傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

再び地下牢獄へと

ニックス教の地下牢獄に侵入し、僕達はレイナの父親となんとか会うことが出来たが、彼は既に洗脳されてしまっていた。
なので1度戻って作戦を立て直すことにした。


「お父さん……」




「どうしますか、フィリップさん」


「何か洗脳を解く方法を探さないとな……」


「やはり、今の状態で連れ出すのは不味いですよね……」


「どうしましょう……」


「ねぇハル、フィリップ、ゲインの所に行くのはどう?」


「そうか!聖水の製作者なら解除の仕方も知っているかもな」


「なら、1度戻りましょうか。レイナ、残念だけど1度戻るよ?」


「……はい」


僕達は再び魔物が放たれてるあの地下水路を通り、アジトに戻った。


「お前達、どうだった?レイナの親父は?」


「既に洗脳されていて……」


「牧師とゲインの繋がりが見えた。ゲインの所で洗脳を解除する方法を探してくる」


「そうか……なら、俺も連れていけ。
俺のスキルが必要になるはずだ」


「わかった。ゲインの会社はここから近い。明日にでも行こう」


「とりあえず今日はもう休んで明日に備えておけ」


レイナはしばらく無言だった。
その様子はあまりにも悲しそうで見ていられなかった。


「レイナ……」


「ハル……私ね、小さい頃にお母さんが死んでそれからずっとお父さんに面倒見てもったんだ」


「そうだったんだ……」


「だからお父さんは私のたった一人の家族なの……」


父親は彼女にとってたった一人の肉親だったのだ。
そして、その人の変わり果てた姿を見てしまった。
さらには、目の前まで辿り着いたのに助けることが出来なかった。
それはもう辛いなんてものじゃないだろう。


え?僕が彼女にフラれたのと同じ様なものかって?
うるさい!今はそういう話じゃない!


オホン……とりあえず彼女のこんな辛そうな姿は見たくない、だから


「レイナ、お父さんは必ず助かる。必ず助ける。だから今日は休んで明日に備えよう」


「ハル……ありがとう、元気でたよ」


レイナはそう言ってニコッと笑顔を見せる。僕はそれを見て安心する。


「じぁおやすみ」


「おやすみなさい」


――翌日――


「じぁ作戦を説明する。今回の作戦は2つある」


作戦1
反教会派の仲間達が聖水の製作所の前で暴れて注意を外に向ける。
そしてマックスのスキルを使い、裏口から入り、聖水に関する書類を探す。
暴動を起こす人は危なくなったら逃げる。


作戦2
ゲインを脅して直接聞き出す。


「わかったな?」


「はい!」


とは言ったものの作戦2、あれは最早作戦と言えないんじゃないか?
まぁ少し不安はあるが、強力な助っ人がいるから恐らく大丈夫だろう。


「今日の日暮れとともに決行する。それまでに準備をしておけ」


「レイナ、絶対に成功させよう」


「うん!」


――夕方――


「もうそろそろだ、お前達準備はいいか!」


「「「おう!!」」」


「良し!暴動班、行け!!」


フィリップの合図とともに十数人の人が制作中の前で暴動を起こす。
すると中の職員達が続々と出てくる。


「よし、行くぞ」


その隙を見計らって僕達は裏口に到着する。


「マックス、任せた」


「おうよ、解錠アンロック!!」


ガチャン!


