転生したら防御チートを手に入れたのでので死亡予定の悪役令嬢を守ってみせる
エピローグ~結婚式~
――アルとセリィの結婚式(10/15)
  アル、セリィ、15歳
  俺達の結婚式は俺の屋敷で行うことにした。
  領民もほぼ全員来たので、始まる前からかなり賑やかだった。
  ましてや酒を飲み出している者もいた。
「ありゃなんだ!?」
  庭で始まるのを待っていた人々が一斉に空を見上げる。
  俺もそちらを見るとペガサス(?)に乗っている人影が見えた。
  それはゆっくりと俺たちの方へ近づいてくる。
  なんだ?  殴り込みか?
「よぉ、アル!  祝いに来てやったぞ!」
  ペガサスに乗ってきたのはなんと国王陛下だったのだ。
  は?  陛下直々?  護衛とかは?
「陛下、来て頂けるなんて嬉しい限りです。しかしお一人ですか?」
「そんなよそよそしい態度はやめろ。今はプライベートで来てるんだから護衛もいないし、俺はただのおっさんだ」
  ただのおっさんって……
  現に皆静まり返ってるよ……
「父さん!  今日は来れないって言ってたよね!?  みんな驚いてるじゃないか!」
  レインは歩いてきて陛下に詰め寄る。
  いいぞ、もっと言えー!
「あぁ……サプライズで行こうと思って……」
  陛下はクネクネしていじけてる。
  全然可愛くない、いやむしろきっ……オホン!
「はぁ……なら仕方ないね。サプライズなら許すよ」
  おぉい!?  この親子の中ではサプライズは万能なのか!?
  まぁいい、祝ってくれるなら嬉しい限りだ。
「静粛に!  これより、アルバート・シュタインとセリーナ・エリアスの結婚式を執り行う!」
  進行を務めるのは牙狼の爪のリーダーゲイルだ。
  え?  誰だって?
  あの最初の迷宮で危ないところを助けてくれたあの人だよ?
「それでは、新郎の入場です!」
  うん、あの人の声よく通るから司会に選んで正解だったわ。
  俺はネクタイを締め直して登場する。
  俺が出た途端、わぁっ、と声が上がる。
  顔の赤い者が多い。
  よく見たら陛下が父と肩を組んで酒を飲んでいる。
  いつの間に仲良くなってんだよ。
  俺は神父の前に立ち、入口の方を向く。
「続きまして新婦の入場です!」
  扉が開いて見えたのは純白のウエディングドレスに身を包んだセリィだ。その隣にはボレアスお父様。
  セリィが入場した途端、会場が一斉に静まり返る。
  セリィの美しさに全員見惚れている。
  セリィはいつもは化粧をしないのだが今日はプロを呼んで化粧をしているのでどこか色っぽく感じる。
「……綺麗だよ」
  そう言うとセリィは何も言わず、少しふふっと笑って下を向いた。
  それから神父が病める時も健やかなる時も……やらなんやらと言っているが正直聞こえない。
  隣にいるセリィの事で頭がいっぱいだ。
「誓いますか?」
  おっと俺が答えなくちゃな。
  危ない危ない、スルーするところだった。
「はい」
「では新婦、誓いますか?」
「はい」
「それでは誓いのキスを!」
  ん?  こんなの予定には……?
  あ、あの神父ニヤニヤしてやがる。
  くっそぉ!  からかいやがって、こりゃ減給だな。
「えっと……」
  俺は人前ではしない、と言おうと振り向くが全員が期待の目でこちらを見ている。
  助けを求めるようにセリィの方を向くともう目を閉じて準備万端だった。
  するしかないか……
  俺はセリィの両肩を掴む。
「おおっ……!」
  観客席から声が上がる。
  そんなに反応しないでくれ……
  俺は覚悟を決め、セリィにキスをする。
「おおー!!」
「ヒューヒュー!!」
  キスをした途端に観客席から歓声が上がる。
  中には悔しそうな顔をして嬉しそうな顔をしている奴に金を渡しているやつがいた。
  あいつら、俺がキスするかしないかで賭けてやがったな!?
