魔法使いが迫害される世界で賢者の弟子になります!
第16話『襲撃』
「で、どうするの!」
頭にマンガで見るような巨大なたんこぶが出来ている俺とマックスは正座して作戦を練る。
「正直ここの檻は簡単に出れる。でもあまり脱獄はしたくないな」
「どういうこと?」
ミリアさん目、目が怖いです!
俺は恐る恐る話す。
「ここのエルフ、いやこの世界のエルフ達はまだ人間に対して偏った考えを持っている事が分かった。だから、その偏見を放置して出ていくのは気が引けるって言うか……」
「確かにそうだけど難しいと思うけど。私達人間がエルフを攫っていたのは事実だし」
「でも、今は違うってことを分かってもらえれば!」
「楽観的すぎるよ。そう簡単に人の考えは変えられないよ」
「……」
「でもまぁもう少し様子を見ようか」
「ミリア……」
「むにゃむにゃ……お魚ぁ」
マックスはいつの間にか寝てしまっていた。
しかも正座したまま。
「こいつは呑気だな、おい」
「もう一発いっといた方がいいかな?」
「止めてあげてください」
「冗談よ。とりあえず今日は寝よう」
「そうだな」
でも勇者はなんでここを天国って言ったんだろうか。
霧の奥ってここしか無いよな……
エルフの里だから天国なんだろうか。
ま、考えても分からないし寝よっと……ああ、床が固い……
――翌朝――
「起きろ、貴様ら!」
俺は中年の男に起こされた。
エルフはやはり美形が多いらしく、この男もかなりダンディーで体もガッチリしている。
相当モテるんだろうな……
「この牢は目覚まし付きなのか?」
「何を寝ぼけている! 霧の調子が悪くなったんだよ! 貴様らのせいだろ!」
「何もしてませんよ。ちょっと見てきて良いですか。俺は魔法使いなんで何か分かるかも」
「……仕方ない。その代わり付き添いが数人いるから逃げ出そうなんて考えないことだな」
「逃げませんよ」
それから俺は村の中心にある霧の発生装置に案内された。
こういう所チョロいな……
そこには直径数メートルの巨大な魔石が置いてあった。
このサイズの魔石がとれるのは数十メートル級の魔物を倒さないと出てこないぞ……
「この魔石はどうやって?」
「勇者様がこの村のためにくださった上に霧を発生させる魔法まで発動させてくださった」
「なるほど……勇者はやっぱり凄いな。誰か操作出来る者は?」
「いる訳ないだろ。こんな高度な魔術扱える方がおかしいのだ」
「うーん、見た感じこいつ自体には異常は無いな。だが……」
「だが?」
「外から少しづつ攻撃されていたんだな。大分力を失ってるぞ」
「外から攻撃だと!? まさか、ここがバレていたのか?」
「いや、だったら重点的にここを狙うだろ。ここら一帯に満遍なく攻撃していることから察するにバレてはいない」
「よかった……」
「だが、このままだと直にバレるな。でもこんな魔法を阻害する方法なんて聞いた事ないぞ……?」
「おい、直せるのか?」
「いや、無理だな。無理矢理壊されたのなら直せたんだがこいつはじっくりと魔法を発動出来ないようにされている」
「そんな……」
「敵は霧が無くなったら一気に攻めてくるだろう。急いで準備をしろ。俺達も加勢する」
「お前達も? 何故だ? これは我らの問題のはず」
「困っている人がいたら助ける、別に普通だろ」
「人族の中にもお前みたいな奴もいるんだな」
「まぁな。さぁ急げ! 夜には霧は完全に無くなるぞ!」
「分かった!!」
さて、ミリアとマックスを迎えに行って俺達も戦う準備だな。
こんな高度な魔術阻害をしてくる敵だ。
かなりの強敵だろう。
俺は地下牢に向かった。
ミリアとマックスはまだ寝ている。
「ミリア、マックス! 出るぞ!」
「ダイゴ? 結局脱獄するの?」
「違う。ここにエルフを脅かそうとしている者達が攻めてくる。俺達も戦うぞ」
「よく分からないけどエルフのピンチなんだね?」
「僕も戦うにゃ……でももうちょっと寝るにゃぁ」
「お前は早く起きろ。ちょっと調べたいこともあるしな」
俺はそう言って牢の扉を開け、自分達の荷物を持って森に入る。
まだ霧は残っているが少しづつ薄れていく。
これは本当に急がないとな……
「ここら辺にあるはずなんだよな……」
