No title
44.目覚め
ウルクラグナで一番太陽に近い場所。
俺がルミスを連れて行ったのは、数分前までいた城の屋根の上だった。
結局戻ってきてしまったが致し方あるまい。
ここ以外の場所ではどうしても一般人がいるのだから。
「着いたぞー。何度も何度も持ち上げて悪いなルミス」
「あ、いえ…私こそ…すみません…」
顔を紅潮させ、消え入りそうな声で彼女が俯く。
やはりそう何度も抱きかかえるものではないか。
「ん?」
ルミスの反応を面白がると同時に反省していた時、下の方から声が聞こえてきた。
興味本位で聞き耳を立ててみる。
「フォルセティア様。次この資料お願いしますね」
「えっ!そんなに!?」
「はい」
「多すぎないか?過労死するぞ俺?」
「仕方ないでしょう?これでも他国に比べれば貿易関係もないので少ない方なんです。私も手伝いますから。ほら、やりますよ」
「面倒臭い面白くない鍛錬したい…」
「…………」
「分かってるって!やるから!そんな目で見ないで!」
時間にしてわずか十数秒。
何だこの雷にでも打たれたような衝撃は。途中から立場逆転してるじゃないか。しっかりしろ国王だろう。
俺が一人でフォルセティアを心配していると、隣でルミスが耳打ちしてきた。
どうやら切り替えが早いらしく、顔と表情は既に元通りになっている。
「驚きました?フォルセティア様って普段はあんな感じなんです。国外の人達と関わる時だけ国の質を考えて口調と雰囲気を変えてるみたいで」
「じゃあみんな大変なんだな」
「大変?まさか!」
俺の問いかけに彼女はキョトンとした顔で答えた。
「フォルセティア様は確かにあんな感じですけど、自分の仕事は絶対他の人にはさせません。私達の仕事を助けて下さる事はありますが…」
フォルセティアについて語る時のルミスは、終始嬉しそうな顔を浮かべていた。
忠誠心が強いというより、彼の元で働くことに幸せを感じている顔だ。
「それに、この国の民と私たち騎士団を誰よりも考えてくださっているのがあの方なんです」
「……そっか」
一筋の風が彼女の銀髪を揺らす。
下からは、彼女の言う通り頑なに仕事をさせたがらない国王の声があった。
責任感はあるのだろう。「鍛錬したい」という声がちょくちょく聞こえはするが。
「レーイスー!!」
そんな時更に下から聞こえてきた、空間をぶち壊す懐かしい声。
安堵の表情で俺は地上を見下ろす。
俺の目に映ったのは、膝に手をついて肩で息をするニビと、自分の足で立ってこちらを見上げるカイの姿。
「行こうかルミス。あいつらが待ってる」
「はい!」
躊躇なく飛び降りる。
着地後、カイは困ったように頬をかきながら俺たちに言った。
「おはよう。なんか随分寝てたみたいでごめんな」
俺がルミスを連れて行ったのは、数分前までいた城の屋根の上だった。
結局戻ってきてしまったが致し方あるまい。
ここ以外の場所ではどうしても一般人がいるのだから。
「着いたぞー。何度も何度も持ち上げて悪いなルミス」
「あ、いえ…私こそ…すみません…」
顔を紅潮させ、消え入りそうな声で彼女が俯く。
やはりそう何度も抱きかかえるものではないか。
「ん?」
ルミスの反応を面白がると同時に反省していた時、下の方から声が聞こえてきた。
興味本位で聞き耳を立ててみる。
「フォルセティア様。次この資料お願いしますね」
「えっ!そんなに!?」
「はい」
「多すぎないか?過労死するぞ俺?」
「仕方ないでしょう?これでも他国に比べれば貿易関係もないので少ない方なんです。私も手伝いますから。ほら、やりますよ」
「面倒臭い面白くない鍛錬したい…」
「…………」
「分かってるって!やるから!そんな目で見ないで!」
時間にしてわずか十数秒。
何だこの雷にでも打たれたような衝撃は。途中から立場逆転してるじゃないか。しっかりしろ国王だろう。
俺が一人でフォルセティアを心配していると、隣でルミスが耳打ちしてきた。
どうやら切り替えが早いらしく、顔と表情は既に元通りになっている。
「驚きました?フォルセティア様って普段はあんな感じなんです。国外の人達と関わる時だけ国の質を考えて口調と雰囲気を変えてるみたいで」
「じゃあみんな大変なんだな」
「大変?まさか!」
俺の問いかけに彼女はキョトンとした顔で答えた。
「フォルセティア様は確かにあんな感じですけど、自分の仕事は絶対他の人にはさせません。私達の仕事を助けて下さる事はありますが…」
フォルセティアについて語る時のルミスは、終始嬉しそうな顔を浮かべていた。
忠誠心が強いというより、彼の元で働くことに幸せを感じている顔だ。
「それに、この国の民と私たち騎士団を誰よりも考えてくださっているのがあの方なんです」
「……そっか」
一筋の風が彼女の銀髪を揺らす。
下からは、彼女の言う通り頑なに仕事をさせたがらない国王の声があった。
責任感はあるのだろう。「鍛錬したい」という声がちょくちょく聞こえはするが。
「レーイスー!!」
そんな時更に下から聞こえてきた、空間をぶち壊す懐かしい声。
安堵の表情で俺は地上を見下ろす。
俺の目に映ったのは、膝に手をついて肩で息をするニビと、自分の足で立ってこちらを見上げるカイの姿。
「行こうかルミス。あいつらが待ってる」
「はい!」
躊躇なく飛び降りる。
着地後、カイは困ったように頬をかきながら俺たちに言った。
「おはよう。なんか随分寝てたみたいでごめんな」
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