  後でぶっ飛ばす。
「それでは披露宴の方に移りたいと思いますので皆様、会場の方へ移動をお願いします」
  司会の指示に従い、参加者がゾロゾロとチャペルを出ていく。
  ちなみにこのチャペルは結婚式の為に作らせた。
  この結婚式が終わったら民間企業に譲って領民が使えるようにするつもりだ。
  披露宴ではまず新郎の挨拶ということで俺がスピーチをした。
  これは緊張してガッチガチだったが難なく終わった。
  新婦の感謝の言葉みたいな奴はもう凄かった。
  セリィのスピーチで両親どころか会場にいた全員が家族を思って涙を流していた。
  恐るべしセリィのスピーチ。
「それでは友人代表としてフロウさん、お願いします」
  フロウは俺が友人代表として出てくれとお願いした。
  フロウは王国復興が終わった後、大工になって王国で修行していた。
  フロウは慣れないスーツに身を包み、舞台を登る。
  ゆっくりと礼をしてスピーチを始める。
「アルバート・シュタインさん、セリーナ・エリアスさん、ご結婚おめでとうございます。この言い方は慣れないのでいつもの呼び方で呼ばせていただきます。
  アル、セリィ、二人はいつも仲良しでよくお互いのことを分かっていたと思います。
  そんな二人が結婚するのは運命なんじゃないかと俺は思ってます。
  アル、セリィはアルにとって一番お似合いな女性だから絶対に幸せにしてあげてください。
  セリィ、アルは無理して突っ走ってしまう時があるのでちゃんと支えてあげてください。
  それと、この日のために皆で練習してきた事があるのでお祝いとして披露させてください。
  みんな、行くぞ!!」
  フロウが空を見上げて掛け声を上げる。
  すると、空から何かの大群が迫ってくる。
  あれは……人!?
  空から降ってきたのは頑丈な鎧を着た王国騎士団だったのだ。
  でもなんで空から?
「風の加護!」
  地上から声が聞こえたのでそちらを向くとナージャが風魔法を騎士団に付与していっている。
  風の加護を受けた騎士はゆっくりと着地する。
「勇者レインが祝いに来たぜ!」
  レインが正面に立ち、宣言すると観客席から歓声が上がる。
  みんなノリ良いな……
「用意!  さん、はいっ!」
  用意の合図で最後列の騎士は楽器を取り出し、レインの指揮で演奏を始める。
  その演奏に合わせて騎士達が踊りだし、フロウも後から合流してレインとフロウがセンターで踊っている。
「結婚、おめでとう!!」
  最後は空に魔法が放たれ、花火のように空を彩り、余興が終わる。
  騎士団の人達はあんな重装備なのにキレッキレのダンスを見せてくれた。
  とても素晴らしかった、本当に。
  それからは豪華な食事を立食形式で振舞った。
  今日は領内から大勢の料理人を呼んであるので量もかなりある。
「よっしゃぁ!  カンパーイ!」
  食事が始まった途端に酒を手に取り乾杯する男達。
  お前らずっと前から飲んでただろ。
「アル、みんな楽しんでくれてよかったわね」
  セリィはウエディングドレスから少しオシャレなドレスに着替えていた。
  露出が……新婦がそんなんでいいのか、このやろー。
  ありがとうございます。
「う、うん。何かお酒飲みすぎてて心配な人もいるけどね……」
  特に陛下とかお父さんとかボレアスお父様とか。
  あの3人結婚式で飲み比べしてやがる。
「それはまだいいとして何か忘れてる気がするんだよなぁ……」
  何かこう、誰かの為に必要な事……
  何だっけ……?
