魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!

ユーガ

第19話『加護』

「バウッ!!」


 狼は何の抵抗も無しに男を食べ始めた。

 狼はみるみる傷が癒えていき、それどころか魔力がどんどんと禍々しく変わっていく。



「グガァァァァゥ!!」


 狼が男を食べ終えると、むくりと立ち上がる。


 二足歩行に変わっただと?

 そして何だあの禍々しい魔力は……


 狼は体から赤黒いオーラを出している。

 体格も熊よりガッチリしていてかなり威圧感がある。



「なんだあの化け物……」


「あんなの勝てるわけがない……」


「母さぁぁん!!」


「うわぁぁぁぁ!!」


「待て! 慌てるな!」


 隊長は何とか落ち着いて周りに指示だそうとするが兵士たちは完全に戦意喪失している。

 中には腰を抜かした者もいて退避すら出来そうにないみたいだ。



「グルルル……ガァッ!!」


 狼は地面を蹴り、一瞬で俺との距離を詰める。

 ギラりと光る爪が伸びてくる。



「【風刃】」


 俺は風の刃を爪にぶつけて、軌道を逸らす。

 爪は俺の頬を掠めて通り過ぎる。


 ゴォッ!! という音が背後から聞こえる。

 振り返ると爪の延長線上にあった建物が燃えだしたのだ。



「そっちは飛ぶ炎の爪かよ……」


「グルルル……アォーーン!」


 狼が遠吠えを上げると狼の皮膚が若干光を帯びている赤に染まり、熱を放出する。

 そして赤黒いオーラと共に蒸気のようなものまで出ている。



「熱いものは冷やすだけだ! 【吹雪ブリザード】」


 俺は氷を降らし、風を操作して吹雪を巻き起こす。

 吹雪と言うよりかは雹だな。


 しかし、それらは狼の発する熱で簡単に溶けてしまった。

 あの氷はただの氷ではなく、魔力で状態を維持しているものなのに、だ。


 まずいな……近接戦闘はかなり厳しいぞ……



「アォーーン!」


 再び狼が遠吠えを上げると、今度は村中の炎が狼の頭上に集まっていく。

 そして炎は太陽のように球状になる。


 赤々と燃える火球と発熱する狼で辺りの気温はかなり上がっており、俺も汗がダラダラと流れている。



「ガルルッ!!」


 そして、狼は再び突進してくる。

 あまりの熱さに頭が回らないのか俺の回避は少し遅れてしまう。


 燃えるような熱を帯びた狼の突進を受け、俺は火傷を負いつつ、吹き飛ばされる。

 そして、今度は燃え盛る炎の塊が飛んできた。



「【多重結界】 【風槍エアリアル・ランス】」


 俺は多重結界で防御を固めつつ、風の槍を生成する。

 細長い形の槍だ。


 風の槍を作り終えると同時に炎の塊が俺に命中し、爆ぜる。


 視界が真っ赤に埋め尽くされ、膨大な熱が俺の皮膚を焼く。

 多重結界を使ってもなおかなりの怪我を負ってしまう。


 しかし、やられっぱなしではやってられない。

 俺は用意していた風の槍を高速で放つ。



「ガウッ!?」


 狼は危険を察知するがもう遅い。

 狼の脇腹に巨大な風穴が空いた。


 俺が生成した風の槍は小さなものだったのだが炎の塊の熱のおかげで膨張し、巨大な槍となったのだ。



「さぁ、仕切り直しだ!」


「グルォォォン!!」


 狼はさらに熱の放出を強める。

 空気がよりいっそう暑くなり、呼吸するのも苦しくなる。



「くっ! 暑すぎる……! ん?」


 俺があまりの暑さに悪態をついているとペンダントから光が発せられているのに気づいた。


 この感じ……遺跡の時と同じ……!

 でも一体何に反応しているんだ?



「グルル……」


 狼はその光を見ると、後退りしながら唸った。

 明らかにこの光を嫌がっている。


 そして熱の放出も心無しか弱くなっている。

 よく分からんが決着をつけるなら今しかない!



「やっぱりこの光が出てくると力が溢れるな! 吹き荒れろ、地獄の風【獄嵐ヘル・テンペスト】」


 俺は残りの全魔力を用いて最上級の風魔法を発動する。


 辺りが分厚い雲に覆われ、暗くなる。

 凄まじい勢いの風が狼を切り刻み、数十もの雷が狼を焼く。


 風と雷が起こした音が収まり、静寂が辺りを包む。

 俺は倒れている狼のもとへと歩いていく。

 ザッザッザッと足音だけが聞こえる。



「勝った……みたいだな……」


 狼が絶命しているのを確認し、俺はその場に倒れ込む。

 魔力を全て使い果たしてしまったので意識が遠のいていく。



――――


 柔らかい。

 地面で意識を失ったはずなのに気がつくと何か柔らかいものに包まれている。

 ああ、ベッドにでも運ばれたのか。


 まだ寝足りない気もするが俺は目を開ける。



「あ、気がついた。大丈夫?」


「ん?」


 目を開けるとすぐにミリアの顔が目に入った。


 これってどういう状況?

 ん? あれ、もしや……膝枕!?


 俺はガバッと飛ぶように起き上がる。

 周りを見渡すと普通の宿屋のような部屋だった。



「怪我人がそんなに暴れちゃダメだよ?」


「だ、大丈夫だ。で、状況を説明して欲しいんだけど」


「うん。戦いの後、エインさんが倒れていたダイゴを治療院まで運んでくれたんだよ。その後治療院で治療して、被害のなかった西の宿屋に来てるんだよ」


「なるほど。エインさんには感謝しないとな……あ、マックスは?」


「マックスは一命は取り留めたけどかなり危なかったみたい……」


「そっか。じぁマックスの見舞いに行ってくる」


「ダメだよ! 今日は一日安静にしてて!」


「でも時間も無いし……」


「ダメ!」


「でも……」


「絶対にダメ!」


「はい……」


 うぅ、ミリアに押された……

 それはともかく、とりあえず一件落着なのかな。


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