傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

ヘタレは脱出する

「ハルさん!あんた指名手配されてるよ!」




まぁ冷静に考えれば当たり前だろう。
脱獄し、ゲインを脅し、囚人を解放する。
当然指名手配ぐらいされるだろう。


いや、冷静になってる場合じゃねぇ!!
どうしようどうしよう!
安心して町も歩けやしない。


「ハルさん、私のせいで……ごめんなさい」


「大丈夫、僕がやりたくてしたことだから」


カッコつけてそんなこと言ったものの内心はビビりまくっている。


捕まったら今度こそ逃げられない。


「まぁ、俺たち皆指名手配ぐらいされてるから、気にすんな」


そうマックスさんが言うが、
気にするわ!アホか!
こちとら指名手配なんぞされたこと無いんだぞ?ヘタレだぞ?ビビりだぞ?


あ、自分で言ってて悲しくなってきた。


「と、とりあえず私買い出し行ってきます」


「警備が厳しくなってるかも知れないから気をつけてな」


「あ、ハルも着いて行ってやったらどうだ?」


「あ、捕まりたくないんで遠慮します」


「じぁ行ってきます」


そう言ってレイナがアジトを出て行く。




――レイナ視点――


「じぁ行ってきます」


そう言って私はアジトを出る。
誰か着いてきて欲しかったがハルは指名手配されたばっかりで外が怖いらしい。


あまり関わりの無かった私が言うのも何だがハルらしい。


そして私はいつもの八百屋に着く。


「おばちゃーん、こんにちはー!」


「あらレイナちゃん、いらっしゃい。買い出しかい?」


「はい!えっと、これとこれと、あとこれも下さい!」


「はいよ!あ、町を歩くときは気をつけなよ。今日はやけに兵隊が多いからね」


「はい、気をつけます」


私は八百屋を後にし、違う店へと向かう。
すると目の前に武装した坊主の集団が見えた。
私は顔を隠すためフードを被る。


お願い、気づかないで……


そう願って通り過ぎようとすると


ドン!


坊主の1人とぶつかって野菜を落としてしまった。


「おっと、すまない。あ、野菜が落ちてしまっているな」


「いえ、自分で拾うので大丈夫です……」


「遠慮するな、ぶつかったのは俺だしな。ん?お前……」


バレた!


私は野菜を放置し全力で逃げる。


「おい、反教会派のレイナだ!捕まえろ!」


数人の坊主が後ろから追いかけてくる。


私は狭い路地裏に逃げ込んだ。


<a href="//26569.mitemin.net/i331103/" target="_blank"><img src="//26569.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i331103/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>