「何か忘れてる事?  この結婚式のやり方も知らないのにわからないわよ」
  その時、ガッシャーンと大きな音が聞こえた。
「申し訳ございません!  植木鉢を割ってしまいました!  中の花もこのように……」
  顔を真っ青にした青年が植木鉢を割ったと謝りに来た。
  結婚式に土下座は止めてくれ……
  ん?  花……花束……
「あ!!  思い出した!」
「えっと……何をでしょうか……?」
「ブーケトスだよ!  思い出させてくれてありがとう!」
  俺は植木鉢を割った青年の手を握りお礼を言って用意しておいた花束を持ってくる。
「はい、注目ー!  これからブーケトスをします!」
「ブーケトス?  それは何ですか?」
「新婦が投げたこのブーケと呼ばれる花束をキャッチ出来た人は結婚出来る、っていうちょっとしたジンクスさ!  参加出来るのは未婚の女性だけだよ!  さぁ、集まってー!」
  結婚出来る、という言葉に反応して大勢の女性が集まってくる。その中にはナージャもいた。
  頑張れ、ちゃんとキャッチするんだぞ……!
「ほら、セリィ。目をつむって投げてね。平等にするために」
「分かった。行くわよー……えいっ!」
  セリィの投げたブーケは大きく空に舞い上がる。
  絶対に掴むのよ!  と言わんばかりに女性達が手を伸ばす。
  真下にいた女性は勢い余ってブーケを弾いてしまった。
  そして最終的にブーケを手にしたのはナージャだ。
「私……取れた……!  やったああ!!」
  ナージャは嬉しさの余りぴょんぴょんと飛び跳ねている。
  俺はフロウの方を見てニヤッと笑った。
  俺は気づいてるんだぞ。
  ほら、もう覚悟は決まっただろ?
「ナージャ!」
  フロウは決心した表情でナージャを呼ぶ。
  参加者は一斉に静かになり、フロウに注目が浴びせられる。
  フロウはゆっくりとナージャの目の前まで歩いていく。
「そのブーケのジンクス、現実にするよ。僕と結婚してください」
  フロウはそう言って結婚指輪を取り出した。
  おぉ!  
  あれは前世でいうダイヤ位の価値がある宝石じゃないか!?
「……はいっ!」
  ナージャは突然の事で驚いている様だが涙を浮かべてとても嬉しそうだ。
「おめでとう、フロウ。上手くいって良かったな」
「アル、気づいてたのか?」
「親友だからな。それにめちゃくちゃポケット気にしてたもんな」
「バレてたか……すまんな、お前の結婚式を利用したみたいで」
「良いんだよ。お前達が幸せになるきっかけを与えられたのが嬉しいよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。今度は俺の結婚式に来てくれよな」
「ああ、もちろんさ」
  それから数ヶ月後、フロウとナージャの結婚式の招待状が来た。
  もちろん友人代表としてバッチリ余興をしてきた。
  それと陛下がまたプライベートで参加してベロンベロンになって帰って行った。
  あの人絶対酒飲みたいだけだわ。
  それはそうと結婚式の時の二人は終始幸せそうだった。
――5年後――
  俺達は20歳になっていた。
  政治は16になった時にボレアスお父様からもう大丈夫、と太鼓判を押してもらえたのでそれからは自分でやっている。
  最初は一人でやるのが大変だったが今ではもう慣れっこだ。
  それと、子供が二人出来た。
  女の子が二人だ。
  二人共母に似てとても可愛い。
  とても元気で今日も森に遊びに行っている。
  
  仕事が一段落ついたので外で日向ぼっこをしていると森の方から叫び声が聞こえてきた。
「パパー!  助けてーー!!」
「きゃーー!!」
  よく見るとうちの子二人が巨大な熊に追いかけられていた。
  その後ろには熊を追いかける猪の大群、また動物にイタズラしたな……
「転移!」
  俺は二人の目の前に転移して抱きしめる。
  そして俺の後ろに移動させ、前に出る。
「動物にイタズラしたらいけないってあれ程言ったのに……結界!」
  俺は熊と猪達を結界魔法に閉じ込める。
  そしてそれ事森に転移させ、結界を解除する。
「ごめんなさい……」
「もうしちゃダメだよ?」
「分かった!  また森に行ってくる!」
  あ、絶対またやるやつだ。
  ほんとにイタズラ好きでよくトラブルに巻き込まれる。
  これからは悪役令嬢じゃなくてこの大切な家族を守っていかないとな。
  誰かを守る、それが俺の人生の目的なんだから。
  アル、セリィ、15歳
  俺達の結婚式は俺の屋敷で行うことにした。
  領民もほぼ全員来たので、始まる前からかなり賑やかだった。
  ましてや酒を飲み出している者もいた。
「ありゃなんだ!?」
  庭で始まるのを待っていた人々が一斉に空を見上げる。
  俺もそちらを見るとペガサス(?)に乗っている人影が見えた。
  それはゆっくりと俺たちの方へ近づいてくる。
  なんだ?  殴り込みか?
