転生したら防御チートを手に入れたのでので死亡予定の悪役令嬢を守ってみせる

ユーガ

内通者

――玉座の間――


  昼食の前、俺は国王陛下に呼び出された。




「よく来てくれた。……で、何でそんなに顔が腫れておるのだ?」




「冗談言ってたら仲間に叩かれまして……はは」




「そ、そうか。仲良くな」




「はい、それでご要件は何でしょうか?」




「迷宮攻略についてだ。お前達アイギスにはグラノウス帝国の迷宮タルタロスの攻略を命じる」


  タルタロス。奈落、か……
  名前からしてヤバそうだ。




「はっ!  必ずや攻略してみせます!」




「頼んだぞ」




「どうだった?」




「ああ、次の迷宮の依頼だよ。グラノウス帝国の迷宮タルタロスだ」




「グラノウス帝国ってあの最強の軍隊がある?」




「俺知ってるぜ!  あの無敗の帝国軍だろ?」




「無敗って……すげぇな」




「多分ここからだと1ヶ月かからないくらいね」




「またあの馬車に乗るのか……」


  ほんとにしんどいんだよなぁ……何とかならないかな……
  それに1ヶ月ってなぁ。




「お、アイギスの皆じゃないか。どうしたんだ?」




「お、レイン。俺達はグラノウス帝国に行くことなったんだ」




「グラノウス帝国か、遠いな。まぁ、俺達は魔大陸なんだけどな」




「気をつけろよ……お前は背負い込み過ぎる癖があるからちゃんと仲間を頼るんだぞ」




「ああ、気をつけるよ。お前も無理すんなよ」




「ありがとな。よしみんな、準備して早めに出ようか」


  俺達が部屋に戻ろうとしていると一人の男が息を荒らげて走ってきた。




「勇者パーティーの皆さん、アイギスの皆さん!  大変です!」




「どうした?  何があったんだ?」




「王国騎士団が北の森を巡回中に魔族に襲われたと情報が入りました!  加勢をお願いします!」




「分かった。すぐ行く!  行くぞ!」


  俺達は急いで北の森に向かった。


  俺達が着いた頃には騎士団はかなり劣勢で既に多くの死体が転がっていた。




「サンドラ、息があるものは全員助けろ!  ナージャも頼む!」




「分かってますわ!」




「任せて!」




「マーリン、セリィ、後衛は任せた!  アル、フロウ、行くぞ!」




「「おう!」」


  レインが即座に全員に指示を出す。
  さすが勇者だ。人を率いる力もすごいな。




「くらえっ!  サイクロンランス!」


  目の前にいた騎士が槍を回転させながら突く。
  しかし、魔族には全く効いていない。
  仰け反るどころか微動だにしていない。




「効かないなぁ!  オラッ!」


  そして魔族は騎士を盾ごと殴る。
  騎士は耐えきれず、吹き飛ばされる。




「大丈夫か?」


  俺は飛んできた騎士を受け止める。




「あいつだけじゃない……全員、攻撃が効かない……」




「恐らく全員物理無効結界を張っているんだろう。王国魔術師がいないのを知って兵を集めたとしたらまだ王国の情報が漏れてるな……」


  分かる範囲の魔族は見つけて追放したはずだ。
  だから、考えられることは2つ。
  1つは偽装が完璧な魔族がいる。
  もう1つは王国内の人間に魔族に協力する者がいるということだ。