「ねぇ、何を探してるの?」
「魔石だよ。魔物が落とす小さいやつ」
「そんなもの探してどうするの?」
「あとで話す……あった!」
俺は1cm程度の魔石が複数個落ちているのを見つけた。
やっぱりあったか。
「ただの魔石じゃん。それがどうしたの?」
「拾って売ってお金にするのかにゃ?」
「本当にただの魔石に見えるか? よく見てみろって」
俺は魔石を2人に手渡す。
これは魔力を感知しないと中々気づきづらいんだよな。
「分かった!! 色がちょっと違う!」
「ほんとにゃ! ちょっと赤黒いにゃ!」
「正解だ。凄いな」
「でもそれがどうかしたの?」
「この魔石の魔力反応は普通の魔石とは違うんだ。おそらく霧が晴れてきたのもこの魔石が原因だと思う」
「どういうこと?」
「簡単に言うとこの魔石が魔法の発動を阻害している。一つ一つの力は弱いが量が多くて浴びる時間も長いと突然魔法が使えなくなるという事もある。それが今回だ」
「なる……ほど」
「何でそんな魔石があるにゃ?」
「エルフの里を狙っているヤツらがばら撒いたんだろう。だがこんなものを作れる技術力を持っているってことはかなりの強敵だろうな」
「なるほど……」
「さぁ、村に戻ろう」
俺達が村に戻ると既に村中の人が武装していた。
弓、槍を装備しているものが大半だ。
「準備は出来ているか?」
「ああ、もちろんだ。村中の者が戦えるぞ」
「それは頼もしいな」
「お前達も頼りにしている。さぁ、そろそろ日暮れだ! 全員配置に付け!」
「「おぉ!!」」
ここの村は統制がよく取れている。
男の指示で全員が散らばって行った。
「あ、今更だけど名前は?」
「俺はエインだ。お前達は?」
「ダイゴだ」
「ミリアだよ」
「マックスだにゃ!」
「ダイゴ、ミリア、マックス。頼んだぞ! 俺たちと共に戦ってくれ!」
「「「おぉ!」」」
俺達は北の櫓で敵の襲撃に備える。
まだ敵は来ていない。
辺りは何の音もせず、張り詰めた空気が緊張感を高める。
すると、西の方からカンカンと甲高い音が聞こえてきた。
来たか。
「敵発見の報告! 方角は西北西!」
「了解!」
俺達は発見の報告があった方に向かう。
既に先からは戦っているような音が聞こえてくる。
戦いが目に見える距離になってきたその時、巨大な音と共に火柱が立つ。
「くそっ、急ぐぞ!」
「うん!」
そこには大火傷を負ったエルフ達が転がっていた。
近くの建物は燃え尽きていて、少し離れた建物にも引火している。
「大丈夫か!? 敵は、敵はどこだ!」
「仮面……狼……うっ!」
「しっかりしろ! くそっ、どこだ!」
俺は魔力感知で一帯を感知する。
必ずどこかに潜んでいる筈だ!
「っ!? 上かっ!」
「ガルルッ!!」
俺が上を見ると大きな口を開けて牙をむいている狼が向かってきていた。
俺は急いでその場から飛び退き、難を逃れる。
「おぉ、今の良く避けたねぇ! 絶対決まったと思ったんだけどねぇ!」
振り返ると真紅の毛に覆われた巨大狼とそれに乗った仮面の男(の子?)がいた。
「また仮面の連中かよ……」
「ダイゴ、大丈夫!?」
「ああ、何とかな。それより転がってるエルフ達を助けてやってくれ」
「分かった!」
ミリアとマックスは倒れているエルフ達を担いで行く。
俺は剣を抜き、構える。
「エルフの里に何の用だ? かなり周到な準備をしていたみたいだが?」
「おぉ、それも気づいてたんだねぇ! 簡単だよ、エルフ達が僕達に反逆しようとしているらしいから……」
「滅ぼしに来たんだよ?」
男は冷めた口調でそう言う。
男の言葉には重みがあり、遊びで言っているような口調の裏に殺人鬼の気配を感じる。
こいつ、既に何十人も何百人も殺しているような雰囲気だ。
「滅ぼす……だと?」
「そうだよ? 自分達に危害を加えようとする人達は先に殺しておく、当たり前でしょ? さぁ、いっぱい殺すぞぉ!」
「エルフ達は殺させない! 俺が相手だ!」
頭にマンガで見るような巨大なたんこぶが出来ている俺とマックスは正座して作戦を練る。
「正直ここの檻は簡単に出れる。でもあまり脱獄はしたくないな」
「どういうこと?」
ミリアさん目、目が怖いです!