「よぉ、アル!  祝いに来てやったぞ!」
  ペガサスに乗ってきたのはなんと国王陛下だったのだ。
  は?  陛下直々?  護衛とかは?
「陛下、来て頂けるなんて嬉しい限りです。しかしお一人ですか?」
「そんなよそよそしい態度はやめろ。今はプライベートで来てるんだから護衛もいないし、俺はただのおっさんだ」
  ただのおっさんって……
  現に皆静まり返ってるよ……
「父さん!  今日は来れないって言ってたよね!?  みんな驚いてるじゃないか!」
  レインは歩いてきて陛下に詰め寄る。
  いいぞ、もっと言えー!
「あぁ……サプライズで行こうと思って……」
  陛下はクネクネしていじけてる。
  全然可愛くない、いやむしろきっ……オホン!
「はぁ……なら仕方ないね。サプライズなら許すよ」
  おぉい!?  この親子の中ではサプライズは万能なのか!?
  まぁいい、祝ってくれるなら嬉しい限りだ。
「静粛に!  これより、アルバート・シュタインとセリーナ・エリアスの結婚式を執り行う!」
  進行を務めるのは牙狼の爪のリーダーゲイルだ。
  え?  誰だって?
  あの最初の迷宮で危ないところを助けてくれたあの人だよ?
「それでは、新郎の入場です!」
  うん、あの人の声よく通るから司会に選んで正解だったわ。
  俺はネクタイを締め直して登場する。
  俺が出た途端、わぁっ、と声が上がる。
  顔の赤い者が多い。
  よく見たら陛下が父と肩を組んで酒を飲んでいる。
  いつの間に仲良くなってんだよ。
  俺は神父の前に立ち、入口の方を向く。
「続きまして新婦の入場です!」
  扉が開いて見えたのは純白のウエディングドレスに身を包んだセリィだ。その隣にはボレアスお父様。
  セリィが入場した途端、会場が一斉に静まり返る。
  セリィの美しさに全員見惚れている。
  セリィはいつもは化粧をしないのだが今日はプロを呼んで化粧をしているのでどこか色っぽく感じる。
「……綺麗だよ」
  そう言うとセリィは何も言わず、少しふふっと笑って下を向いた。
  それから神父が病める時も健やかなる時も……やらなんやらと言っているが正直聞こえない。
  隣にいるセリィの事で頭がいっぱいだ。
「誓いますか?」
  おっと俺が答えなくちゃな。
  危ない危ない、スルーするところだった。
「はい」
「では新婦、誓いますか?」
「はい」
「それでは誓いのキスを!」
  ん?  こんなの予定には……?
  あ、あの神父ニヤニヤしてやがる。
  くっそぉ!  からかいやがって、こりゃ減給だな。
「えっと……」
  俺は人前ではしない、と言おうと振り向くが全員が期待の目でこちらを見ている。
  助けを求めるようにセリィの方を向くともう目を閉じて準備万端だった。
  するしかないか……
  俺はセリィの両肩を掴む。
「おおっ……!」
  観客席から声が上がる。
  そんなに反応しないでくれ……
  俺は覚悟を決め、セリィにキスをする。
「おおー!!」
「ヒューヒュー!!」
  キスをした途端に観客席から歓声が上がる。
  中には悔しそうな顔をして嬉しそうな顔をしている奴に金を渡しているやつがいた。
  あいつら、俺がキスするかしないかで賭けてやがったな!?