  どちらでも大変な事態だ。だがとりあえずここを何とかしないと。




付与魔法エンチャント:ブレイズ!」


闘気オーラ纏い!」


「聖剣解放!」


  俺達はそれぞれ剣に魔力を流す。




「死ねぇぇぇ!!」


  少し遠くで騎士が魔族に追い詰められている。
  あっちに行くか。


  俺は身体強化と風魔法で即座に騎士の前に立ち、魔族の爪を受け止める。




「何っ!?」




「大丈夫か?  安心しろ、俺が何とかする」




「あなたは……?」




「アイギスのアルバートだ。それより動けるか?」




「ああ……何とかな……」




「よし、じぁ少し離れていてくれ。さっさと終わらせて回復術師の所まで連れていくからな」




「ありがとう……」




「さぁやるか」




「何がさっさと終わらせるだぁ?  人間ごときが調子に乗るなぁ!」


  魔族は爪に魔力を流し、闇の魔力を纏う。




「焔剣!」


  俺は爪を受け流し、魔族の肩を斬る。
  剣自体は弾かれたが炎で魔族の肩は火傷している。




「やっぱり物理無効結界はあっても魔法無効結界は無かったな。でも攻撃の通りがあまり良くないな……」




「当たり前だ!  対魔法結界で魔法耐性を上げてあるからな!」




「わざわざネタバレありがとう。皆!  一箇所に魔族を集めろ!」




「「了解!」」


  俺達は魔族を物理攻撃で吹き飛ばし、一箇所に集める。
  そして、




「マーリン、セリィ、頼んだ!」




「任せて」




「パラライズボルト」


  2人は雷魔法で集めた魔族を麻痺させ、動きを止める。




「よし、サンドラ!」




「わかってますわ!  ホーリーライト!!」


  サンドラは集めた魔族に光属性の魔法を使う。
  すると魔族の上にどこか優しい光が生まれる。




「ぐああああ!!」


「ぎゃあああああああああ!!」


  魔族達はその光を浴びると苦しそうに呻き、灰になって消えていった。


  魔族に光属性がよく効くのは知っていたがまさか灰になって消えるとはな……
  ドラキュラじゃん。




「ふぅ、とりあえずサンドラ、ナージャ、怪我した騎士達を治してやってくれ」




「分かった(わ)」


  サンドラとナージャは騎士団の人達を回復して回っている。
  かなりの死者が出ていて生き残っていたのは数える程しかいなかった。
  その生き残った人達もかなりの重症でサンドラとナージャがいなければ死んでいただろう。


  まだまだ王国は安全じゃないな。とりあえずは王国内の魔族か魔族に協力している者探しだな。






――玉座の間――


  俺とレイン各パーティーの代表として、騎士団を救って帰ってきたらすぐ、国王陛下に呼び出された。




「この度は騎士団を救ってくれて本当にありがとう」




「いえ、当然のことをしたまでです」




「しかし、かなりの死者を出してしまいました……もっと早く助けに行ければ!」




「まぁそう自分を責めるな。あれは仕方ない。奇襲されたと聞いている」




「それなんですが陛下、まだ王国内に魔族か魔族に協力する者がいる可能性が高いです」




「やはりな……検討はついているのか?」




「いえ、魔力反応は全くありません。恐らく魔族に協力している人間がいるかと」




「何でそんな人間がいるんだよ!  そいつは人間をどうしたいんだ!」




「レイン、落ち着け。それでアルよ、我に心当たりがある。調べるのを手伝っては貰えないか?  何せ人手が足りなくてな」




「分かりました。レイン、お前も手伝ってくれるか?」




「当たり前だ。そいつはもう人間の敵だ。早く捕まえないと何しでかすか分からない」




「ありがとう。で、心当たりとは何でしょうか、陛下」




「ああ、巷で噂になっている団体に"新世界"というものがある。それはこの世界を新しくする等と言っているらしいのだが今の所目立った犯罪行為は無いので放置していたのだが……」




「新世界……ですか……」




「ああ、そしてこれも噂で証拠など全く無いのだがその団体と王国内の人間が裏で繋がっているらしい」




「なるほど。ではそれを中心に調べますね」




「ああ、頼んだ。レイン、冷静に行動するのだぞ」




「分かりました……」




「皆、内通者を探す事になった」




「え?  迷宮は?」




「さっさと終わらせて行こう」




「んな簡単に……」




「目星はついてるの?」




「噂程度のものなんだが"新世界"っていう団体を調べようと思う」




「分かった。じぁまずはギルドにでも行って情報収集ね」




「よし、なら二手に分かれて情報収集するか。セリィ、俺と行くか」




「ならフロウは私とね」




「おう」




「それじぁ日没前には王城に集合で。今は情報収集だからよっぽどの事がない限り深追いはしないこと。するなら狼煙でも上げてくれ」




「「了解!」」


  そして俺達は内通者探しの為に城下町へと向かった。

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