果ては未来を担う者

あおいろ

零話・ここは何処か?

 初投稿です。
 練習も兼ねて頑張って書いていくのでよろしくお願いします!

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 俺、薙切忠勝ナキリタダカツは世で言うバイト戦士だ。
 友達の誘いは大体、バイトがあるから無理と断っている為にいつからかそんな風に呼ばれるようになった。
 まあ、そう呼ばれるのも仕方がないくらいに付き合いが悪い自信がある。
 なんたって今日も今日とて誘いを断って、バイトに勤しんでいるのだから。

「先輩、ありそうっすかー?」

 下から聞こえる聞きなれた声。先月から働いているバイト先の後輩だ。
 今はその後輩と二人、店長に頼まれた物を物置から探すように言われて一緒に探しているところだった。
 後輩には脚立を支えてもらい俺が棚の上を探している。

「いやー、ないなー。本当にあんのかー?」
「店長はあるって言ってたっすけどそれもほんとにあるのかなんて微妙なとこっすよねー」
「だよなー。あの人、適当だし」

 雑談しつつ棚の上に積まれた物を退かして目当ての物を探す。もう探し始めて三十分でようやくあと一つという所まで来ていたがどうしてもあと一つが見当たらない。
 いい加減、飽き飽きとしているのは俺も後輩も同じで注意散漫になっていた。
 今思えばそれもこの後に起こる事件の原因だったのかもしれない。
 プルルルルルル。
 聞き慣れた店の電話の着信音。
 取られる様子はない。

「あれ? 誰もいないんすかね?」
「店長しかいなかったしどうせ煙草でも吸いに行ってんだろ」

 まだ店は準備中の為に今いるのは店長と俺、そして後輩の三人。
 つまり店長が煙草を吸いに行けば当然ながら店の方には誰もいないことになる。

「相変わらずっすよねー、あの人も。ちょっと行ってくるっす」
「ちゃんと対応出来るか~?」
「当然っすよ。んじゃ、ちょっと行ってくるっすね」
「悪い、任せる」
「ほーい」

 後輩が脚立から手を離して店へと戻っていく。
 待っていてもいいが早く開店準備を進めたいのでこのまま作業を続けることにした。

「あ、これ重いな」

 中身が詰まっているであろう箱を持ち上げようとしたその時、

「あっ」

 ヤバいと思った頃にもう既に手遅れだった。
 踏ん張った足が滑り、気付けばひっくり返した箱の中身と天井が目に入る。
 浮遊感が身体を襲う。バランスを立て直そうにも今更遅い。あとは重力に身を任せるしかない。
 俺は背中を強打するのを覚悟して目を閉じた。

「あれ?」

 いつまでも襲ってこない痛み。
 だが不思議なことに背中には何かに触れているような感触。
 首や手が触れている部分だけで判断するならまるで草原にでも寝転がっているようだ。
 だがそんなわけが無い。物置は硬いコンクリートの床だった。少なくとも草なんて生えてはいない。
 わけも分からず状況を確認しようと目を開く。
 そこには満点の星空が広がっていた。

「………は?」

 思わず間抜けた声が口から漏れ出た。
 綺麗な夜空ではあるがそんなことは今はどうでもいい。
 置かれた状況がわけも分からない。
 自分の知る風景を探し身体を起こして周りを見る。
 だがそこには

「何処だよ、マジで」

 日本では北海道でしか見れないような草原が広がっていた。
 求めていた迫っ苦しい物置は何処かへと消えていた。
 あるのはひたすらに草、草、草。
 俺がいたのは東京であり、こんな光景は有り得ない。
 月明かりしかないので確かではないけどずっと草原が広がっているだろうと思える程に何も無かった。
 流石に木は生えていたりはするが凹凸と言えばその程度で自然のしかない。
 ここが何処かなんて分かるようなものは何も無く検討もつかない。
 うん、これはあれだ。夢だ。
 そう思うしかない。そう思いたい。
 だけど肌を撫でる吹き抜ける風、土と草の混ざった独特の匂い、手に触れる草の感触、全てが夢というにはあまりにもリアル過ぎた。
 どれだけ頭を回しても理解が出来ない。
 だが一つだけあるとするならば脚立から落下して打ちどころが悪くて気絶をしたのかもしれない。
 それしかない。いや、それだろう。ならどうするか?

「寝るか」

 意味の分からない事態に俺は思考も行動も放棄するのだった。
 これが始まり。何でもない普通の日常が終わった日。
 俺、薙切忠勝の新生活の幕開けである。

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 次回、襲われます。

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