魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!

ユーガ

第17話『狂信』

「君は僕の邪魔をするんだね?」


「ああ、そうだ!」


「なら……」


ゾオッ!!


突然仮面の男から凄まじい殺気が放たれる。

俺は危険を感じ、結界を目の前に張った。



「死ね」


ガキィンという音と共に結界に大きなヒビが入る。

結界に防がれた狼は悔しそうに少し唸り、後ろに下がる。


よく見ると男がさっきいた場所からいなくなっている。

急いで魔力感知で探すが見つからない。



「【切断】」


「何っ!?」


声が聞こえた方を見るとと、仮面の男が斧を振りかぶっていた。

男は小柄な体つきからは考えられない程の速度で力強く巨大な斧を振るう。


俺は倒れ込むように前にかがみ、何とか直撃を避ける。

頭上を巨大な斧が風を切る。



「今のを避けるのかぁ? 絶対首をはねたと思ったんだけどなぁ」


「お前……」


「ガルルルッ!!」


「そっちは想定内だ! 風よ、【風刃】」


俺は飛びかかってくる狼に風の刃を複数繰り出す。

風の刃は不規則に飛び、狼の皮膚を切り刻む。


狼は魔力感知で追えるが男は魔力感知を掻い潜って攻撃してくるなんて……

一体どうやってそんなことしてるんだ?

あいつにも多少なりと魔力はあるはずだ。



「まだまだぁ! 今度は防ぎきれるかな? 【乱斧】」


男はまたもや魔力感知を掻い潜って頭上に移動していた。

そして斧を高速で振り回す。


俺は剣でそれを防ぎつつ、狼を警戒して背後に結界を張る。

斧は一撃一撃が重く、俺は防ぎきれず少しづつ後退する。


それから距離をとっても男は近づいて【乱斧】を放ってくるので少しづつ体力が削られていく。



「そろそろか……【形状変化】、そんでもって【質量増加】」


俺は準備していた物の形状を変える魔法と質量を増加させる魔法を発動する。

俺は腰に差していた短剣を細長くして斧に絡みつかせ、さらにそれを最大限重くして男が斧を持てなくする。



「何だって!?」


斧を手放し、丸腰になった男は一旦距離を置こうと狼の側へと後退する。

残念ながらその行動は読めている。



「結界魔法起動【罪人の牢獄】」


俺は狼を中心とした特殊な結界を発動する。

男は閉じ込められたが、全く動じていない。



「何のこれしき! やれっ!」


男が支持すると狼は魔力を額に集める。

するとすぐに狼の頭部が赤くなり、熱を帯びる。

そして赤熱した頭部で結界に突進する。


普通の結界ならばこれで簡単に壊れてしまっていただろう。

だが、これは特殊な結界だ。



「キャイン!!」


狼は結界に触れた途端、逃げるように後退した。

そう、この結界の壁と天井には高圧電流が流れているのだ。

それに触れたら一溜りもないだろう。


だが、一つだけ弱点がある。

床は電流が流れていないのだ。

流すことも出来るのだが拷問チックで俺はあまりしたくない。



「何だって……? こんな結界が扱えるなんて……」


「お前の連撃を防いでる間に準備していたさせてもらった。さぁ、アンジェロに聞きたかった事をお前に聞こう。黒幕は誰だ?」


「アンジェロ……だって?」


「ああ、ラッカーナで悪さしていたから退治させてもらった。その仮面から察するにあいつの仲間だろ?」


「アンジェロが……やられた? そんなバカな! あいつは第二部隊のエリートのはず……!」


「第二部隊、つまり部隊が沢山あるのか……」


「何より、あいつは俺の戦友だ……貴様は絶対に殺す!!」


その瞬間、俺の本能が警鐘を鳴らす。

俺は無意識的に【硬化】を発動しつつ、その場から飛び退く。


ドォォォン!!


