗い話ばっかりですまなかったね」


「パパ、可哀想」


「まあ、僕もそれなりに色々あったって事さ。
たつも他人の為に怒る人間になってね」


「うん!」


たつの返事は良い。さあ今日も始めていこう。


###


今日は出発の朝からだったね。


昨日の内にガレアと家を出る方法を話していたんだ。
コンビニに出ていくのはみんな知っているからね。
そのタイミングで僕は家を後にする決心をした。


兄の部屋から大型のリュックを持ち出した。
その中に着替えとこれも兄の部屋から持ち出した警棒、財布、懐中電灯、タオルなどなど色々詰めた。


誰にも言わないで出ようと思ったけど、兄には書置きを残したんだ。


内容は


「僕は家を出ます 探さないで下さい。 竜司」


って感じの簡素なものだった。


兄には定期的にメールを送るつもりだった。
いつも口座に振り込んでくれるのも兄だったし、それをあわよくば続けてほしいという打算的な気持ちもあったんだ。


時間になり僕は家を出た。
ドキドキがしばらく治まらなかったよ。


ガレアとは加古川駅の駅前で落ち合う予定だった。


【何で行くの?】


「電車……かな?」


【電サってあれだろ? 動くハコだろ?】


「電サじゃない電車」


【乗ってみたい!!】


そんな感じで駅前になったんだ。
ガレアとの付き合いはまだ浅いけどあのキラキラ目をされたら果たすまで聞かないのはわかってたからね。


後で失敗したなと思ってけど、ガレアは翼竜なんだから背中に乗って飛んでいけば良かったんだ。
その提案の流れで竜儀の式もガレアと出来たのにね。


そういえばガレアと外で会うのは初めてだなーとか考えながら駅前についた。
遠目からでもすぐに解った。
何か阪神帽被ったデカいトカゲがいる。
最初の感想がそれだった。


「やあ、ガレア」


【よっ竜司】


「……何その帽子……」


【バッカ竜司は物を知らねえなあ。熱中症対策だよ。対策】


明らかに帽子のサイズが小さすぎた。
それを見た僕は笑ってしまった。


「多分それ意味を成さないよ……」


【マジで!? 何で? なーなー竜司】


「普通は直射日光を避けるために被るんだけど、ガレアの場合……ホラ、はみ出てる」


【えっ?
これ被ったら何か知らないが熱中症にかからないとかそんなんじゃ無いの!?】


「人間は竜と比べてひ弱なんだよ魔力も無いし。
てゆうかガレア魔力が使えるんなら、何とかなるんじゃないの?」


【バッカ竜司、そんな事したら面白くねえじゃねえか……
なあ、竜司被ってちゃダメ?】


「いいんじゃない? 可愛いと思うよ」


そんな会話を済ませて、駅構内に入った。


【なあ竜司、ばかうけ買ってくれよ】


「ええと竜用は……こっちだよガレア。ばかうけはちゃんと買ってやるから」


竜用の切符を買うのは自動券売機は使えないんだ。
カウンターまで行かないといけない。


僕も初めてだったから緊張したよ。
カウンターで切符を買うのも初めてだし、竜用を買うのも初めてだし。
カチコチのまま


「ちょ……ちょう学生一枚! 竜一枚っ!」


すっごい恥ずかしかったよ。
後ろでニヤニヤしてるガレアも手伝ってね。
ばかうけを三袋買って電車に乗った。


何て言うのかな?
新しい物に触れた子供っていうのかな?
初乗り込みの時は酷かった。


【なあなあ! 竜司! 何だこの長いの! ずっとあるぞ!】


「それは椅子と言って腰掛けるものだよ」


【座ったら外見れねーじゃん。人間てやっぱバカ!】


とにかくガレアは終始テンションが高かった。
ちなみに竜語は普通の人には唸り声にしか聞こえないんだって。
多分乗り合わせた人達はすごく怖かったんじゃないかな。


【なあなあ! 何アレ!? ぶら下がってるの! 輪っかがいっぱい!
なんでみんな捕まってるの!?】


「あれはつり革と言って、捕まって無いと倒れちゃうんだ。電車は揺れるからね」


【へー! 姿勢制御も出来ないのか人間は! 不完全だな!ケタケタケタ】


周りの迷惑になると止めても良かったんだけど
知ってる人間なんか一人も居ないし、何より楽しかった。


ひとしきり楽しんで、ガレアと二人椅子に座った。
ガレアは流れる風景が珍しいらしく窓に向かい座った。
子供が良くやるポーズだ。


隣に子供が二人同じポーズで外を見ていた。
母親が不安そうにチラチラこっちを見ていて、じきにガレアと子供の間に割り込んできた。


不思議だったのが窓の外を眺めているガレアはそんなに喋らなく落ち着いていたんだ。
好奇心が落ち着いたんだろうと思ったよ。
そう思った矢先


【ん!?】


「ガレアどうしたの?」


【何かある! 竜司なんだアレ! ツタが絡まっている建物!】


「ああ、球場だよ。甲子園球場」


【何か人がいっぱい入っていくぞ。祭りか! 祭りなんだろ!?】


「違うよガレア。あれは中で野球をするんだよ」


【あいつら全員!? どんな行事だよ!】


「あーもーややこしいなあ。今はいっている人たちは観戦しに来たの」


【わかった! 闘技場だな! 中で戦うんだろ!】


「またややこしい質問を……戦うのはあってるんだけど、ガレアが考えてるような血生臭いものじゃないよ。
中でやってるのはスポーツだ」


【スポーツはわかるぜ! 走りの速さを競うやつだろ!】


「合ってるけど、野球は違うよ」


これを言い終わる頃にヤバいと思ったね。
ガレアの目がキラキラし出したんだ。


【なあ竜司……見たい! ヤキュー見たい!】


とりあえず大阪まで出ようと考えてたけど、計画変更。
甲子園で僕達は降りた。


何で降りたのかって?
逆らっても無駄な事は知ってたし、見せてあげたいとも思ったし、何より面白かったから。


###


「さあ、今日はここまで」


たつが凄く嬉しそうだ。野球が出てきたからだろう。


「パパッ! 今日の話すっごい面白かった!」


「そうか、それは良かった。少し野球がらみの話は続くからね」


「やったー」


じゃあ、そろそろ眠ろうか……おやすみなさい……また明日


バタン

          

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