転生したら防御チートを手に入れたのでので死亡予定の悪役令嬢を守ってみせる

ユーガ

60階層の壁

「おはよう皆!」


  珍しくレインが早起きだ。


  こっちはお前のせいで寝不足だけどな!


「何で今日はそんなに早いんだ?」


「皆と迷宮攻略するのが楽しみなんだよ!」


「そうか、なら準備して行こうか」


「おう!」




「レッツゴー!」


  俺達は安全地帯を出る。


「とりあえず今日行けるところまで行こうか」


「そうだね。ボスモンスターもいないみたいだしサクサク進めるな」




  それから俺達はどんどんと下の階へと降りる。
  レインがいるので戦闘はかなり楽になった。




――迷宮・50階層――


「結構降りてこれたな」


「よし、50階層はボスモンスターがいるらしいから気を締めて行こう!」


「「「おう!」」」


  俺達は巨大なドアを開ける。


  そこには巨大な木があった。


「あれが、ボス?」


「あれはBランクのジャイアントトレントじゃないですか?」


「でもあんなに大きかったか?」


「おそらく特殊個体だろう」


「よし、行くぞ!」


「まず私が!  ファイアーアロー!」


  セリィが火の矢をトレントに撃つ。


  するとトレントは目の前に土の壁を作り出し、火の矢を防いだ。


「やっぱり火魔法への対抗手段は持ってるな……」


「よし、基本前衛で戦うから隙を見て魔法で援護頼む!」


「「わかった!」」


「行くぞ、お前ら!」


「「おう!」」


  俺、フロウ、レインが身体強化を使い、トレントに近づく。


「縮地!!」


  俺は縮地を使い、トレントの死角に回る。


「オラッ!」


  フロウが正面から斧を振り下ろす。


  それをトレントは枝を集めて防ぐ。


付与魔法エンチャント:ブレイズ!」


  俺はその隙に剣に炎を纏わせ、剣を振り上げる。


焔剣ブレイズソード!!」


  俺は不意をつき、トレントを斬る。
  斬ったところから炎が上がる。


  トレントは火の攻撃をくらい、焦っているようだ。


「俺もっ!」


  レインが飛び上がるとトレントは枝を体中から高速で伸ばす。
  枝一つ一つが槍のように先が尖っている。


「まずいっ!」


  俺は結界魔法を空中に使い、方向転換してそれを避けようとする。
  しかし、枝が多すぎて逃げ場がない。


「俺に任せろ!」


  そう言うとレインは剣を突き出した。


「貫け!  グングニル!」


  するとレインが剣を突き出した方向に光の槍が現れ、枝を消し去った。


「こっちだ!」


  俺達は枝が無いところに逃げる。


  セリィとナージャは結界を張って耐えている。


「前の討伐隊はこれで全滅したらしい」


「結界魔法使えるやついなかったのかよ」 


「結界魔法を無詠唱で使えるやつなんてそうそういないさ。お前達が異常なんだよ」


「無詠唱なんて普通だろ?  皆やってないのか?」


「無詠唱魔法が使えるやつなんて王国魔術師くらいだぞ?」


「まじかよ」


「雑談してないでどうするよ?」


「そうだな……セリィの魔力解放は出来るだけ温存したいし」


「あいつがトレントなら水魔法でおびき寄せて火魔法で吹っ飛ばすとかどうだ?」


「それだ!  大きさが違ってもあいつはトレントだ!」


  トレントは水を得るために移動できるように進化した木と言われている。


  だから水のある方へ行こうとする。
  その性質を使って倒すのがトレント狩りの定石だ。今回はそれを利用しよう。


「ナージャは水魔法を!  セリィは火魔法の準備!  トレント狩りだ!」


「トレント狩り……水魔法……なるほど!  任せて!」


  二人とも理解してくれたようだ。


「はぁっ!」


  ナージャは無詠唱で水の塊を生み出す。


  するとトレントは枝を引っ込め、水の方へ歩いていく。


「今だ!」


「はぁっ!」


  セリィが巨大な火の塊を出現させ、トレントに向かって投げつける。
  

  ゴォォォッ!!


