ミコト様の眷属

二郎マコト

プロローグ

  俺の住む町では、ある言い伝えがある。

  町の外れの雑木林の中に、古びたお社がある。
  そこには昔、ミコト様、という女性の神さまが住んでいたらしい。
 ミコト様は、疫病や災害などをもたらす妖や悪霊から町を守る神様として、この地域の住民に信じられ、祀られ、崇められてきた。

  しかし、時が経つにつれ、徐々に信仰が薄れていき、今じゃ、雑木林の中に社がポンとあるだけ、知っている人は知っている言い伝え程度となってしまった。
  悲しいかな、どんなに名高い神様でも時の流れには勝てなかったのである。

  俺も、さしてそんな言い伝えは信じていなかった––––––というより、只の言い伝えだと思って神様だの悪霊だのはいない、と思っていた。

 の、だが、信じざるを得なくなった。
  神様も、悪霊もいると、目の前で証明されてしまったのだ。

 なぜなら、今俺の目の前には、
「ったくぅ、なんで茶なんだよ! 酒もってこい酒ぇ!」

「いや持ってこれるわけないやろ未成年だし。」

  おおよそ女性とは思えない口調で、

「ま、しゅーくりーむ持ってきただけまだ良しとしてやっか。」

「あのー、もうちょい綺麗に食べらんねえのか?女の子なんだし。」
  豪快に俺の持ってきたシュークリームを頬張る、女の神様、

  ミコト様がいるのだから。

  いやそんなことは今となっちゃどうでもいいんだ(絶対よくない)。それよりもこの人さっきから俺の忠告ことごとく無視しやがる! くそっ!

  てか肝心なところに突っ込ませてほしい。

  てか突っ込ませろ。

「ミコトさま? 少しいいか?」

「ん? んだよ。」

「まず服着ろお前」
  今ミコトさまは隠すとこだけ隠している、といった感じである。
  この神様、見た目だけは物凄くいい。身体は男子の目を釘付けにさせるほど発達してるし、日焼けしたような肌が更に健康らしさを際立たせている。

「んだよ? 見たくねーのか? 女子のこんな姿見れる機会なんてそうそうねーぞ?」

「うるせえこっちの心の問題だ!!」

「ははっ。そんなんじゃアタシの眷属なんて、やってらんねーぞ?」

 でも、性格はこの通り。大胆、大雑把で破天荒。ああそうとも正直やってらんないよ。
  こんな奴が神様なんて俺は信じたくない。

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