傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

町長の娘

悲鳴が聞こえた場所では女の子が馬車に無理矢理乗せられようとしていた。


「レイナ!」


「うん!」


僕達は急いでそこへ向かう。


「待て!その子を放せ!」


「あ?誰だお前。痛い目見たくなかったらさっさとここから去れ!」


「断る!」


「チッ、俺に任せろ。お前らはそいつを連れて行け」


「させない!レイナ!」


「ファイアーボール!!」


ゴオッ!


レイナの放った魔法が馬車に直撃し、馬車が燃え上がる。
男達は慌てて火を消そうとする。
その隙に女の子がこちらに逃げてくる。


「ありがとう!あなた達は?」


「そんなんは後で!とりあえずここから逃げるよ!」


「ハル!逃げるよ!」


「うん!」


「逃がすか!!」


男が剣で斬りかかってくる。
僕はそれを脇差で受け流し、勢い余った男に足を掛けて転ばせる。


「うぉっ!」


「今のうちに!」


僕達は女の子を連れて急いで町に戻った。




――町――


「なんとか逃げきれたみたいだね」


「あの、助けてくれてありがとう!」


「うん、無事で良かった。君はどうして捕まっていたの?」


「詳しくは分からないけど私が町長の娘だから身代金目的だと思う」


「「町長の娘!?」」


「そうだよ!私はこの町の町長カルロス=メイゲルの娘のエリーナ=メイゲルだよ」


「そうだったのか……」


「お礼をしたいから家まで来て!」


「え、町長の娘の家ってことは……」




「着いたよ」


「やっぱりな!」


エリーナに着いて行って着いた場所はやはり町長の家だった。


「さぁ、入るよー」


「待て待て心の準備が……」


「何緊張してるの、ハル」


「いやなんでレイナは緊張してないんだよ」


「ただいまー!」


「いやだから心の準備が……」


エリーナが玄関を開けると中から数人走ってくる。


「お嬢様!よくぞご無事で!」


「うん!あの人達が助けてくれたんだ」


ドタドタドタ!!


「エリーナ!!無事で良かったぁ!!ずっと心配で……」


「お、お父さん、痛いよ!」


あ、誰かと思えばお父さんでしたか。
ん?お父さん?町長じゃねぇか!


