No title

(´・ω・`)

61.待合室にて

 決闘大会4日目。
10分後に開催される決勝戦に備えて、俺たちは待合室でだらけていた。

「いいなぁレイスだけ…俺も出たかったのになぁ…観るだけとかつまらん…」
「カイが負けなかったらよかっただけの話じゃんか」
「いやだって勝てると思ってたもん…」
「それは俺も思ってたけど」
「だろぉ?」
「だろ?ってお前…」

置いてあった超ふかふかソファーの上で、ニビとカイの話を聞き流す。
まぁ確かにカイが負けるのは俺もビックリした。
弱くはない筈なんだけどな俺達…。

「………ところで」

彼らから視線を逸らし、部屋の片隅でライとランと遊ぶ人影に声をかける。

「何してんのブラギさん」
「んー?」

決勝戦で闘うことになっている彼は、聞いているのかいないのか、生返事を返した。
あれ?俺ら本当に闘うんだよな?

「だってあんな広い部屋に一人なんて寂しいじゃないか!大丈夫!決勝戦ではちゃんと闘うから!」

そういう問題でもない気がするんだけどなぁ…。
まぁいいか…?

「でも確かに俺もビックリした。カイくんが負けるとか思ってなかったから」
「あぁ確かに……」
「何者なんだろうね、彼」

ブラギさんの言う彼とは、俺とブラギさんと、もう一人の決勝戦進出者のことだ。
ニビに勝ち、カイすらも下した男。

「アダラ……。初出場なんでしょ?騎士団の人達も何人か負けてたよな」
「そう。うちの騎士団だって決して弱い訳ではないと思うんだけどねぇ?」

ウルクラグナの騎士は当然、そう弱くはない。
寧ろ強者の部類に入るだろう。
その騎士達がたった一人の青年に後れを取った。
俺とブラギさんは当たってないから実力が分からないが、相当な手練である証明はこれで十分だ。

「まぁレイスまで負けるってことはないだろ。大丈夫だぞー気ぃ張ってけよぉ」
「覇気のない応援どうもありがとう」

いつになくキリッとした顔で頑張れとポーズをとる彼を適当に流す。
そんな時、どこまでも緩い会話も終わりを迎えるようで、放送機器から機械音が流れた。

『決勝戦開始3分前となりました。選手の皆様は試合会場まで移動して下さい。繰り返します。決勝戦開始3分前となりました。選手の皆様はーーー』

「だってさ。行こうブラギさん」
「うん」

離れ難いソファーから立ち上がり、出口に向かって歩き出す。
部屋から出る前に、観客席待機組が各々声をかけてくれた。

「ブラギさんでもルミスでも負かしてこいよレイス!」
「生温い闘い方してたら俺が叫んでやるよ。騎士団長の婚約者様?」
「頑張ってねレイスー!」
「がんばれー!」

明らかに煽りの言葉が入っていたが、それすらもどこか嬉しいように感じた。
苦笑いを浮かべ、ドアノブに手をかける。

「おう。ありがとな」

それだけ言って、俺は静かに部屋を出た。

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