俺は恐る恐る話す。
「ここのエルフ、いやこの世界のエルフ達はまだ人間に対して偏った考えを持っている事が分かった。だから、その偏見を放置して出ていくのは気が引けるって言うか……」
「確かにそうだけど難しいと思うけど。私達人間がエルフを攫っていたのは事実だし」
「でも、今は違うってことを分かってもらえれば!」
「楽観的すぎるよ。そう簡単に人の考えは変えられないよ」
「……」
「でもまぁもう少し様子を見ようか」
「ミリア……」
「むにゃむにゃ……お魚ぁ」
マックスはいつの間にか寝てしまっていた。
しかも正座したまま。
「こいつは呑気だな、おい」
「もう一発いっといた方がいいかな?」
「止めてあげてください」
「冗談よ。とりあえず今日は寝よう」
「そうだな」
でも勇者はなんでここを天国って言ったんだろうか。
霧の奥ってここしか無いよな……
エルフの里だから天国なんだろうか。
ま、考えても分からないし寝よっと……ああ、床が固い……
――翌朝――
「起きろ、貴様ら!」
俺は中年の男に起こされた。
エルフはやはり美形が多いらしく、この男もかなりダンディーで体もガッチリしている。
相当モテるんだろうな……
「この牢は目覚まし付きなのか?」
「何を寝ぼけている! 霧の調子が悪くなったんだよ! 貴様らのせいだろ!」
「何もしてませんよ。ちょっと見てきて良いですか。俺は魔法使いなんで何か分かるかも」
「……仕方ない。その代わり付き添いが数人いるから逃げ出そうなんて考えないことだな」
「逃げませんよ」
それから俺は村の中心にある霧の発生装置に案内された。
こういう所チョロいな……
そこには直径数メートルの巨大な魔石が置いてあった。
このサイズの魔石がとれるのは数十メートル級の魔物を倒さないと出てこないぞ……
「この魔石はどうやって?」
「勇者様がこの村のためにくださった上に霧を発生させる魔法まで発動させてくださった」
「なるほど……勇者はやっぱり凄いな。誰か操作出来る者は?」
「いる訳ないだろ。こんな高度な魔術扱える方がおかしいのだ」
「うーん、見た感じこいつ自体には異常は無いな。だが……」
「だが?」
「外から少しづつ攻撃されていたんだな。大分力を失ってるぞ」
「外から攻撃だと!? まさか、ここがバレていたのか?」
「いや、だったら重点的にここを狙うだろ。ここら一帯に満遍なく攻撃していることから察するにバレてはいない」
「よかった……」
「だが、このままだと直にバレるな。でもこんな魔法を阻害する方法なんて聞いた事ないぞ……?」
「おい、直せるのか?」
「いや、無理だな。無理矢理壊されたのなら直せたんだがこいつはじっくりと魔法を発動出来ないようにされている」
「そんな……」
「敵は霧が無くなったら一気に攻めてくるだろう。急いで準備をしろ。俺達も加勢する」
「お前達も? 何故だ? これは我らの問題のはず」
「困っている人がいたら助ける、別に普通だろ」
「人族の中にもお前みたいな奴もいるんだな」
「まぁな。さぁ急げ! 夜には霧は完全に無くなるぞ!」
「分かった!!」
さて、ミリアとマックスを迎えに行って俺達も戦う準備だな。
こんな高度な魔術阻害をしてくる敵だ。
かなりの強敵だろう。
俺は地下牢に向かった。
ミリアとマックスはまだ寝ている。
「ミリア、マックス! 出るぞ!」
「ダイゴ? 結局脱獄するの?」
「違う。ここにエルフを脅かそうとしている者達が攻めてくる。俺達も戦うぞ」
「よく分からないけどエルフのピンチなんだね?」
「僕も戦うにゃ……でももうちょっと寝るにゃぁ」
「お前は早く起きろ。ちょっと調べたいこともあるしな」
俺はそう言って牢の扉を開け、自分達の荷物を持って森に入る。
まだ霧は残っているが少しづつ薄れていく。
これは本当に急がないとな……
「ここら辺にあるはずなんだよな……」
「ねぇ、何を探してるの?」
「魔石だよ。魔物が落とす小さいやつ」