「そうか、すまんな。ところでそちらは?」


「私が攫われそうになっているのを助けてくれたハルさんとレイナさんだよ!」


「あなた達が娘を……」


「たまたま森で見かけて」


「ありがとう!本当にありがとう!中に入って下さい。お礼がしたい」


「そんなお礼なんて……」


「ありがとうございます!ハル、行くよ!」


レイナに押されて僕も入ることになった。
緊張するなぁ……町長強面だし


「さぁ好きなところに座って下さいな」


僕達が案内されたのは町長の私室らしいところだ。部屋中にエリーナが描いたと思われる絵が貼ってある。しかも額縁に入れて。


「エリーナはここ最近頻繁に外に出かけるようになってね……
いつかこんな事が怒るんじゃないかと心配してたんだが……」


「護衛などはつけないのですか?」


「あの子はいつもこっそり抜け出していてね。何のために外に行っているのか分からないんだ」


「そうなんですか……」


「お礼をすると言っておいて何だが君達、エリーナがいつも何しに行っているか調べてくれないか?お礼はその後にしよう」


「わかりました。調べてみます」


「ありがとう。分かったら教えてくれ。ここか役所にいるから」


「はい、わかりました」


その後、町長さんの娘自慢を長々と聞かされた。やっぱり親バカなのね。


屋敷を出る前にエリーナの部屋に行く。


「エリーナ、入っても良いかい?」


「ハルさん?良いよ」


僕達はエリーナの部屋に入る。


「どうしたの?二人とも」


「いつもどこかに出かけてるって聞いてな」


「今日みたいな事があったら行けないから明日、私達も着いていくよ」


「ほんとに!?やったー!なら明日の朝に来てね」


「わかった。じぁまた明日」


僕達はエリーナと約束をし、宿屋に向かう。


「あらおかえり。部屋は掃除してあるよ」


「ありがとう、おばちゃん」


「じぁレイナまた明日」


「うん」




――翌朝――


「おはよーハル」


「おはよーレイナ」


「準備できてる?レイナ」


「うん、髪のセットまでバッチリ!」


「どう?髪型変えてみたんだけど」


「え、あ、良いと……思うよ?」


「ふふっ、ありがとう」


「よ、よし、行こうか」


僕達は屋敷へ向かう。


「ごめんくださーい」


玄関のベルを鳴らすとエリーナが出てきた。


「おはよう!二人とも!」


「おはようエリーナ。さぁ行きましょうか」


「うん!」


「で、どこに行くの?」


「お母さんのお墓参り!」


「それはどこにあるの?」


「森の奥。危ないからお父さんに行っちゃだめって言われてるけど毎日いってるの」


「そうだったの。安心して、私達が着いているから大丈夫」


「うん!ありがとう!」


「よし、じぁ行こうか」


エリーナの案内で森に入った。


「ハル、右前方からゴブリン三体!」


「わかった!」


レイナの指示を受け、僕は脇差を抜き、先手を打つ。


「スラッシュ3連発!!!」


僕はスラッシュを3連続で繰り出し、ゴブリンを全て一撃で倒す。


「わぁ……ハルって強いんだね!」


「そうよ、ハルはとっても強いんだから!教会国にいた時はね……」


「ちょっとレイナ、恥ずかしいから止めてよー」


「いいじゃんハル、私も聞きたい!」


「エリーナもこう言ってることだし良いよね、ハル?」


「あ、はい」




それから僕が恥ずかしい思いをしながらしばらく歩くと、大きなお墓らしきものを見つけた。


「着いたよー」


「おおっ、これが……」


「お母さん、来たよ。今日は命の恩人さんも一緒だよ」


「命の恩人なんてそんな……」


エリーナが目をつむったので僕も手を合わせて目を閉じる。


「あれ?なんでハルは手を合わせてるの?」


「ああ、僕が前居た所ではお墓参り参りのときはこうしてたから癖でね」


「そうだったんだ。じぁ私も」


最後はみんなで手を合わせた。


「ご冥福をお祈りします……」


「ごめーふくをおいのりします」


エリーナが僕の言葉を真似する。


「さぁ、戻ろうか。エリーナ、まだすることある?」


「ううん、もう無いよ」


「じぁ帰ろうか」


ガサガサ……


「誰だ!」


僕がそういうとお墓の裏からピエロのような格好をした1人の男が出て来た。


「どうも初めまして。私は道化の魔術師と申します。エリーナお嬢様を貰いに来ました」


「レイナ、エリーナを頼む」


「うん!」


「エリーナを貰いに来た?どういうことだ!」


「彼女には秘められた力があるのです。それを有効活用しようと思いましてねぇ」


「エリーナは渡さない!」


僕はピエロに斬り掛かる。


すると突然目の前にいたはずのピエロが消えた。


「消えた?」


「ここですよ」


声が聞こえた方を見ると、さっきまでレイナがいた所にピエロがいた。
足元ではレイナが倒れていて、エリーナはピエロに捕まっている。


「ハル!助けて!」


「お前、どうやって!」


「ふふっ、マジックの種明かしはしない主義でねぇ。ではエリーナは貰っていきますよ」


「待て!!」


「さようなら」


ピエロはエリーナを抱えたまま煙幕を投げる。


視界が戻るともうピエロはいなかった。


「クソっ、レイナ!レイナ起きろ!」


「……ん、ハル……」


「エリーナは!?」


「ピエロに攫われた……」


「そんな……私のせいで……」


「とりあえず町長の所に行こう、聞きたいことがある」




僕達はすぐに町長の屋敷に向かった。


「町長に合わせて下さい!」


「町長なら私室にいらっしゃるかと……」


「ありがとうございます!」


僕は町長の私室のドアを開ける。


「町長!エリーナが!」


「む?エリーナがどうした?」


「道化の魔術師と名乗る奴に攫われました!」


「なんじゃと!エリーナが!?」


「すみません、我々がついていながら……」


「仕方がない、道化の魔術師相手ではな」


「ご存知で?」


「ああ、奴はここ最近世間を騒がせておるからな」


「そうでしたか。それとエリーナが攫われたのには深い理由がありそうです」


「理由とな?」


「はい。エリーナには秘められた力がある、そう道化の魔術師が言っていました」


「やはりか……」


「お主らには話しておこう」


「我らメイゲル一家にはある力が宿っていると言われていてな。
その力というものが海神の神殿にある海神の封印を解く力と言うものだ」


「海神……」


「ああ、だがその力はメイゲル家の女にしか宿らないと言われているのだ」


「だからエリーナが……」


「おそらく道化の魔術師は海神を復活させるつもりであろう」


「その海神についてお聞きしても?」


「海神というものはな、かつてこの世界の海で暴れていたと言われる龍のことだ。


それを我らの先祖の賢者メイゲルが討伐しようとしたが、あまりの強さに封印することまでしか出来なかった。


そしてその封印された場所が海神の神殿ということだ」


「なるほど……」


「さて、どうやって娘を助けようか……」


「私達に行かせてください!」


「ちょっとレイナ、流石にそれは……」


「私1番近くにいたのに守れなかった。だから今度は助けるんだ!」


「わかった、お主らに任せよう」


「ありがとうございます!」


「だが相手は道化の魔術師、ギルドにも協力要請するが良いな?」


「大丈夫です!」


「よしじぁハル、明日の朝に出発よ!」


「う、うん……」


レイナは張り切っているが何か嫌な予感がする。


行っても大丈夫なのだろうか……

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