重い音がして、裏口の扉の鍵が開かれる。


「さぁ、行くぞ」


そう言って僕達は聖水の製作所に入った。
すると


「え?」


目の前にゲインがいた。




「お、お前達どうやってここを開けた!!」


「クソっ!お前達、作戦2だ!まず捕まえろ!」


「すみません!」


僕はそう言って脇差を鞘に入れたまま、ゲインを叩く。


「くっ……ウォーターボール!」


「ぐあっ!」


ゲインの右手から水弾がゼロ距離で発射される。
鈍い痛みが胸に広がる。


「ハル!」


「目の前の敵に集中しろ!」


フィリップはそう言って、ゲインにラッシュを浴びせる。


少しするとゲインは気絶した。


「ハル、今治すからね!」


「汝の傷を治せ、ヒール」


レイナの両手から溢れる優しい光が僕の傷を治していく。
少しずつ痛みが引いて行く。


「ありがとう、もう大丈夫だよ」


「さぁ、こいつをどこかに移動させて洗脳の解除方法を聞き出すか」


僕達はゲインを倉庫に連れていった。


「とりあえず起こすね、シャワー!」


言葉通りシャワーのように水がレイナの右手から発射される。


「ぷはっ!ここは……?」


「あんたの工場の倉庫さ」


「お、お前達!目的はなんだ!」


「あの聖水の洗脳魔法の解除方法を教えろ」


「なぜお前達が魔法のことを……!」


「言え、さもなくばわかってるな?」


「ふっ、そんな脅しが聞くとでも?」


これは虚勢だ。同じ臆病者だから分かるのだろうか。とりあえず分かるのだ。
彼は今相当怯えている。


「……彼、虚勢を張っていますね。畳み掛けましょう」


僕は小声でフィリップに進言する。


「そうか、なら俺達が本気ってことを見せてやらないとなぁ?」


「ひっ……!」


「わかった、わかった!言うから許してくれ!」


彼はフィリップのマジキチスマイルに負けた。
正直味方の僕も怖かった。
この人何やってた人なんだろう……


「お、それは良かった。無駄な死人を出したくなかったのでな」


「それで?どうやるんだ?」


「専用の解毒剤がある!それを使えば洗脳は解ける!」


「それはどこにある?」


「ニックス教の地下牢獄の最下層だ」


「それは本当だな?嘘をついたら分かるよな?」


「ああ本当さ、だからもう解放してくれ!」


「わかったよ。じぁな」


ゲインを解放し、外に出ると既に暴動班は逃げていた。


「よし、アジトに戻ろう」


「いや、このまま地下牢獄に行こうよ」


レイナは父助ける方法が見つかって、今すぐにでも助けに行きたいらしい。
なら僕のすることは1つだ。


「僕も賛成です。レイナのお父さんがいつ何されるか分かりません。ゆっくりしていたら手遅れになるかも知れません」


「お願い……」


「ハァ……わかった。行くぞ」


今回は僕、レイナ、フィリップ、マックスの4人で地下牢獄へと向かった。


「出たぞ!気をつけろ!」


僕達はまず、地下水路を通る。
途中で出てくる魔物は3人の連携で難なく倒せる。


「さぁ、着いたぞ」


今回の作戦はこうだ。
まず最下層の倉庫へと向かう。
そこでマックスのスキルを使い、解毒剤を手に入れる。
その後上に行き、特別房へと向かう。
今回は時間等に余裕がないため、囚われている別の囚人を解放することは出来ない。 
レイナの父親を解放したら、再び地下水路を通ってアジトへと戻る。
こういったものだ。
果たしてこう上手く行くだろうか……




――地下牢獄――


1度来たことがあるので道は覚えている。
まず僕達は最下層に向かわなければならないので下への階段へ向かう。


階段を降りている最中、坊主と出くわしてしまった。


「待てー!」


僕達は下へ下へと逃げていく。
最下層の1つ上の階層まで来ると坊主は何かに怯えるように帰っていった。


「なんだかよく分からんが諦めてくれたようだ。さぁ、行くぞ」


階段を降り、とうとう最下層へと辿り着く。


「解毒剤の倉庫を探さないとな」


「辺りにそれらしい物はないが……」


ガルルルルル……


目の前に突如、巨大な獣が現れた。


「フハハハハ!
お前達が来るとゲインから連絡があってな。
解毒剤をこいつらに持たせたのさ!
これでお前達は解毒剤を手に入れることが出来まい!
残念だったな!大人しくここで死ね!」


「クソっ!一旦上に逃げるぞ!」


「させねぇよ」


ガチャン
ヒュー
ドガアアン!!


僕達が入ってきた階段が閉じられて通れなくなってしまった。


「フィリップさん、あの魔物は?」


「ギガントタイガー、ギルドではCの上位のモンスターとしている」


「Cの上位……」


僕は今ランクは鋼、とうてい敵う相手じゃない……


だが逃げ場はない


「皆、やるしかないよ」


「え?でも……」


「あいつを倒して解毒剤を奪う。そしてレイナのお父さんを助ける!」


「レイナ!後衛は任せた!フィリップさん!」


「あぁもう仕方ない!わかった行くよ、ハル!」


僕とフィリップさんは左右に分かれてギガントタイガーに突進する。


「スラッシュ!!」


僕は柵を足場にジャンプし、スラッシュを発動する。
そしてフィリップさんは炎のラッシュを浴びせ、レイナは魔法を浴びせ続ける。


が、まったく効いていない。


今度は自分の番だ、とばかりにギガントタイガーが爪を振るう。
それを僕達2人は避けた、
はずだった。


ギガントタイガーは爪から風の刃を発生させたのだ。 


僕達はそれをまともに受けてしまい、牢獄の壁に打ち付けられる。


僕はなんとか立とうとするが、ダメージが大きすぎて上手く立てない。


ギガントタイガーはもう用済みと言うのか僕を無視し、レイナの元へと進んで行く。


「やめて、こないで!!」


レイナはひたすら魔法を浴びせ続ける。


だがまるで応えていない。


ギガントタイガーの爪が振り上げられ、
レイナ目掛けて振り下ろされる。


「やめろおおおおお!!!」


ザシュッ!

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