  後でぶっ飛ばす。
「それでは披露宴の方に移りたいと思いますので皆様、会場の方へ移動をお願いします」
  司会の指示に従い、参加者がゾロゾロとチャペルを出ていく。
  ちなみにこのチャペルは結婚式の為に作らせた。
  この結婚式が終わったら民間企業に譲って領民が使えるようにするつもりだ。
  披露宴ではまず新郎の挨拶ということで俺がスピーチをした。
  これは緊張してガッチガチだったが難なく終わった。
  新婦の感謝の言葉みたいな奴はもう凄かった。
  セリィのスピーチで両親どころか会場にいた全員が家族を思って涙を流していた。
  恐るべしセリィのスピーチ。
「それでは友人代表としてフロウさん、お願いします」
  フロウは俺が友人代表として出てくれとお願いした。
  フロウは王国復興が終わった後、大工になって王国で修行していた。
  フロウは慣れないスーツに身を包み、舞台を登る。
  ゆっくりと礼をしてスピーチを始める。
「アルバート・シュタインさん、セリーナ・エリアスさん、ご結婚おめでとうございます。この言い方は慣れないのでいつもの呼び方で呼ばせていただきます。
  アル、セリィ、二人はいつも仲良しでよくお互いのことを分かっていたと思います。
  そんな二人が結婚するのは運命なんじゃないかと俺は思ってます。
  アル、セリィはアルにとって一番お似合いな女性だから絶対に幸せにしてあげてください。
  セリィ、アルは無理して突っ走ってしまう時があるのでちゃんと支えてあげてください。
  それと、この日のために皆で練習してきた事があるのでお祝いとして披露させてください。
  みんな、行くぞ!!」
  フロウが空を見上げて掛け声を上げる。
  すると、空から何かの大群が迫ってくる。
  あれは……人!?
  空から降ってきたのは頑丈な鎧を着た王国騎士団だったのだ。
  でもなんで空から?
「風の加護!」
  地上から声が聞こえたのでそちらを向くとナージャが風魔法を騎士団に付与していっている。
  風の加護を受けた騎士はゆっくりと着地する。
「勇者レインが祝いに来たぜ!」
  レインが正面に立ち、宣言すると観客席から歓声が上がる。
  みんなノリ良いな……
「用意!  さん、はいっ!」
  用意の合図で最後列の騎士は楽器を取り出し、レインの指揮で演奏を始める。
  その演奏に合わせて騎士達が踊りだし、フロウも後から合流してレインとフロウがセンターで踊っている。
「結婚、おめでとう!!」
  最後は空に魔法が放たれ、花火のように空を彩り、余興が終わる。
  騎士団の人達はあんな重装備なのにキレッキレのダンスを見せてくれた。
  とても素晴らしかった、本当に。
  それからは豪華な食事を立食形式で振舞った。
  今日は領内から大勢の料理人を呼んであるので量もかなりある。
「よっしゃぁ!  カンパーイ!」
  食事が始まった途端に酒を手に取り乾杯する男達。
  お前らずっと前から飲んでただろ。
「アル、みんな楽しんでくれてよかったわね」
  セリィはウエディングドレスから少しオシャレなドレスに着替えていた。
  露出が……新婦がそんなんでいいのか、このやろー。
  ありがとうございます。
「う、うん。何かお酒飲みすぎてて心配な人もいるけどね……」
  特に陛下とかお父さんとかボレアスお父様とか。
  あの3人結婚式で飲み比べしてやがる。
「それはまだいいとして何か忘れてる気がするんだよなぁ……」
  何かこう、誰かの為に必要な事……
  何だっけ……?
