ミコト様の眷属

二郎マコト

一方的な契約

「へぇ、やっぱ見えんのか。いつぶりかねぇ、アタシのこと、見える奴に会うの。」

  その女の子は、にやにやと笑い、お社の台の上に、我が物顔で腰掛けながら、こちらを見ている。
  普通に人が見たら非常識だと思いそうだ。

 「見えるって・・・まるで自分が人ならざるもの、みたいな言い方だな? てか、いつからそこにいたんだ?」

  俺がここに来た時は、誰もいなかったはずだ。
  この女の子は俺がお社からほんの一瞬目を離した隙に俺の後ろを通り過ぎ、お社の台座に座ったってことか?
  いや、流石にありえないだろ。

「あぁ、そもそもアタシは人ならざるものだ。それに、アタシはずっとここにいたぞ?」

「は?」

  ずっと?

  じゃあ俺がこのお社に来た時からか?
  俺が御神体に触れてるまで、そこには何も–––

  そこまで考えて、ふと、直感的に、本能的に、ある仮説が思い浮かんだ。
  御神体に触れた時に感じた、神秘的な感じ。
  もしかして、あれが––––––?
  馬鹿げてる–––––––けど、この状況を一番納得できる形で説明できる仮説。

「え、まさか、あなたって、」

  少し声がこわばる。
  だって、俺の仮説が正しいなら

「ミコト様?」

  この女の子は、神様だから。
  あの瞬間、俺はきっと、この神様が見えるようになったのだろう。

「おお、よく知ってたなぁ。いかにも。アタシの名前は尊ノ神。通称、ミコト様だ。よろしくな。大麦羅一、我が眷属よ。」

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「ん? ちょっと待って。なんで俺の名前知ってんの? てか、眷属って何。」
  オイ、 なんか凄い単語が出て来た気がするぞ。
  少し動揺しているのか、頭から湧いて出てきた疑問が次々と口に出てきてしまう。

 「おいおい、質問は1つずつ頼むぜ? まぁまずは、なんでアタシがお前の名前を知ってんのか、って質問に答えてやるよ。」

  ミコト様は困ったようにそう言うと、お社から飛び降りて、俺の投げかけた質問に答え始めた。

 「アタシはこれでも神様だからな。一応ここ一帯に住む住人のことについては把握してんだよ。」

  あぁなるほど、そう言うことか、そう言われてみると、納得できる、気がする。
  そりゃあここ一帯を治めてる神様なんだし、ここに住む住民全員の名前と顔を知っていても何らおかしくはないか。

「それにあれだろ、お前少し前によくここに来て遊んでたガキだろ?面影あるからすぐわかったわ。大きくなったなぁ、お前も。」

  ああ、やっぱりここに来てたの知ってたのか。ていうか、覚えていてくれたのか。
  ミコト様は懐かしむような目で俺を見る。そりゃあ昔からここにいる神様だし、俺より年上なのはわかっているけど、

  ものっ凄い違和感がある。

  見た目が俺と同い年か、少し下だから。
  でも、神様だからな、敬う必要はあるだろう。

「はぁ、それはわかりました。じゃあ・・・」

「おいおい、敬語使わなくてもいいぞ?あんまりかしこまられても、少しむず痒いからな。」

  あれ、いいの? なんか意外だ。あんまりそういうの気にしない性格なのか。神様ってそういう事を気にするものだとおもってたから。いや、それは偏見かな?

  なんか大胆というか、大雑把というような感じを、話していて感じた。
  神様らしくない神様だなぁ、とこの時はその程度にしか思わなかった。
  ここから、そのイメージは一気に加速する。

「そっか、じゃあそうする。」

「よし、じゃあ次はアタシがお前のことを眷属、って言ったことだな。お前、さっきアタシの御神体に触ったろ?」


 

「そん時、お前はアタシの眷属、っつー契約みたいなもんが結ばれたのさ。」

「はぁっ!?」

  いきなりの急展開。思わず変な声が出てしまった。

  眷属!? あれだよな? 要するに俺とミコト様は今主従関係ってことだよな!? 俺なんも聞いてねーんだけど? ねぇ、俺の意思は!?

「アタシが見えることが眷属であることの証明さ。てか、あの御神体、そこに置いたのアタシなんだけどね。」

「でしょうね!!」

  あーやっぱりそうだったんですかい! 薄々感づいてはいたわ!
  だって明らかに不自然でしたもんあれ! あんなところにポツンと御神体が落っこってるなんてさあ! 

「待て待て待って! 一旦そんな契約無効だ!俺同意した覚えない!」

 「無理だな。この契約は自然的なモノだ。つまり、同意とは関係なしに、お前が御神体に触れた瞬間に結ばれたモノって訳だ。それにな、これは一度結ばれたからにゃよっぽどのことがねーと無くなんねーモノなんだよ。」

  つまり、どうにもならないってことっすか?
  なんか詐欺にでもあった気分だ。不服だ! 不条理だ! くっそおお!

「でも、ただ触れただけじゃ神の眷属になるなんてことはないんだぜ? そいつにそれなりの素質がないと、つまり、アタシたちと同じような力がないとなれないんだ。」

  それってつまり、俺には神の眷属になるだけの素質、もとい力があったということだろうか。

  まぁ正直、そんなファンタジーみたいな展開、俺は大好きだ。そんな力があったなんて言われたら嬉しい。

「良かったじゃねぇか。お前にそんな力があってよ」

 「こんな状況でなければ、もっと素直に喜べたわ。」

  俺が苦々しくそう言うとミコト様はけらけらと快活に笑った。
  なんか気にくわないな。すっげー相手のペースに乗せられてる気がする。

「ま、そー言うなって。それに、お前に眷属になってもらわなきゃアタシが困る。」

  少しミコト様は神妙な顔つきになる。
  困る?どんな理由なんだ?眷属がいなきゃいけない理由って一体・・・

「供物を持ってくるやつがいねーからな。」

「思ったよりシンプルな理由だった!」

  いや、わかるよ?供物はいわば神様のご飯みたいなものだ。確かになくちゃ困るだろう。
  でも、肩透かしを食らった気分なのだ。もっと深刻な理由があるのかと思ってた。
「まぁもちろん他にも理由はあんだけど」

「あんのかーい」

  もう突っ込む気力がなくなって来た。

  うん、なんか、変わった人相手にしてるみたいだわ。神様って感じしねぇなこの神様。
 
「それで、もう1つの理由はな・・・」

 さっきよりも、神妙な顔持ちだ。今度こそ、本当に、本気の雰囲気だ。

「この町の妖退治を、任されてもらいたいんだ」

「ミコト様の眷属」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く