No title

(´・ω・`)

54.開会式

 4日後。
決闘大会初日。

国のおよそ中心部に位置する広場で行われた開会式は、僅か5分足らずで終わった。
国王挨拶は「みんな頑張ってねー」で終わり、騎士団長兼昨年の優勝者であるルミスの挨拶も「今年も頑張ります!」で終わってしまったからだ。
大会の説明だって「ランダムで決まる相手と戦って勝ちまくれ!もちろん殺しは禁止な!最終的に残った3人とルミス様で総当りして勝ったやつが優勝者!」だった。

「はーいじゃあ最初の対戦者は誰かな…」
受付で渡した名前を書いたカードが入った箱を、フォルセティアがごそごそと漁る。
「これにしよっと。…はい!エントリーナンバー41と……」

エントリーナンバーと名前を呼ばれ、人集りから該当者が2人出てくる。
筋肉の擬人化みたいな2人だった。

「場合によっちゃ騎士団員が止めに入るけどそれ以外は自由!戦闘不能になるか降参で勝敗は決まるからな!じゃあいくぞ、レディ……ファイッ!」

観客の声援と対戦者の熱気の中、進行役の言葉で闘いが始まる。
俺達はというと、広場周辺の屋根上で誰にも邪魔されずのんびり観戦していた。

「屋根上最強説…」
「人もいないし風は気持ちいい…」
「上からだから動きがよく見える…」
「でもこれいいの?」
「不法侵入?」
「「………」」

ライとランから正論パンチを喰らい、笑顔で無言を貫く。
2人は顔を見合わせ傾げた後、再び広場に視線を戻してくれた。
まぁ…屋根上なんて家主も来ないだろうしご容赦願おう。

「にしても結構な額の賞金でてたなー」

俺達の心中を知ってか知らずか、ニビが話題を変えてきた。
今度から気遣いのできる男ニビと呼ぼう。呼ばないけど。

「そ、そうだな。もし優勝したらどうする?百万円もあったら色々できそうだけど」
「僕あれがいい!おいしいやつ!」
「私も!おいしいやつ!」

2人が目を輝かせて「おいしいやつ!」と連呼する。
彼らのいう「おいしいやつ」とはベビーカステラの事だ。
先日街の店でキャラクターの形をしたカステラを買ってあげてからというもの、彼らはそれを酷く気に入ったようだった。

「いや…ベビーカステラ美味いけどさ…さすがに百万分はえげつねぇだろ?」
「大丈夫!おいしいやつだから!」
「うん!大丈夫!」

曇りなき眼でそう断言する2人にカイが苦笑する。
彼らのベビーカステラに対する絶対的な信頼は何なんだろうか?

「その前にルミスに勝てるかどうかだな。万全のあいつとはまだ戦った事ないし……俺あいつに勝てるかなぁ?」
「それなー。まぁそれよりまずはルミスと戦える3人に入らなきゃなー」
「俺は自分の実力がどんなもんか単純に試してみたい」

各々に目標をぼやく。
ウルクラグナ騎士団長ルミス…。
俺には一生無関係な有名人ぐらいにしか思ってなかったが、まさか剣を交えるかもしれない日がやってくるとはな…。

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