「そんなもの探してどうするの?」
「あとで話す……あった!」
俺は1cm程度の魔石が複数個落ちているのを見つけた。
やっぱりあったか。
「ただの魔石じゃん。それがどうしたの?」
「拾って売ってお金にするのかにゃ?」
「本当にただの魔石に見えるか? よく見てみろって」
俺は魔石を2人に手渡す。
これは魔力を感知しないと中々気づきづらいんだよな。
「分かった!! 色がちょっと違う!」
「ほんとにゃ! ちょっと赤黒いにゃ!」
「正解だ。凄いな」
「でもそれがどうかしたの?」
「この魔石の魔力反応は普通の魔石とは違うんだ。おそらく霧が晴れてきたのもこの魔石が原因だと思う」
「どういうこと?」
「簡単に言うとこの魔石が魔法の発動を阻害している。一つ一つの力は弱いが量が多くて浴びる時間も長いと突然魔法が使えなくなるという事もある。それが今回だ」
「なる……ほど」
「何でそんな魔石があるにゃ?」
「エルフの里を狙っているヤツらがばら撒いたんだろう。だがこんなものを作れる技術力を持っているってことはかなりの強敵だろうな」
「なるほど……」
「さぁ、村に戻ろう」
俺達が村に戻ると既に村中の人が武装していた。
弓、槍を装備しているものが大半だ。
「準備は出来ているか?」
「ああ、もちろんだ。村中の者が戦えるぞ」
「それは頼もしいな」
「お前達も頼りにしている。さぁ、そろそろ日暮れだ! 全員配置に付け!」
「「おぉ!!」」
ここの村は統制がよく取れている。
男の指示で全員が散らばって行った。
「あ、今更だけど名前は?」
「俺はエインだ。お前達は?」
「ダイゴだ」
「ミリアだよ」
「マックスだにゃ!」
「ダイゴ、ミリア、マックス。頼んだぞ! 俺たちと共に戦ってくれ!」
「「「おぉ!」」」
俺達は北の櫓で敵の襲撃に備える。
まだ敵は来ていない。
辺りは何の音もせず、張り詰めた空気が緊張感を高める。
すると、西の方からカンカンと甲高い音が聞こえてきた。
来たか。
「敵発見の報告! 方角は西北西!」
「了解!」
俺達は発見の報告があった方に向かう。
既に先からは戦っているような音が聞こえてくる。
戦いが目に見える距離になってきたその時、巨大な音と共に火柱が立つ。
「くそっ、急ぐぞ!」
「うん!」
そこには大火傷を負ったエルフ達が転がっていた。
近くの建物は燃え尽きていて、少し離れた建物にも引火している。
「大丈夫か!? 敵は、敵はどこだ!」
「仮面……狼……うっ!」
「しっかりしろ! くそっ、どこだ!」
俺は魔力感知で一帯を感知する。
必ずどこかに潜んでいる筈だ!
「っ!? 上かっ!」
「ガルルッ!!」
俺が上を見ると大きな口を開けて牙をむいている狼が向かってきていた。
俺は急いでその場から飛び退き、難を逃れる。
「おぉ、今の良く避けたねぇ! 絶対決まったと思ったんだけどねぇ!」
振り返ると真紅の毛に覆われた巨大狼とそれに乗った仮面の男(の子?)がいた。
「また仮面の連中かよ……」
「ダイゴ、大丈夫!?」
「ああ、何とかな。それより転がってるエルフ達を助けてやってくれ」
「分かった!」
ミリアとマックスは倒れているエルフ達を担いで行く。
俺は剣を抜き、構える。
「エルフの里に何の用だ? かなり周到な準備をしていたみたいだが?」
「おぉ、それも気づいてたんだねぇ! 簡単だよ、エルフ達が僕達に反逆しようとしているらしいから……」
「滅ぼしに来たんだよ?」
男は冷めた口調でそう言う。
男の言葉には重みがあり、遊びで言っているような口調の裏に殺人鬼の気配を感じる。
こいつ、既に何十人も何百人も殺しているような雰囲気だ。
「滅ぼす……だと?」
「そうだよ? 自分達に危害を加えようとする人達は先に殺しておく、当たり前でしょ? さぁ、いっぱい殺すぞぉ!」
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