No title

(´・ω・`)

6.華の裏

「俺...もう一生分のラーメン食べた...うっ...」
「俺も...」

結果として俺達は全て食べきった。
追加料金も払うことなく、無事に店を出ることができた。
そして今、二人揃って口を押さえながら必死に歩いている。

「レイス…とりあえず運動しよう?久しぶりに手合わせでもしないか…?」
「・・・そうだな。そうしよう」
人と料理の匂いが鬱陶しい道を抜けて、俺達は人気のない路地裏を目指して歩きだした。







「ちょっ、タイムタイム!レイスさん待ってお願い!」


怒涛の勢いで繰り広げられていた攻防がその一言で止まる。
「なんだよもうギブか?」
「レイスがっ…強すぎるっ……だけだろ…?」
肩で息をしながら必死に抗議してきた。

「まぁ確かにそうかもなー」
「俺に1回も攻撃当てられないとかお前もまだまだだな」という顔でカイを見る。
案の定そっぽを向いて黙り込んだ。
子供かよ...。

「運動はこんなもんでいいよな?じゃあ早速だけど情報整理しようか」
「......わかった」

お、返事があった。
あんまり本気で怒ってないのかな?

俺はスタスタと先を歩く。
カイの射殺すような視線を後ろから感じた。常人のことも考えろとでも言いたいんだろう。
(やっぱ怒ってるのは怒ってるのな...)
それでも俺は涼しい顔で歩き続ける。
数秒後には、諦めて後を追ってくる足音が聞こえてきた。



カイの呼吸も整い、俺達はようやく情報整理に移った。
「ここはデイディスって国らしい。国民の約8割の才能が料理で、俺らの国が’’貿易の国’’ならここは’’料理の国’’ってとこだな」

デイディスか。
にしても8割が料理の才能とは随分な偏りだな...。
残りの2割は経営とかか?店多かったし。

「ウチの国と貿易はしてるけど、馬鹿王の言ってた得意先じゃなさそうだ。物資調達に困ってる感じはないし、この辺りに魔王的な生物はいないよ」

コイツ今思いっきり’’馬鹿王’’って言ったぞ馬鹿王って。
最初に言い出した俺が言うのもなんだが、そんなこと言ってもいいのか?

「あとここは・・・」

会話を中断させたカイの視線の先を見る。
そこには、俺達よりも年下であろう少年が倒れていた。

「徹底した実力主義国家だそうだ。腕が立たなきゃ子供だろうが年寄りだろうがあらゆる面で差別を受ける。食べ物も住居もなく、そのまま野垂れ死ぬ奴は少なくないんだってよ」

そう告げるマリンブルーの瞳には、静かな怒りと哀愁の色が浮かんでいた。



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