結界もろとも地面が爆ぜる。

俺は家屋の残骸に身を隠すが、爆風で吹き飛ばされそうになる。



「絶対に……許さん……あいつの仇は僕がとる!」


煙が晴れると、男は仮面を外していた。

男は幼い顔つきだが、その目には怒りと憎しみしか宿っていない。



「ゴガァァァァ!!」


そして狼も体が一回り大きくなり、牙や爪もより長く鋭く変化している。


仮面を外したらパワーアップするので間違いないみたいだな……

それに魔力の質も量もさっきまでとは大違いだ……



「ダイゴ! 大丈夫!?」


「加勢するにゃー!」


 すると、ミリアとマックスが怪我人を運び終えてこちらに戻ってきた。

 後ろには多くの男達を連れている。



「ああ、何とかな。気をつけろ、こいつはヤバい……」


「分かった。じぁ狼は私達に任せて!」


「分かった。行くぞ!」


 俺は【縮地】で男の背後に移動する。

 そして氷塊を周りに多数生成する。



「これで頭冷やせ! 【氷雨】」


 俺は氷塊を一気に男めがけて放つ。

 氷塊が男のすぐ近くまで辿り着き、命中するかと思われた。



「【円斧】」


 男は斧を頭上で高速回転させて、氷塊を防ぐ。

 やはりそう簡単にはいかないか……



「おぉっ!!」


 男は地面に斧を叩きつけ、土煙に隠れる。

 魔力感知で探してみるがやはり見つからない。



「ゴホッゴホッ! さぁ、どこから来る……」


 魔力感知に反応しないなら五感を使えばいいだけだ。

 俺は深呼吸し、五感を研ぎ澄ます。


「よっ!」


 背後から風を切る音が聞こえてきたので俺はジャンプして避けると、斧だけ、、、が通り過ぎていった。



「まさかっ!?」


「【爆砕拳】」


 男は俺が逃げた空中で待っていた。


 そして真っ赤に燃える拳で俺の腹を殴る。

 拳が俺に触れた瞬間、巨大な爆発が巻き起こった。



「がはっ!!」


 俺はパンチと爆風に吹き飛ばされる。

 爆発で俺だけでなく男もで火傷を負っている。


 そして、再び男は俺に接近する。

 俺の目の前で斧が男のもとに戻ってきて、男はそれを掴み、振り上げる。



「こんな所でやられるかよ!! 【大地の鉄拳】」


 俺が魔法を発動すると、魔法陣の中の地面から土の拳が飛び出し、男を空高く打ち上げる。



「まだまだ! 【雷神の鉄槌】」


 今度は空に魔法陣が生まれ、鼓膜が破れるような雷鳴と眩い光を伴って巨大な雷が男を地面に叩きつける。



「はぁはぁ……どうだ!」


 この2つの魔法は上級かその上に位置するほどの魔法なので魔力消費量が凄まじい。

 俺は魔力の使いすぎでフラフラになりながらも男のもとに近づき、斧を奪う。



「僕は……任務を……遂行しなきゃ……いけないんだ……」


「何故そこまでして任務を遂行しようとする。お前達の目的は何なんだ!」


「僕達は……あの方の物……作られた存在……」


「作られただと……?」


「あの方こそが……世界を救う……それに仇なす物は……全て悪……滅ぼさなければ……僕が……」


「……ちょっと寝てろ。【パラライズショック】」


 俺の麻痺電撃で男はビクン、と一瞬で痙攣して気絶する。

 おそらくこいつらは洗脳されている。

 そうとしか考えられない発言ばかりだ。


 あの方って誰なんだ?

 アンジェロは確か大司教だとか言ってたな。

 邪教か何かって言う説が一番有力だな……



「さて、あちらの手伝いでもするか」




◇◆◇◆ミリアサイド◇◆◇◆


――ミリア達が戻ってきてすぐ



「うぅ、恐ろしい狼にゃ……」


「怯んじゃだめ。ダイゴに任されたんだからちゃんと私達も出来るって所見せないと!」


「里を守るぞ!!」


「「おぉ!!」」


 私は槍を構え、左から狼に接近する。

 狼の目はミリアを追っている。



「せやぁっ! りゃぁっ! そりゃぁ!」


 私は縦、横、突きを連続で繰り出す。

 しかし狼はそれをステップで軽々と避ける。



「ミリア殿が引き付けている間に! 全員、放てぇぇ!! 」


 エルフ達は魔法で炎を纏っている矢を一斉に放つ。

 矢の雨が狼に降り注ぐ。



「アオーン!」


 狼が遠吠えをすると真紅の毛がさらに赤くなる。

 そして、狼を中心に炎の渦が生まれ、矢は燃やし尽くされてしまった。



「グルルルァァ!!」


 炎の渦の中から狼の咆哮が聞こえる。

 私達は炎の渦のせいで狼に近づけないので少し距離をとる。



「準備出来たか? よし、放てぇぇ!!」


 今度は水の魔法を付与された矢が炎の体育会TVに向かって放たれる。

 あの量では火は消えないと思うんだけど……



「キャイィン!」


 何と今度の矢は狼に命中した。

 あの水は炎を消すたためでなく、炎の渦で矢が焼かれないように付与されたものだったのだ。


 炎の渦が消え、狼の姿が見えたが、矢はほとんど刺さっておらず、目立った外傷も無い。



「タフだね……」


「タフだにゃ……にゃ!? 逃げるにゃ!!」


 私は突然マックスに突き飛ばされた。


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