「どこ行った!探せ!まだ近くにいるはずだ!」


足音がどんどん遠ざかっていく。


「ふぅ……助かった〜」


「とりあえず帰ろう」




――ハル視点――


「レイナ遅いなぁ。何かあったらどうしよう……」


そんなどうにもならない後悔をしているとレイナが帰ってきた。


「ん?買い出しに言ったんじゃなかったのか?」


「途中で教会の人達にバレてしまって逃げてきたの」


「レイナ、大丈夫?」


「うん、大丈夫よ、ハル」


レイナはニコッと笑ってそういうので少し安心した。


「で、ハル、お前はこれからどうするんだ?ずっとここに居てもいいが冒険者だろ?」


マックスさんがそう質問してくる。


「そうですね……ここにいてもまともにクエストも受けられなさそうですね」


僕が迷っているとレイナのお父さんが言った。


「なら、レイナと一緒にこの町を出たらどうだ?」


「「え?」」


僕とレイナの声がシンクロした。


「レイナ、お前はこんな所にとらわれているべきじゃない。だからこの機会にハルさんに連れて行ってもらえ」


「でもお父さんを放ってどこかになんて行けない!」


「俺には反教会派の仲間がいる。そりゃ寂しいがお前の未来を奪う方がもっと辛い」


「レイナ、僕はいいよ。むしろ来て欲しい。でも行くか行かないかは自分で決めて」


「……ハル、私も冒険に連れて行って!」


「ああ、もちろん!」


「お父さん、今までありがとう。私頑張ってくる!」


「そうだ。頑張ってこい」


「さぁ、早速準備して今日の夜に出発しよう」


「わかった!」






――夜――




「さぁ行こうか」


「一つ聞いていい?」


「どうしたの?」


「なんで今日急いで出発しなければならないの?明日とかじゃダメなの?」


「明日以降だとこの町から脱出できない。町のもんにも兵隊を配置すると思うからね。だからある人に頼む」


「ある人?」


「こればわかるさ」


「さぁ今度こそ出発しよう」


「じぁ……お父さん、皆、行ってきます」


「元気でな。風邪ひくんじゃねぇぞ」


「うん!」


皆に見送られ僕達はアジトを離れる。
レイナの顔は見ないでおいた。




――門の近く――


「さぁまずここの宿屋に行こうか」


「なんで宿屋なの?」


「いいからいいから」


ん?女の子にいいからとか言って宿屋に連れ込むなんてレイナに引かれてないかな……
そこまで考えられていなかった……


「お久しぶりです」


僕が話しかけた相手はそう。
最初の町から馬車に乗せてくれたあの魚商人だ。


「おう久しぶりだな。俺のとこに来たってことはまた馬車に乗せて欲しいんだな?」


「はい。ちょっと色々あって指名手配されちゃって匿って欲しいんです」


「は?指名手配?まぁいいだろう。お前は悪いやつじゃなさそうだからな。どうせ教会にハメられたんだろ」


「まぁそんな所です」


「よしじぁ出発するか」


「はい!」


話に参加出来ていなかったレイナが話が終わると小声で話しかけてくる。


「……知り合い?」


「この町に来る時にお世話になった人だよ」


「チッ、女連れて旅とは……まぁいい行くぞ」


何か誤解されているような気がしたが怖いので何か言うのは止めておいた。


――馬車の中――


ガタガタガタガタ……


馬車が止まったら外から声が聞こえてくる。


「おい止まれ!要件をいえ」


「港町に魚を仕入れようと思ってな。
ほら、通行証だ」


「よし、通っていい。と言いたい所だが指名手配犯がいる可能性があるので荷台を確認させてもらう」


「お、おい!そんな者いないから早く行かせてくれ!急いでるんだ」


「少し確認するだけだ」


「クソっ!お前ら捕まっとけよ!」


そう言われて僕達は近くのものに捕まる。
その瞬間、馬車が急発進する。


「うおっ!なぜ逃げる!待て!」


「クソっ!もうこの国にはこれねぇな……」


「僕達のせいで……ごめんなさい!」


「気にすんな、過ぎたことだ」


「追えー!!」


坊主達は馬車に乗って追いかけてくる。


「追ってきてますよ!大丈夫なんですか?」


「ふっ、俺を舐めるなよ。さぁ、しっかり捕まれよ……」


商人さんがそういうとスピードがさらに上がる。


「うおっと、危ねぇ!魔法撃ってきやがったぞ!」


「私が何とかします!光の壁を我らを守らん【光壁】《ライトウォール》!」


レイナが詠唱を終えると、レイナの目の前に光の壁が現れる。
そして迫りくる魔法を防ぐ。


「よし次はこっちの番よ!ファイアーボール!!」


レイナから放たれた火球が坊主達の馬車に直撃する。


「うおああ!?」


坊主達の馬車が動かなくなる。


「よし、逃げれた……」


「よくやったらお前ら、さぁ町に着くまで寝てていいぞ」


「すみません、ありがとうございます」


僕らは疲れが溜まっていたのかすぐに寝てしまった。


――翌朝――


「おい、お前ら着いたぞ」


「ん?ここは?」


「港町ポセインだ。俺はいつも魚を仕入れに来てるんだ」


「よしじぁここまでだ。じぁな」


「ありがとうございました!」


商人さんは海の方に進んで行った。


「さぁレイナ、行こうか」


「うん!」


「あ、レイナって冒険者登録してる?」


「えと、してないよ」


「ならまず冒険者ギルドに行こうか」


「ん?なんか騒がしいな……」


冒険者ギルドに入ると職員さん達が慌ただしく駆け回っている。


「あの……仲間の冒険者登録をしたいんですけど」


「後で良いので討伐隊に参加して下さい!」


「討伐隊?何かあったんですか?」


「クラーケンが目撃されてこっちに向かっているということです」


「「クラーケン!?」」

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