「何か忘れてる事?  この結婚式のやり方も知らないのにわからないわよ」
  その時、ガッシャーンと大きな音が聞こえた。
「申し訳ございません!  植木鉢を割ってしまいました!  中の花もこのように……」
  顔を真っ青にした青年が植木鉢を割ったと謝りに来た。
  結婚式に土下座は止めてくれ……
  ん?  花……花束……
「あ!!  思い出した!」
「えっと……何をでしょうか……?」
「ブーケトスだよ!  思い出させてくれてありがとう!」
  俺は植木鉢を割った青年の手を握りお礼を言って用意しておいた花束を持ってくる。
「はい、注目ー!  これからブーケトスをします!」
「ブーケトス?  それは何ですか?」
「新婦が投げたこのブーケと呼ばれる花束をキャッチ出来た人は結婚出来る、っていうちょっとしたジンクスさ!  参加出来るのは未婚の女性だけだよ!  さぁ、集まってー!」
  結婚出来る、という言葉に反応して大勢の女性が集まってくる。その中にはナージャもいた。
  頑張れ、ちゃんとキャッチするんだぞ……!
「ほら、セリィ。目をつむって投げてね。平等にするために」
「分かった。行くわよー……えいっ!」
  セリィの投げたブーケは大きく空に舞い上がる。
  絶対に掴むのよ!  と言わんばかりに女性達が手を伸ばす。
  真下にいた女性は勢い余ってブーケを弾いてしまった。
  そして最終的にブーケを手にしたのはナージャだ。
「私……取れた……!  やったああ!!」
  ナージャは嬉しさの余りぴょんぴょんと飛び跳ねている。
  俺はフロウの方を見てニヤッと笑った。
  俺は気づいてるんだぞ。
  ほら、もう覚悟は決まっただろ?
「ナージャ!」
  フロウは決心した表情でナージャを呼ぶ。
  参加者は一斉に静かになり、フロウに注目が浴びせられる。
  フロウはゆっくりとナージャの目の前まで歩いていく。
「そのブーケのジンクス、現実にするよ。僕と結婚してください」
  フロウはそう言って結婚指輪を取り出した。
  おぉ!  
  あれは前世でいうダイヤ位の価値がある宝石じゃないか!?
「……はいっ!」
  ナージャは突然の事で驚いている様だが涙を浮かべてとても嬉しそうだ。
「おめでとう、フロウ。上手くいって良かったな」
「アル、気づいてたのか?」
「親友だからな。それにめちゃくちゃポケット気にしてたもんな」
「バレてたか……すまんな、お前の結婚式を利用したみたいで」
「良いんだよ。お前達が幸せになるきっかけを与えられたのが嬉しいよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。今度は俺の結婚式に来てくれよな」
「ああ、もちろんさ」
  それから数ヶ月後、フロウとナージャの結婚式の招待状が来た。
  もちろん友人代表としてバッチリ余興をしてきた。
  それと陛下がまたプライベートで参加してベロンベロンになって帰って行った。
  あの人絶対酒飲みたいだけだわ。
  それはそうと結婚式の時の二人は終始幸せそうだった。
――5年後――
  俺達は20歳になっていた。
  政治は16になった時にボレアスお父様からもう大丈夫、と太鼓判を押してもらえたのでそれからは自分でやっている。
  最初は一人でやるのが大変だったが今ではもう慣れっこだ。
  それと、子供が二人出来た。
  女の子が二人だ。
  二人共母に似てとても可愛い。
  とても元気で今日も森に遊びに行っている。
  
  仕事が一段落ついたので外で日向ぼっこをしていると森の方から叫び声が聞こえてきた。
「パパー!  助けてーー!!」
「きゃーー!!」
  よく見るとうちの子二人が巨大な熊に追いかけられていた。
  その後ろには熊を追いかける猪の大群、また動物にイタズラしたな……
「転移!」
  俺は二人の目の前に転移して抱きしめる。
  そして俺の後ろに移動させ、前に出る。
「動物にイタズラしたらいけないってあれ程言ったのに……結界!」
  俺は熊と猪達を結界魔法に閉じ込める。
  そしてそれ事森に転移させ、結界を解除する。
「ごめんなさい……」
「もうしちゃダメだよ?」
「分かった!  また森に行ってくる!」
  あ、絶対またやるやつだ。
  ほんとにイタズラ好きでよくトラブルに巻き込まれる。
  これからは悪役令嬢じゃなくてこの大切な家族を守っていかないとな。
  誰かを守る、それが俺の人生の目的なんだから。
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