傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

理に逆らう者

「行くぞ!」


「「おう!」」


  僕はゴランさんから貰ったオリハルコンの剣を構えた。


「ドラム!  サラマンダーに弱点とかねぇのか!?」


「全くわからない!  火のモンスターは水が苦手なはずなんだがこいつは水を蒸発させちまう!」


「まじかよ……」


「来ますよ!」


  サラマンダーは口に火を集めている。


「俺に任せろ!  水壁ウォーターウォール!」


  目の前に大きな水の壁が現れる。


  ゴオオッ!!


  直後、サラマンダーの口から火のブレスが放たれ、水の壁を蒸発させた。


「防げたがなんだあのブレスは……」


「今度はこっちの番だ!」


「はい!」


風属性付与エンチャント・ウインド


  ソーマがそう叫ぶと彼の体全体を風が覆う。


「後衛は俺に任せとけ!」


  ドラムがそう言う。


「うおおおお!」


  僕はサラマンダーに向かって走り、飛び上がる。


「スラッシュ!!」


  僕はサラマンダーに剣を振り下ろした。


  僕の斬撃はサラマンダーの体に到達するが大した傷は付けられない。それより


「あっつ!?」


  サラマンダーが炎を纏ったのだ。


  僕は急いで距離をとる。


風刃ウインドスラッシュ!!」


  ソーマが風の刃をサラマンダーに放つ。


  が、火の上昇気流で軌道がそれ、当たらない。


「チッ!  当たらねぇぞ!」


「とりあえず火を消す!」


「神界の大瀑布!!」


  ドラムが魔法を使う。


  するとサラマンダーの上から大量の水が凄い勢いで落ちてくる。


  ナイアガラの滝みたいだ。


  シュゥゥゥ……


  サラマンダーの火が消える。さすがにこれ全部蒸発させられたらたまったもんじゃない。


「グヌヌヌヌ、我ノ火ヲ消ストハ……」


「今のうちだ!」


「くらえ!!  神風斬り!!」


  ソーマが目にも留まらぬ速さでサラマンダーに接近し、神速の斬撃を放つ。


  スパァン!!


  サラマンダーは真っ二つになり、黒い霧となった。


「倒したのか……?」


「案外あっさりだったな」


「待ってください!  何かがおかしい!」


  いつもはすぐ霧散するはずの黒い霧がまだ漂っているのだ。


「どういうことだ……!」


  すると霧が再び一つに集まり、なんとサラマンダーが復活したのだ。


「生き返っただと!?  どうなってやがる!」


「サラマンダーじゃなくてフェニックスの間違いなんじゃないか?」


「来ますっ!」


  ゴオオッ!!


  僕達は咄嗟にその場から離れた。


  するとさっきまで僕達がいた所が火に包まれる。火の勢いで地面が抉れている。


「おいおいさっきより威力上がってねぇか?」


「我ハ生キ返ルタビニ強クナルノダ!!」


「冗談じゃねぇぞ……」


「どうやって倒せば……!」


――我の能力を使え、ハルよ


「っ!?  誰?」


――我は今お前が持っている剣だ


「剣って喋れるの!?  魔鋼を混ぜたから?」


――違う。話は後だ。我の能力を使え


「能力って?」


――我を握りこう叫べ!


「村正、壱の型!!」


  そう叫ぶと僕の剣が禍々しい光を帯びる。


「崩壊せよ!」


  僕はサラマンダーに斬りかかる。


「遅イッ!!」


  サラマンダーは尻尾で僕を吹き飛ばそうとする。


「ぐっ!!」


  僕はそれを剣で受け止める。


  するとサラマンダーの尻尾が崩壊していく。


「グォッ!?  何ヲシタァ!」


  サラマンダーは苦しそうに呻く。


「ハル、何をしたんだ!?」


  ドラムが驚いて聞いてくる。


「この剣の能力です!」


「使ったばかりなのに使いこなしているのか?  凄いな」


「たまたまですよ」


「飛ばれると嫌だな……ハル!  翼を壊してくれるか?」


  ソーマがそう頼んでくる。


「わかりました!」


「村正、壱の型!」


  近づくなと言わんばかりにサラマンダーは火のブレスを放ってくる。


「明鏡止水!」


  僕はそれを受け流し、カウンターに繋げ、翼を崩壊させる。


「ナゼダァァァ!!」


「いいぞ!  一気に畳み掛けるぞ!」


「我ヲナメルナ!!」


「大噴火!!」


  ゴゴゴゴゴ!!


