傷心ヘタレが異世界無双!?~ユニークスキル【臆病者】って馬鹿にしてる?~

ユーガ

ヘタレは牢獄へ

「ここにハルという冒険者はいるか」


坊主がそう言うとここにいる全員の視線が僕へと向けられる。


「お前か」


「は、はい、そうです……」


「お前を反教罪として連行する」


「!?そ、そんなつもりは無いのですが……」


「教祖様からの命令だ。大人しくついてこい」


そう言われて連れていかれた先は牢獄だった。沢山の人が既に牢獄にいた。


「ここに入れ」


中に入ると思うより暗く、ジメジメとしている。


「3日後に尋問があるからそれまで大人しくしてるんだな」


そう言って坊主は去っていった。


どうしよう……捕まっちゃったよ……尋問とか言ってたし、ああもう!怖ぇよ!


「新入りか」


「うわっ!!」


暗闇の奥から突然声が聞こえてきたので声を上げてしまった。


「はい。あなたは?」


「俺は2日前からここにいるマックスだ。驚かせてすまんな。」


「ところでお前はなぜこんな所にきた?」


「教会のことについて調べていたら反教の疑いをかけられまして……」


「そうだったのか、災難だったな」


「ちなみにマックスさんは?」


「俺は反教会派でな、少しヘマをして捕まっちまった」


「そうでしたか……」


「……ところでお前、戦えるか?」


「ま、まぁ一応冒険者なので」


急にマックスさんの声のトーンが下がって小声になった。


「なら、一緒に脱獄しよう」


「え?」


突然の誘いに戸惑ってしまう。


「俺は明日尋問なんだ。
しかし、尋問に言ったやつは全員ニックス教を信仰するようになって帰ってくる。それじゃ不味いんだ」


「全員が……?」


「ああ、そしてそいつ等は皆決まって『もっと聖水をくれ……』だとか言って、まるで話が通じない」


「やはり聖水には何か裏がありますね?」


「やはりということはお前も気づいていたか……そうだ、あれは洗脳の魔法がかけられているみたいだ」


洗脳の魔法か……
やっぱりヤバい薬だったのか
ならこのままいけば僕も洗脳されて坊主になってしまうのか……


「どうだ?やってくれるか?」


「洗脳されたくありませんし、お願いします!」


「そう言ってくれると思ったよ」


「あ、ちなみにどうやってでるんですか?」


「俺は昔盗賊をやっていてな、【解錠】のスキルでどんな鍵でも開けられるんだ」


「どんな鍵でも開けられる?ならなぜ1人で出なかったのですか?」


「それはな……こっちへ来てみろ」


そう言われて近づくと彼の顔まで見えるようになった。よく見ると彼の先程の質問の答えがわかる。
彼は左腕が無かったのだ。


「そ、それは?」


「昔盗みに入った場所で捕まってな」


「そう、でしたか……」


「俺はこんなんだから戦えない、だからお前に協力して欲しい。あと、下に俺の仲間がいる。そいつも助けに行きたい」


「わかりました、協力しましょう」


こうやって僕はマックスと脱獄をすることを決めた。
正直見つかったらと思うと怖いが、洗脳の方が怖いので勇気を出す。




彼の作戦はこうだ。


まずマックスが見張りが回ってきたタイミングで鍵を開け、その瞬間僕が見張りを倒し倉庫の鍵を奪う。


倉庫の鍵を奪ったら倉庫に向かい、自分たちの荷物を回収する。


その後下の階層でマックスの仲間を解放してから上へと向かい、外に出る。


「作戦実行は今日の夜だ。いいな」


「はい……大丈夫です」


とうとう決行する時がやってきた。この時まで気が気でなかった。今でももし失敗したら……なんて考える。


「落ち着いて行動しろ」


「わかりました。あ、来ました!」


コツコツコツ……
と見回りの足音が少しづつ近づいてくる。
ゴクリ……
と僕は唾を飲む。


「今だっ!解錠アンロック!!」


「すみません、少し眠ってもらいます!」


「お前達っ……」


「ふぅー、上手くいった」


「気を抜いている暇はないぞ、次は倉庫だ」


見回りから鍵を奪い、倉庫へと向かう。 


「見張りが1人……入口にいるな」


「頼めるか?」


「やってみます!」


「動くな、声もあげるな、さもなければお前の命はないぞ」


見張りは無言でコクコクと頷いた。


僕はビビる気持ちを顔に出さないようにして見張りに脇差を向ける。


「僕達の荷物はどこだ」


見張りが指さした場所の棚を片っ端から開けていく。時間はない、自然と焦って上手く棚が開けられない。


「落ち着け、焦るとかえって遅くなるぞ」


1度深呼吸し、再び棚を確認していく。


「ありました!」


「俺もだ。さぁ次は下だ」


僕達は見回りの目を避けながら下へと向かった。


「まずは看守室からあいつの房の鍵を手に入れないと」


「僕がいきます……」


看守室には坊主が2人で、鍵は奥にあるな。
いけるか……?
いや、もうここまできたらやるしかないんだ!


僕は覚悟を決め、看守室へ飛び込む


「誰だっ!!」


「ごめんなさい!」


僕は脇差を抜き、峰打ちで2人を気絶させる。
そして奥にあった鍵を手に入れた。


「さぁ!行きましょう!」


看守室から鍵を持って房へ向かう。


「助けに来たぞ、フィリップ」


「マックス!?どうやって?」


「話は後だ、とりあえずここから出るぞ」


「どうするんだ、そろそろ異変に気付く奴らもいるんじゃないか?」


「ふっ、こうするのさ」






「「「うおおおおおおお!!!クソ教がああああ!!!」」」


ドドドドド!!!と足音が牢獄いっぱいに響き渡る。


マックスは囚われていた人達を洗脳された者以外、全員解放したのだ。


流石にここまでの人数となると教会だって太刀打ち出来ない。
なので解放してからは簡単に外に出ることが出来た。




外に出た後、フィリップさんに僕の自己紹介とどうやって彼の元まで辿り着いたかを話した。






「ありがとうございました!お陰で外に出られました」


「俺だってお前がいなかったら脱獄なんてできなかった、ありがとう」


「助けに来てくれてありがとうな!マックス、ハル!」


「おい、ハル」


彼らと別れようとすると引き止められた。


「これからお前は今回の騒動の主犯格として教会から追われることになる。
だから身を隠す場所が必要だ。
そういう訳で俺達と一緒にこないか?」


「そりゃそうか……はい、行かせてください」


そうして僕は彼らの、反教会派のアジトに行くことにしたのだった。




「着いたぞ。ここだ」


「え?」


着いたと言われた場所は路地裏のゴミ捨て場だった。


「どこがアジトなんですか?」


「秘密の入口があるのさ」


「ついてこい」


そう言ってマックスとフィリップはなんと大きなごみ箱の中に入っていった。


「おーい、早くこーい」


「えー!?ごみ箱!?」


「ええい!どうにでもなれ!!」


ごみ箱に飛び込むと大量のクッションの上に落ちた。


「ここが……反教会派のアジト……」


「皆ただいま!」


「紹介しよう。俺の脱獄を手伝ってくれた、冒険者のハルだ。しばらく彼はここで匿おうと思う。仲良くしてやってくれ」


建物の中にいる人達全員の視線が僕へと向けられる。


き、緊張する……


「よ、よろしくお願いします」


僕が反教会派の人達に挨拶をしていると


「ハル……?」


「レイナ……?」


レイナと再開した。

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