  火魔法がトレントに当たると一気に燃え上がる。


  トレントは苦しそうに暴れ、水の塊に向かって走り出す。


「残念、おあずけね」


  ナージャは水魔法を解除し、水を無くす。


  しばらくするとトレントは動かなくなった。


「ふぅ、50階層制覇!」


「やったー!」


「よぉし!」


「早く次行こうぜ!」 


「おう!」


  俺達は下へと続く階段を下りた。






――迷宮・51階層――


「雰囲気変わったな……」


  50階層までは森の中だったが、この階は峡谷と言ったところだろうか。


「上にも気をつけないと。何か鳥系の魔物が飛んでるし」


「真上にいるやつだけ倒すか」


「任せて!  ファイアーアロー!」


  セリィは火の矢を放ち、空を飛んでいた魔物を射抜く。


「ギャァァ!」


  鳥は悲鳴をあげながら落ちてくる。


「ん?  何かデカくね?」


「いやまずいぞ、逃げろ!」


  俺達は急いでその場から離れる。


  ズドォォン!!


  大きな音を立てて鳥の魔物が落ちてきた。
  全長5m位の魔物だった。思ったより高いところを飛んでいたので小さめに見えたのか。


「危なかった……」


「こいつ、Bランクモンスターだ!」


「まじかよ!  Bランクモンスターがそこら辺で飛んでるのか!?」


「これは油断出来ないわね……」


「皆、気をつけて進もう」


「おう」


  それから俺達は峡谷を進んで行った。
  途中何回か鳥系魔物に襲われたがなんとか倒した。






――迷宮・59階層――


「ここが今の攻略隊の限界だな」


「いや、まぁそうなるな。60階層が攻略出来ないらしい」


「なるほど。ならここで再度準備をして万全の状態で向かおう」


  俺達は防具・武器の確認、ポーションで魔力回復をして60階層に向かった。






――迷宮・60階層――


「さぁ、準備はいいな!  ここからは未攻略の地だ!  気張っていこう!」


「「「「おー!!」」」」


  俺達は巨大な扉を開けた。




「さぁ、どこにいる……」


  俺は辺りを見渡すが、それらしい魔物はいない。


  いないのか……誰かに倒されたとか?
  いやいや、そうだったら必ず知らされるはず!
  ならこの部屋のどこかに……


「皆!  敵はどこかにいるはずだ!  注意して!」


「わかった!  とりあえず明るくするわ!」


閃光フラッシュ!!」


  セリィは魔法で辺りを照らす。


「グルァァ!!」


  すると天井からイタチとキツネを足して2で割ったような巨大な魔物が落ちてきた。


「いたぞ!」


「A+ランクのモンスタークルガよ!」


「かかれぇー!!」


  俺達前衛組がその隙にクルガに近づき、剣を抜く。


「グルァァ!」


  クルガはすぐに立ち上がり、俺達の攻撃を避ける。


「何て反応速度だ!」


「なにか来るぞ!」


「グルァァ!!」


  クルガは飛び上がり、尻尾を振る。


  すると尻尾から鱗が飛んでくる。


「飛び道具かよ!」


  俺達は後ろに跳び、それを避ける。


「行くよ!  ナージャ!」


「うん!  はああ!」


  セリィとナージャが2人で魔法を発動する。
  すると天井から雷が落ちてくる。


  キィン!!


  雷がクルガに当たった瞬間、クルガの鱗が光り、雷が反射してこちらに飛んでくる。


「はぁ!?」


「アイギスの盾!」


  俺はスキルを発動し、雷を防ぐ。




「なるほど、反応速度が早い上に魔法も反射されてしまうと……」


「攻略出来ないのも納得だな。討伐隊は基本火力は魔法頼りだからな」


「どうすればいいんだ……」


「グルァァァァ!!」


  クルガは咆哮する。

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