  サラマンダーがそう叫ぶと地震が起きる。


「おいおいまじかよ……」


  ドガァン!!


  火山が噴火する。溶岩が唸りを上げて迫り来る。巨大な噴石も落ちてくる。


「ソーマ、石は任せた!  俺は溶岩をどうにかする!」


「わかった!  ハル、お前も手伝え!」


「わかりました!」


「津波!!」


  ドラムは迫り来る溶岩を大量の水で冷やし、固める。


「鎌鼬!!」


  ソーマは大量の風の刃を放ち、噴石を粉々にしていく。


  僕はというと、うん!  出番は無かった!


「良イ気ニナルナヨ。次ハコノ比ジャナイゾ」


「ハル!  町が危ない!  避難を呼びかけてきてくれ!」


「わかりました!」


  とは言ったものの僕、犯罪者として町を追い出されたんだよな……


「じぁ飛ばすから構えろよ……」


「いや走ってい来ますからああああ!!」


  何でこうなるのぉ!!


  僕は吹き飛ばされる。町まですぐに着く。


  あれ?  これどうやって着地するんだろう?


  ドゴォン!!


  ギルドの2階に突っ込んで何とか止まることが出来た。


「ふぅ……死ぬかと思った……」


「誰じゃ!!」


  僕が突っ込んだ部屋にいたのはギルドマスターだった。


「ギルドマスター!!  火山が噴火します!  今すぐ町の人を避難させてください!」


「あ、ああ……そうだな。とりあえずワシの部屋に突っ込んできたのは後で聞くことにしよう」


「ごめんなさい」


  よし、避難はギルドマスターが何とかしてくれる。とりあえず戻らないと!


  僕は直ぐに町を出て、火山へと向かった。




――火山の森――


  森では沢山の動物や魔物達が異変を察知したらしく火山から離れようと逃げている。


  僕のことなんて眼中に無いようだ。


「ピィ……」


  そんな中で1匹の白い小さなドラゴンを見つけた。


  そのドラゴンは尻尾を倒れた木に挟まれて動けなくなっているようだ。


「大丈夫、今助けるからね」


  僕はその木を少し持ち上げる。


「ピィ!」


  するとドラゴンは小さな羽で飛び、どこかへ去っていく。


  ゴゴゴゴゴ!!


  さっきよりも大きな地震が起きた。


  まずいな、そろそろ噴火しそうだ。町の人は避難出来ただろうか?


  とりあえず急いで戻ろう。




  僕がサラマンダーの所に戻ってくると2人はかなり苦戦していた。やはり伝説の龍、翼と尻尾がなくても強い。


「避難はギルドマスターにお願いしてきました!」


「よくやった!」


「くそっ!  水砲!!」


  ドラムが水の砲弾を放つ。ウォーターボールよりも勢いが強い。


  ゴオオッ!!


  それをサラマンダーはブレスで蒸発させる。


  ドドドドドドド!!


「噴火するぞっ!!」


「俺の近くに集まれ!!」


  そう言われたのでドラムの近くまで行く。


「噴火はどうにもならんが身を守ることは出来る!」


「真・水壁ウォーターウォール!!」


  直後、水の壁が僕達を覆い、部屋の様になる。


  ドガァァァァン!!


  火山が噴火した。煙は空高く噴き上がり、それと同時に溶岩と噴石が噴き出される。


  ドラムの水壁で何とか溶岩を防ぎ切り、噴石はソーマが来る度に砕いてくれた。


  が、火砕流がドワルゴンを飲み込む。


「ひでぇ……町が……」


  火砕流で町はほぼ壊滅状態だった。


「サラマンダーは!?」


「どこだ!?」


「ココダ!!」


  ゴオオッ!!


  サラマンダーは真上にいた。壊したはずの翼も元に戻っていた。


「あいつ、1回死んでリセットしやがった……!」


「無茶苦茶だよ……」


「フハハハハ、我ハ更ニ強クナッタゾォ!!」


「あんなの……もうどうしようもない……」


――諦めるな。最大出力で壱の型を使え。さすれば奴の秘密が分かるはずだ。


  最大出力?  どうやって?


――気合いさ、気合い。


  何ともアバウトな……


  まぁいい。やってやろうじゃないか。


「ドラム、ソーマ、隙を作って!」


「いけるのか?」


「わからない!  でも、僕に任せて!」


「仕方ない……お前に賭けてみるとするか!」


  僕達は上空にいるサラマンダーを睨みつけた。

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